教育資金どう準備する?学資保険のメリット・デメリットをチェック!

  • 公開日:2019年09月12日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 生命保険

2022-04-15

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子どもの教育資金を準備する王道と言えば「学資保険」です。出産前後で子どもの将来のことを考えるときに、加入するべきか迷う人は多いでしょう。

親世代が子育てをしていたときには予定利率が高くメリットが大きかったため、加入すべきと親から勧められるケースもあります。

しかし、時が流れ予定利率が下がった今、学資保険は本当に得なのか、他にもっといい教育資金の準備方法はないのかといったことは、夫婦でしっかり検討すべきです。

そこで、ここでは学資保険の基本的な仕組みや目的から、メリット・デメリット、他の教育資金の準備方法との比較まで、子どものためのお金を上手に準備する方法をご紹介していきます。

1.学資保険とは?

学資保険のメリットを語る前に、まずはじめに、学資保険とは何か? その目的と仕組みについてみていきましょう。

1-1.学資保険の目的

学資保険の目的は、大きく2つに分けることができます。第一の目的は「子どもの教育資金の積立」です。子どもが高校・大学へと進学すると、学費などの教育資金が家計の大きな負担になります。学資保険に加入しておけば、そういった負担に備えてまとまったお金を準備することができます。

第二の目的は「子どもの医療費の保障」です。ケガや病気をした場合の医療費は公的医療保障である程度はまかなうことができますが、症状の程度によっては大きな医療費が発生することも。そうした事態に備えて、学資保険の中には、医療特約を任意で付加できるタイプや自動的に付加されているタイプがあります。それらの特約を付けておけば、ケガや病気の際にも子どもにより充実した治療などを受けさせることが可能になります。ただし医療保障を充実させると、その分貯蓄性が下がる点には注意が必要です。

1-2.学資保険の仕組み

毎月一定の金額の保険料を払い込み、あらかじめ決めた満期の時点で「満期保険金」を受け取る、というのが学資保険の大まかな仕組みです。大学進学のタイミングを満期に設定するのが一般的です。

また学資保険の中には、「祝い金」として、満期になる前の節目の時期(中学・高校の入学時など)に給付金が受け取れるものもあります。

2.学資保険の5つのメリット

基本的な仕組みがわかったところで、いよいよメリットを見ていきましょう。学資保険にはおおむね以下のような5つのメリットがあります。

2-1.貯蓄性がある

学資保険の第一の魅力は、払い込んだ保険料の総額よりも多くの保険金が受け取れるという点にあります。

どれだけ多くお金を受け取れるかを判断する指標として、払い込んだ保険料に対して、満期保険金や祝い金などの受け取る保険金がどのくらい割合かを示す「返戻率」という数値があります。返戻率は100%よりも高ければ高いほど、貯蓄性が高いということになります。学資保険の中には、返戻率108%などリターンが高めのものもあります。
※返戻率は、同じ商品でも契約条件により変わってきます。

返戻率の計算方法や学資保険の貯蓄性をはかるときの正しい返戻率の見方については、「学資保険の返戻率の罠!本当の貯蓄性は数字だけでは計れない」をご覧ください。

2-2.強制的に積み立てができる

確実に教育資金を準備できるのもメリットの1つ。学資保険は途中で解約することによるデメリットが大きいため(※デメリットの項目で解説)、解約しづらい保険ですが、裏を返せば半ば強制的な方法で貯蓄することができるということ。自力で貯めようと思ってもつい浪費してしまう、という人にとっては効果的といえます。

2-3.税金面で優遇される

学資保険の満期保険金を一括で受け取った場合、その給付金は「一時所得」として扱われ、所得税による課税の対象となります。その際、課税される所得は、「受け取った保険金-払い込んだ保険料-特別控除額(最高50万円)」という式で算出されます。

したがって、払い込んだ保険料より50万円上回る保険金を受け取らないかぎり、課税の対象とならないということです。

たとえば、保険料を400万円払い込んで、440万円の満期保険金を一括で受け取ったとすると、440万円-400万円-50万円=-10万円なので、この場合は課税されません。ただし、保険金を年金の形式で受け取る場合は「雑所得」として課税されます。一括で受け取る場合の一時所得とは異なり、雑所得には特別控除がないため、税金面でのメリットを享受できないという点には注意しましょう。
※保険金以外にも一時所得がある場合は、それらすべての合計額から特別控除額(50万円)を差し引いて一時所得を計算します。

学資保険の税金のかかり方や税金額をおさえるためのポイントは、「学資保険の税金で失敗しないために必要な、たった3つのこと」をご覧ください。

2-4.保険料控除が受けられる

学資保険は生命保険会社が販売する生命保険の一種です。そのため支払った保険料は、年末調整や確定申告の際に申告をすれば、生命保険料控除の対象となります。控除により課税所得が減額されますので、結果的に税金が安くなることになります!

なお保険料控除には「一般生命保険料控除」・「介護医療保険料控除」・「個人年金保険料控除」の三種類があり、学資保険はそのうち一般生命保険料控除に該当します。

■所得税の生命保険料控除額(平成24年以降に締結した保険契約=新制度)

年間払込保険料控除額
20,000円以下払込保険料等の全額
20,000円超40,000円以下払込保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下払込保険料×1/4+20,000円
80,000円超40,000円

■住民税の生命保険料控除額(平成24年以降に締結した保険契約=新制度)

年間払込保険料控除額
12,000円以下払込保険料等の全額
12,000円超32,000円以下払込保険料×1/2+6,000円
32,000円超56,000円以下払込保険料×1/4+14,000円
56,000円超28,000円

控除額の計算方法は上図のようになります。図の通り、所得税では40,000円、住民税では28,000円を上限にそれぞれ控除することができますので、控除額に税率をかけた分、税金が安くなります

2-5.万一のときには保険料が免除される

学資保険には「払込免除特約」が付いているのが一般的。これは、契約者である親が死亡したり、高度障害や所定の身体障害を負うなどの場合に、それ以降の保険料の払い込みが免除され、満期保険金も受け取れるというもの。親に万一のことがあったとしても、教育資金の準備ができるというのが学資保険の大きなメリットです。

3.学資保険の3つのデメリット

一方で、学資保険には以下のような3つのデメリットもあります。

3-1.貯蓄性が下がっている

マイナス金利政策の影響などもあり、以前ほどの貯蓄性は見込めません。また学資保険では、利率が契約時のもので固定されます。そのため、仮にインフレになって金利が上昇したとすると不利になってしまう可能性も。保険加入後にインフレが進行すれば、実質的な資産価値は目減りすることになります。

3-2.途中解約による元本割れのリスクがある・換金性が低い

学資保険は途中解約をしてしまうと、元本割れをして損をすることがほとんど。つまり長期間に渡って換金できない時期が生じるということです。ただし先にも触れたように、このデメリットは半強制的に貯蓄ができるというメリットと裏表の関係にあります。

3-3.保険会社破綻のリスク

加入している学資保険を販売している保険会社が破綻するリスクについても、念のため知っておく必要があります。

もし保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構によって責任準備金(将来の保険金の支払いに備えて保険会社が積み立てるお金)の90%までは保障されます。ただし、これは保険金の90%が保障されるという意味ではありません。保険金は大幅に減額される可能性があることを理解しておきましょう。

保険金がどれぐらい受け取れるかは、契約時期や加入した学資保険の予定利率、満期までの期間などによって変わってきますが、契約時よりも下回る可能性があります。こういったリスクを避けるためには、経営状態の安定した保険会社を選ぶことも大切です。

4.学資保険以外の保険で代替できる?

学資保険の有利性が低い今、他の方法で教育資金を準備することを検討したい人もいるでしょう。学資保険の代わりによく比較検討される保険としては、「低解約返戻型終身保険」「外貨建て終身保険」があります。

4-1.親の死亡時の保障も確保できる「低解約返戻金型終身保険」

低解約返戻型終身保険は一般的な終身保険よりも保険料は割安です。払込期間や解約返戻金を受け取る時期の自由度が高く、親に万一のことがあったときには素早く保険金を受け取ることができます。

保険料が安いのは保険料払込期間中の返戻金が一般的な終身保険の約70%と低いためで、裏を返せば途中解約すると損をしてしまいます。利用する上では、このようなメリットとデメリットを勘案する必要があります。

4-2.為替リスクがありおすすめできない「外貨建て終身保険」

円建て保険の予定利率が低いことから、為替リスクをとっても外貨建て終身保険を選ぶ人もいます。しかし、必要な額や時期が決まっている教育資金の準備には、外貨建て終身保険は不向きといえます。

保険料や保険金は為替相場によって変動するため、思わぬ損をすることもあるので加入の検討は慎重にしましょう。

5.保険以外の方法で教育資金を準備するには?

保険以外で学資保険の代替えを考える際、最もベーシックなのが銀行の定期預金で積み立てる方法でしょう。定期預金の金利は年0.01~0.02%程度。仮に0.02%だとすると、毎月1万円を18年間積み立てても3,000円程度しか増えません。ただし、インフレ時には金利は上がっていきます。

また、簡単に引き出せて元本割れがないため、途中でほかの用途にお金が必要な場合に活用できますが、その分使い込む可能性も高くなります。確実に貯めるためには学資保険を選択するほうが無難でしょう。

他には「つみたてNISA」「ジュニアNISA」といった非課税制度を活用する手も。通常投資の利益にかかる税金がかからず、長期的な運用によりお金が増えることも期待できます。途中解約も自由なのも魅力でしょう。

また結婚や出産年齢が高くなっている今は、税金面のメリットが高いiDeCoも選択肢になります。仮に42歳で出産した場合、子どもが18歳で大学に入学する頃には、60歳でiDeCoの年金が受け取れる年齢になっているので、そのお金を教育資金に回すというわけです。当然、高齢出産だけではなく夫が42歳以上の場合も同様です。

6.学資保険に向いている人とは?

ここまでの解説を踏まえて、学資保険に向いている人を考えてみましょう。まずは「お金が上手く管理できない人」。定期預金などは使おうと思えばすぐにお金を引き出せてしまいます。その点、学資保険は毎月口座から自動的に保険料が引き落とされます。解約すると元本割れをする可能性が高いため、容易に解約しようと思わないのも利点です。

もう1つは、「あらかじめ将来受け取る満期金の金額が決まっている方がいい人」です。つみたてNISA、ジュニアNISA、iDeCoなどの制度は税金面で有利であり、運用による利益も期待できます。その一方で元本保証ではないため、運用がうまくいかず損をする可能性もなくはありません。そういったリスクの心配をしたくないという人には、学資保険に向いているといえます。

学資保険に向いている人

  • お金の管理がうまくできない人
  • 将来受け取れる金額が決まっている方がいい人(リスクは負いたくない人)

7.まとめ:確実に貯められるのが学資保険のメリット!

今回は、子どもの教育資金を貯める王道「学資保険」のメリットについて解説しました。残念ながら今は昔と違い、学資保険の有利性は下がっています。とはいえ、容易には引き出せない点、満期時に受け取る金額が決まっている点などは、お金を貯めるのが苦手な人には魅力的なメリットといえるでしょう。

つみたてNISAなどの非課税制度が出きて、子どものためにお金を貯める選択肢は以前より広がっています。自分にはどの手段が向いているのか、メリット・デメリットを加味して考えましょう。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎 (編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。

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