死亡保険金にかかる相続税の計算方法

  • 公開日:2022年03月18日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 生命保険

2022-04-15

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生命保険で受取る保険金には、税金がかかることがあります。今回は、代表的な例として、相続税の対象となるケースを中心にご紹介します。

1. 死亡保険金に相続税がかかる場合

定期保険や終身保険で受取る死亡保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・保険金受取人が誰かによって、かかる税金が変わってきます。

最も多いのが、生命保険の契約者(保険料を支払った人)と被保険者が同じで、受取人だけ別の人に指定されている場合で、この場合、受取った死亡保険金は相続税の対象となります。

■死亡保険金にかかる税金

2. 死亡保険金にかかる相続税の計算方法

受取った保険金は遺された家族の生活保障という役割を果たすため、受取人が法定相続人の場合は税負担が少なく抑えられるようになっています。

法定相続人とは、亡くなった方の財産を相続できる人のことで、配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人になります。配偶者以外については、法定相続人の相続順位は次のとおりです。

■法定相続院の順位

2-1. 相続税の計算手順(相続税が発生しないケース)

では、実際の相続税の計算手順を解説していきます。まずは、相続税が発生しないケースです。

【例】
家族構成:夫、妻、子2人
※夫の法定相続人は合計3人
死亡保険金:5,000万円
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
現金・預貯金:1,000万円

手順1. 遺産総額の算出

〈I.遺産総額〉
【受取る保険金】+【現金・預貯金】
= 5,000万円 + 1,000万円 = 6,000万円(Ⅰ)

手順2. 非課税枠の控除

〈II. 生命保険の非課税枠などの控除部分〉
生命保険の死亡保険金は相続税の対象ですが、そのうち一定額までは非課税となる優遇措置があります。

死亡保険金の非課税額:500万円×法定相続人の数
500万円 × 3人 = 1,500万円(II)

手順3. 相続税の課税価格を計算

〈Ⅲ.相続税の課税価格〉
【遺産総額(Ⅰ)】-【生命保険の非課税枠などの控除部分(Ⅱ)】
= 6,000万円(Ⅰ)- 1,500万円(Ⅱ)= 4,500万円(Ⅲ)

〈IV.相続税の基礎控除額〉
相続税には、ここまで計算した相続財産がこの額以下なら非課税になるという基礎控除があり、相続税の課税価格が基礎控除の範囲内に収まる場合は、そもそも相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円(IV)

〈V.相続税の基礎控除額〉
【相続税の課税価格(III)】-【相続税の基礎控除額(IV)】
今回は、課税価格(III)4,500万円 < 基礎控除額(IV)4,800万円のため0円

以上の計算結果から、この例では、死亡保険金5,000万円、現金・預金1,000万円に対して、相続税がかからないことになります。

2-2. 相続税の計算手順(相続税が発生するケース)

続いて、相続税が発生するケースを見てみましょう。

課税価格(III)が控除額(IV)を上回る場合は、以下の手順で実際に相続人の方々が納税する相続税を計算します。

【例】
家族構成:夫、妻、子2人
※夫の法定相続人は合計3人
死亡保険金:5,000万円
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
現金・預貯金:1億1,300万円

(1)前節のⅠ~Ⅴを計算
前節のⅠ~IVのとおりに計算し、相続税の課税価(III)から基礎控除額(IV)をマイナスすると、課税遺産総額(Ⅴ)は
1億4,800万円(III)- 4,800万円(IV)= 1億円(V)となります。

(2)課税遺産総額を各相続人の法定相続分(妻:1/2、子:1/4)に分割
妻:1億円 × (1/2)= 5,000万円
子1:1億円 × (1/4)= 2,500万円
子2:1億円 ×(1/4)= 2,500万円

(3)(2)の法定相続分に対して速算表を活用し、相続人ごとの相続税額を計算
速算表※より
妻:5,000万円 × 20% - 200万円 = 800万円
子1:2,500万円 × 15% - 50万円 = 325万円
子2:2,500万円 × 15% - 50万円 = 325万円
※速算表:簡単に相続税額を計算できるように作られた表

(4)(3)の額を合計して相続税の総額を計算
800万円 + 325万円 + 325万円 = 1,450万円

(5)(4)に実際に相続した遺産の課税価格の割合をかけ、配偶者の税額軽減措置など、税額に加減算するものを反映して各相続人が実際に納める相続税額を計算
妻:1,450万円 × (1/2) = 725万円
配偶者の軽減措置制度の枠が16,000万円であり、725万円 < 1億6,000万円なので0円
子1:1,450万円  × (1/4)= 362.5万円
子2:1,450万円 ×(1/4)= 362.5万円

以上の計算結果から、この例では、死亡保険金5,000万円、現金・預金1億1,300万円に対して、妻は納税なし、子はそれぞれ362.5万円ずつ相続税を納税することになります。

3. 相続放棄をしても保険金を受取れる

相続放棄という言葉を聞いたことはありますか?相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産に対する相続権の一切を放棄することです。すなわち、借金などのマイナスの財産・預貯金などのプラスの財産の両方をすべて相続しないことをいいます。

いっぽう、保険金は受取人の固有財産となるので、相続を放棄しても死亡保険金は受取ることができます。

たとえば、契約者・被保険者が夫、受取人が妻の場合、妻が受取った死亡保険金は妻の固有財産になります。死亡した夫の財産ではないので、妻が相続を放棄しても、保険金は妻の固有財産として受取ることができます。ただし、死亡保険金は税制上みなし相続財産として相続税の課税対象にはなりますのでご注意ください。

相続放棄をするケース
・相続財産に負債が多い
・相続問題に巻き込まれたくない
・被相続人の財産を特定の相続人にすべて承継させたい

4. まとめ:相続税対策は生命保険から始めてみよう!

家族構成に応じて相続税の計算方法について解説しましたが、この計算方法を今すぐに覚える必要はありません。生命保険の非課税額と基礎控除額がいくらになるのかを把握し、必要に応じて生命保険を準備していくと安心でしょう。

これをきっかけに、税についても考えながら、加入している生命保険の内容をしっかり確認しておきましょう。

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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。