個人年金保険の解約リスクと年金を残すための3つの方法

  • 公開日:2016年09月09日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 生命保険

2022-04-15

https://www.kurashino-okane.com/life-insurance/kojin-nenkin-kaiyaku/

個人年金保険を解約したら損をしてしまうのか? 解約返戻金に税金がかかるのか?
保険を解約する前には、いろいろと不安なことがあると思います。

個人年金保険は貯蓄タイプの保険なので、解約すると解約返戻金が戻ってきます。しかし、一般的には解約返戻金の額は支払った保険料の額よりも少なくなることが多いです。だから、保険料の支払いがつらいからといって、簡単に解約してしまうことはおすすめできません。

もし解約したいというときには、解約するリスクはどの程度か、解約と継続のどちらがメリットが大きいかといったことを十分に検討してから判断するべきです。

この記事では、個人年金保険を解約した場合の解約返戻金や解約せずに保険料支払いの負担を軽減するための方法についてわかりやすく説明しています。個人年金保険の解約を検討している方は、ぜひお読みいただき、損をしないための参考にしてください。

1. 個人年金保険を解約するとどうなる?

老後の生活資金に備えるために個人年金保険に加入して、月々保険料を支払っているものの、保険料の支払いが苦しくなったりまとまったお金が必要になったりして解約を考えている人もいるでしょう。

ここでは、そんなふうに個人年金保険を途中で解約した場合の解約返戻金について説明します。

1-1. 解約すると、解約返戻金を受け取れる

個人年金保険は、将来、年金を受け取るためにお金を貯めていくタイプの保険なので、保険料払込期間の途中で解約すると、それまでに積み立てられていたお金の一定割合を解約返戻金として受け取ることができます。なお、解約するとその時点で契約はなくなるので、将来年金を受け取ることはできません。

1-2. 解約返戻金は支払った保険料より多いか少ないか?

ここで気になるのは、解約返戻金はそれまでに支払った保険料の総額よりも多いか少ないかということだと思います。

保険料払込期間終了間近であれば、支払った保険料よりも多くの解約返戻金が戻ってくることがありますが、基本的には、支払った保険料よりも少ない額になります。したがって、貯蓄という見方をすると元本割れになると考えてください。

支払った保険料総額に対して解約返戻金がいくら戻ってくるかの割合を返戻率といいますが、返戻率が100%を超えるとお金が増えて戻ってくるという意味で、100%未満だとお金が減るという意味になります。この返戻率により解約時の損得を見極めることができます。

特に、加入後2~3年以内の短期間での解約は、返戻率が著しく低くなるので注意が必要です。加入プランによりますが、加入後10年以上経っていれば9割くらいが戻ってくるようになります。

<個人年金保険の解約返戻金の例>
A社 個人年金保険(10年確定年金)
 被保険者:30歳男性
 年金額:年60万円(受取開始年齢60歳)/年金支払期間10年(確定)
 保険料:月額15,582円

加入年数支払保険料総額解約返戻金 返戻率 
1186,984円79,200円 42.3%
2373,968円252,180円67.4%
3560,952円427,020円 76.1%
5934,920円782,460円 83.6%
101,869,840円1,705,260円 91.1%
152,804,760円2,633,280円 93.8%
203,739,680円3,615,420円96.6%
254,674,600円4,655,460円 99.5%
264,861,584円4,870,920円 100.1%

この表のように、加入直後は大きく元本割れをしてしまうのでご注意ください。

1-3. 解約返戻金には税金がかかる場合がある

個人年金保険を解約して解約返戻金を受け取ったときには、税金がかかる場合があります。

1-3-1. 解約による利益にかかる所得税

通常、保険料負担者と解約返戻金受取人は同一だと思いますが、この場合に解約返戻金で利益が出ると(返戻率が100%を超えると)、その利益には所得税がかかります。

この所得税のかかり方には、年金の種類や解約までの年数により2種類があります。

<個人年金保険の所得税>

確定年金を5年以内に解約したとき源泉分離課税(20%)
上記以外一時所得として総合課税

契約した時点で受け取れる年金額が決まっている確定年金を5年以内に解約した場合、解約返戻金に利益が出ると、その利益の20%が源泉徴収されます。ただし、月々保険料を支払っていく個人年金保険であれば5年以内に解約して利益が出ることはありませんので、結局は税金はかかりません。このケースに該当するのは、契約時に保険料を全額支払う一時払個人年金保険の解約の場合と考えられます。

次に、一時所得になるケースですが、一時所得には50万円までの特別控除があるため、個人年金保険の解約返戻金以外に一時所得がない場合は、解約返戻金の利益が50万円以内であれば非課税となります。

前節の解約返戻金の例でみたように、個人年金保険の解約返戻金が100%を超えるケースはごく一部で、しかも、利益はせいぜい1~2%です。一般的な契約内容で他の一時所得がなければ、解約返戻金に所得税がかかることはまずありません。

1-3-2受取人によっては贈与税がかかる

イレギュラーなケースとして、個人年金保険の保険料負担者と解約返戻金の受取人が別人になっている場合は、受け取った解約返戻金に贈与税がかかります。この場合、解約返戻金の全額が贈与の額(利益の額)ということになり課税の対象となります。

贈与税は、他の贈与も含めて1年間に受けた贈与の額の合計が110万円までは非課税ですが、それを超えると超えた額が課税対象となります。

2. 損をしないためにはできるだけ解約を避けるべき

1-2でみてきたように、個人年金保険を解約すると、まずほとんどのケースで元本割れをしてしまいます。個人年金保険は、もともと貯蓄として加入しているわけですから、元本割れで損をしてしまうのは得策ではありません。

もし、他にもっとよい貯蓄方法があって、解約して損をしてもいいのでとにかく個人年金保険をやめて、そのお金を別の貯蓄に回したいといった理由があるのなら別ですが、そうでなければ、個人年金保険はできるだけ解約しない方がよい保険といえるでしょう。

なんとなく個人年金保険の貯蓄性がよくなさそうというくらいの理由ならば、途中でやめて損をする方がもったいないと思います。また、保険料の支払いが苦しいとかちょっとお金が必要だという理由であれば、次章で、解約せずに年金を残すための方法について説明しますので、今解約を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

3. 保険料の支払いが大変なときやお金が必要なときでも年金を残せる3つの方法

保険料の支払いが苦しくなってきた、まとまったお金が必要で多少損をしても解約返戻金がほしい、といった理由で個人年金保険の解約を考えている場合は、保険を継続させて年金を残すために以下の3つの方法が使える場合があります。

3-1. 自動振替貸付で保険料の支払いを一時的に止める

保険には、保険料が払い込まれなかった場合に、保険会社がその保険の解約返戻金の範囲内で保険料を自動的に立て替えてくれる自動振替貸付という制度があります。通常は個人年金保険にも、この自動振替貸付がついているので、一時的に保険料の支払いが苦しいというだけであれば、しばらく保険料の払い込みを止めてこの制度を利用してしのぐという方法がとれます。

ただし、この制度を利用した貸付金には利息がかかりますし、貸付額がその時点の解約返戻金額を上回るような場合には保険が失効または解除されるので注意が必要です。

また、自動振替貸付ががついていない保険の場合は、保険料払込猶予期間が過ぎると保険が失効または解除されてしまうので、利用したい場合は事前に制度の有無と解約返戻金がどの程度貯まっているのかを確認しておく必要があります。

3-2. 払済保険で保険料の支払いをやめて保険(一部)を残す

保険料の支払いが一時的に苦しいというだけでなく、この先もずっと支払えそうにないというときには、払済保険にすることで、保険料の支払いをやめて、それまでに支払った保険料の額に応じた年金を将来受け取ることができます

例えば、1-2で紹介した個人年金保険では、30歳で加入して10年後に解約した場合の解約返戻金は1,705,260円で返戻率は91.1%の元本割れでした。しかし、この10年後の時点で払済保険にすると、以後の保険料の支払いはなくなり60歳から毎年102,400円の年金を10年間受け取ることができ、年金の返戻率は109.5%となります。

これなら、保険料の支払いをやめて、将来、額は少なくても年金が受け取れ、しかも元本割れを防ぐことができます。

ただし、個人年金保険料控除を受けられる税制適格の個人年金保険は、10年以上経ってからでなければ払済保険にすることができませんのでご注意ください。

<個人年金保険の払済年金額の例>
A社 個人年金保険(10年確定年金)
 被保険者:30歳男性
 年金額:年60万円(受取開始年齢60歳)/年金支払期間10年(確定)
 保険料:月額15,582円

払済年度支払保険料総額払済年金額受取る年金の
返戻率
解約した場合の
返戻率
10年後1,869,840円214,100円114.5%91.1%
15年後2,804,760円315,700円112.6%93.8%

3-3. 契約者貸付でお金を借りる

保険には、その時点の解約返戻金の一定割合の範囲内で、契約者が生命保険会社からお金を借りることができる契約者貸付があります。通常は個人年金保険にも、この契約者貸付がついているので、もしまとまったお金が必要で解約したいという場合には、解約せずに保険会社からお金を借りて保険契約を残すことができます

借りたお金には利息がかかりますが、返済は一括でも分割でもいつでもよいので、この契約者貸付を上手に活用すれば、必要なお金を融通できた上に将来の年金も維持することが可能です。

契約者貸付制度については「3分でわかる!契約者貸付のメリットと3つの注意点」をご覧ください。

4. まとめ:個人年金保険は、できれば解約せずに続けた方がよい

個人年金保険に加入していても、何らかの理由で解約しなければならないということがあるでしょう。しかし、個人年金保険を途中で解約すると、多くの場合で元本割れをして損をしてしまいます。

個人年金保険は、もともと老後資金を蓄えるために加入した保険なので、できれば解約して損をするよりも年金を維持することを考えていただきたいと思います。

ここで紹介したような、自動振替貸付、契約者貸付、払済保険という方法を上手に使えば、元本割れを防ぎ、保険料を無駄にすることを避けることも可能です。ぜひ有効に活用してください。ただし、自動振替貸付、契約者貸付はお金を借りる制度であり、場合によっては保険の失効や解除にもつながる制度なので、その点は十分にご注意ください。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。