かんたん保険診断

終身保険の解約返戻金を上手に活用するための全知識

  • 公開日:2019年09月27日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 生命保険

2022-04-15

https://www.kurashino-okane.com/life-insurance/cash-surrender-value/

終身保険には貯蓄性があり、途中解約で多くの解約返戻金を受け取ることも可能です。ただし、契約内容や解約のタイミングを間違えると、お金を増やすどころか大きく損をしてしまうこともあります。

そのような悲劇を避け、着実にお金を貯めるためには、終身保険や解約返戻金の仕組みを十分に理解し、メリットを上手に活用しなければなりません。

この記事では、解約返戻金の基本から終身保険の解約返戻金の戻り方による2つのタイプの違いなど、終身保険でお金を増やすために必要となる基本知識すべてをわかりやすく説明しています。また、おすすめの受取時期や支払方法についても紹介していきますので、基本から学んで、安心して将来に備えらるようになっていただければ幸いです。

 

1.終身保険の解約返戻金とは?

まずは、解約返戻金のしくみと、お金の戻り方による終身保険の種類について解説します。

1-1.解約返戻金のしくみ

そもそも解約返戻金とは、保険を途中で解約した場合に、保険契約者に対して払い戻されるお金のこと。生命保険会社は、契約者が支払った保険料の中から一定割合の金額を積み立てています。保険を途中解約すると、「その積立金の一部が解約返戻金として支払われる」というしくみになっています。そのため、解約返戻金は、払い込んだ保険料の合計金額よりも少なくなることが一般的です。

なお、どの保険にもこの仕組みがあるわけではありません。解約返戻金がある保険としては、終身保険、養老保険、個人年金保険などがあります。

1-2.終身保険の解約返戻金の戻り方は2タイプ

解約返戻金の戻り方の違いによって、終身保険は大きく「従来型」「低解約返戻金型」の2つのタイプに分かれます。それぞれを見ていきましょう。

1-2-1.返戻率が徐々に上がる「従来型」

終身保険の中で基本となるのが「従来型」と呼ばれるタイプです。従来型の解約返戻金は、払込保険料に解約返戻率を乗じて算出され、保険料の支払期間が長くなればなるほど返戻率がアップするしくみとなっています。

■従来型の終身保険の解約返戻金の増え方(有期払い)

1-2-2.返戻率が急に上がる「低解約返戻金型」

従来型と比べて、保険料払込期間中の解約返戻金が少ないタイプを「低解約返戻金型」と呼びます。払込期間中の解約返戻金は従来型の約70%と低めですが、その分保険料は割安に設定されています。払込期間満了後は、解約返戻金の返戻率が一気に上がり、満了後も保険会社の運用により返戻率は上昇していきます。

■低解約返戻金型の終身保険の返戻金の増え方(有期払い)

1-3.貯蓄としてお金を増やすには保険料を有期払いに!

終身保険は、従来型、低解約返戻金型ともに保険料の支払い方法に「終身払い」と「有期払い」があることもおさえておきましょう。終身払いは一生涯保険料を払い続けていく方法で、月々の保険料を下げられる点はメリットとなりますが、返戻率が100%を超える見込みは少なくなります

一方、有期払いは保険料の払込期間を年齢や加入年数などで区切って、それまでに払い終える方法です(1-2の返戻金の増え方のはこの有期払いの場合の説明)。例えば定年までに払込みを完了させたい場合には60歳払込満了の商品を選ぶことで、それ以降、保険料を支払う必要がなくなります。終身払いと比べて、月々の保険料は上がりますが、保険料払い済み後に返戻率が100%を超える見込みがあります

2.貯蓄性で選ぶなら低解約返戻金型終身保険

解約返戻金の戻り方により、終身保険に2つのタイプがあることを紹介しましたが、現在人気があるのは「従来型」ではなく「低解約返戻金型」の方です。ここからはその理由についてみていきたいと思います。

2-1.従来型より低解約返戻金型が選ばれる4つの理由

低解約返戻金型が選ばれる理由は以下の4つです。

<理由1>保険料が安い
まず挙げられるのが保険料の安さです。低解約返戻金型は従来型に比べて、解約返戻金の額を70%程度に抑えていますが、その分だけ保険料が割安で済みます。

<理由2>従来型より返戻率が高い
昨今ではマイナス金利などの影響で返戻率の高い商品は姿を消しました。そのため、わざわざ高い保険料を払って従来型の終身保険に加入したところで、その返戻率はたかが知れているのが実情です。そのなかで、低解約返戻金型は返戻率が高い方の商品に該当します。死亡保障が目的でも貯蓄性が目的でも、保険料が割安な低解約返戻金型を選んだ方が結果的に損をしないと考えらえます。

<理由3>確実な貯蓄手段になる
低解約返戻金型では払込期間中の解約返戻金が低く抑えられているものの、払込期間満了後は100%以上まで返戻率が上がり、その後も時間の経過とともに返戻率は上がっていきます。よって、早期解約さえしなければ確実な貯蓄手段となります。また払込期間中の解約をなるべく避けたい心理が働くため、「軽い気持ちで早期解約してしまった」といったケースは従来型よりも少なくなるでしょう。

<理由3>一生涯の死亡保障がある
これについては、従来型であれ低解約返戻金型であれ、終身の死亡保障である点には変わりありませんが、確実な死亡保障を確保できるメリットがあります。

2-2.低解約返戻金型終身保険の2つの注意点

ここまで低解約返戻金型のメリットについて解説してきましたが、注意するべき点もあります。

2-2-1.保険料払込期間中の解約で大きく元本割れをする

これまで説明してきたように、保険料払込期間中の返戻率を抑えている商品なので、その期間に途中解約してしまった場合、受け取れる解約返戻金は少なくなり、損を被ります(元本割れの状態)。そのため長く加入し続ける自信のない方には加入をおすすめできません。

2-2-2.見直しがしにくい

「途中解約がしにくい」ということは、貯蓄意識を高めることにつながり、たしかに低解約返戻金型終身保険の利点ともいえるのですが、裏を返せば「見直しがしにくい」ということにもなります。他の保険に切り替えたいときも、解約すると損になるため、切り替えにくくなるからです。

3.終身保険の解約返戻金を上手に活用する3つのコツ

終身保険で貯蓄する場合は、従来型より低解約返戻金型の方がよいことはおわかりいただけたと思います。ここではさらに、低解約返戻金型終身保険の解約返戻金を上手に活用するためのコツを紹介します。

3-1.保険料を早く支払い終えると貯蓄性が高くなる!

保険料払込期間は、払込年数で選ぶ場合(例:20年払済)と払込終了時の年齢で選ぶ場合(例:60歳払済)があります。どちらの場合を選ぶにせよ、払込期間を短くすればするほど返戻率があがり保険の貯蓄性は高まります

しかし1回あたりの保険料の支払額も大きくなるため、自分の収入などと相談しながら保険料負担のバランスを考えて設計することが大切です。無理な設計をして途中解約してしまっては、元も子もないので注意しましょう。

3-2.目的に合わせた受取方法を選択する

解約返戻金の受取方法に関しては、一般的な「一括受取」のほかに「年金受取」を選べる場合があります。目的にあわせて自分にあった受け取り方を選択しましょう。

3-1-1.まとまったお金が必要なら「一括受取」

終身保険の解約返戻金を一括で受け取る方法です。メリットとしては一度にまとまった資金を準備できることがあげられます。「子供の大学の入学資金が必要」、「住宅ローンを一括返済したい」などまとまった資金が必要な場合には、こちらの受取方法がおすすめとなります。

3-1-2.できるだけ多く受け取りたいなら「年金受取」

個人年金のように、年金形式で受け取る方法です。保険会社によっては、一定の条件のもと解約返戻金を年金で受け取れることがあります。例えば、解約返戻金を年金のような形で年間100万円ずつ5年間(合計500万円)受け取るといったことができます。そのため子供の大学の学費に利用する際などには、非常に便利な受取方法となっています。

また解約とは少し違いますが、年金移行といい、保障の全部または一部を年金として受け取れるしくみが多くの保険会社で採用されています。ただし、標準で備わっているか、特約が必要か、そのほか、移行のための諸条件など保険会社により扱いが異なりますので、詳しくは加入時によく確認するようにしましょう。

一般的に、年金受取は一括受取と比べて、保険会社がお金を運用できる期間が長くなるため、それだけ解約返戻金等の受け取り総額も多くなります。そのため、まとまった資金がすぐ必要という人以外は年金受取をおすすめします。

3-3.商品を選ぶときには返戻率をチェック

低解約返戻金型の終身保険を選ぶ際には、当然返戻率の高い商品を選ぶことが最重要となります。いまや主流となった低解約返戻金型終身保険のジャンルには、多くの商品が登場していますが、商品によって返戻率は変わってきます。返戻率が80%台の商品から110%を超える商品までありますので、各保険会社ホームページの商品ページをチェックしたり、あるいは商品パンフレットを取り寄せたり、不明点はコールセンターに問い合わせるなど、保障内容と共に比較・吟味することが大切です。

4.解約しても、今すぐ解約返戻金を受け取る必要がない場合は?

たとえば保険料の支払いはやめたいけれど、いまは解約返戻金を受け取る必要がないという場合などでは、受け取らずに、「払済保険」として据え置いておくこともできます。保障が継続されるだけでなく、解約返戻金の返戻率も上がっていくため、今すぐお金が必要というわけでないのなら、「受け取らない」のも一つの手です。

なお、ひとつ注意しなくてはならないのが解約返戻金の受け取りには税金がかかる、という点です。受取方法によって課税方法は異なり、一括受取の場合は一時所得、年金受取の場合は雑所得扱いで課税がされます。

なお、払済保険のしくみについては「減額と払済保険|保障を残して保険料の負担を減らすテクニック」を、解約返戻金にかかる税金については「解約返戻金にかかる税金を簡単に判別する方法」の記事をご覧ください。

5.まとめ:解約返戻金は仕組みを理解して活用しよう!

ここまで、終身保険の解約返戻金の仕組みから、従来型と低解約返戻金型の違い、そして低解約返戻金型が人気を集める理由などをご紹介してきました。終身保険には貯蓄性があるので上手に活用することで、お金を貯めるための商品として利用することができます。

そのためのポイントは、低解約返戻金型を選ぶこと、保険料払込期間や解約返戻金の受取方法を目的にあわせて選ぶことなどです。

ただし、1つ気をつけたいのは、保険を選びの際には保障内容のチェックをおろそかにしないということです。終身保険の大きな目的には長期的な貯蓄以外に、一生涯の死亡保障を確保するということがあります。解約返戻金や保険料だけを気にするのではなく、保障内容もしっかりチェックするようにしましょう。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎 (編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。
 

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