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生命保険に相続税がかかるケース|相続対策にはどう役立つ?

  • 公開日:2019年02月27日
    最終更新日:2022年04月06日
  • 生命保険

2022-04-06

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結婚式や子どもの誕生を機に、生命保険に加入する人は少なくないでしょう。万一の事態における死亡保険金は、残された家族が生活するための大きな助けとなるからです。

しかし気になるのは、死亡保険金を受け取る際にかかる税金のこと。生命保険の契約形態によって、相続税や所得税、贈与税といった税金がかかりますが、ここでは相続税を中心とした生命保険の税金について解説するとともに、よく耳にする「生命保険は相続税対策になるのか?」といった疑問についても掘り下げていきます。

1.生命保険に相続税がかかるケース

生命保険の死亡保険金を受け取ると、税金が課せられます。課せられる税金の種類は1つではなく、「相続税」「所得税・住民税」「贈与税」のうちのいずれか。どの税金が課せられるのかは、「契約者」「被保険者」「死亡保険金の受取人」の3つの組み合わせによって変わってくるので、確認しておきましょう(下図参照)。

■死亡保険金にかかる税金

契約者被保険者死亡保険金の受取人税金の種類
(例:夫)(例:夫)(例:妻)相続税
(例:夫)(例:妻)(例:夫)所得税・住民税
(例:夫)(例:妻)(例:子)贈与税

・契約者…保険会社と契約し、保険契約上の様々な権利を持ち、保険料の支払いをする人
・被保険者…保険の対象者。生死などが生命保険の対象となっている人
・死亡保険金の受取人…被保険者が死亡した場合に死亡保険金を受け取る人

契約者と被保険者が同一で、死亡保険金の受取人が別な場合は相続税。契約者と死亡保険金の受取人が同じで被保険者が別な場合は所得税・住民税。契約者、被保険者、死亡保険の受取人がすべて違う場合は贈与税の課税対象となります。

このうち、最もベーシックといえるのが、契約者と被保険者が同一というパターン。家計を支える大黒柱である夫が、自分にもしものことがあったときのために自分に対して保険をかけて、保険金の受取人を妻にするといったイメージです。

以下、この相続税が課せられるケースについて詳しく説明していきます。

なお、契約形態による税金のかかり方の違いについては「パッとわかる!生命保険の税金の種類と受けとり額の計算事例」もご参照ください。

2.生命保険の相続税には一定の非課税枠がある

生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」として遺産の総額に含まれ、相続税が課せられますが、実はそのうちの一定額については非課税となる優遇措置があります。具体的にいくらが非課税になるのかは、以下の計算で算出できます。

死亡保険金の非課税額の計算

500万円 × 法定相続人の人数

この法定相続人とは民法で定められた相続人で、以下のような決まりがあります。

●配偶者は常に相続人となる

●血族の優先順位
(1)子がいる場合、配偶者と子が相続人となる
(2)子や孫がいない場合には、配偶者と父母が相続人となる
(3)子、孫、父母、祖父母もいない場合には、配偶者と兄弟・姉妹が相続人となる
※子どもや兄弟・姉妹がすでに死亡していたら、その子ども(孫や甥・姪)が代わりに相続(代襲相続)する

上記の非課税額の計算式と法定相続人の決まりを踏まえて、例を見ていきましょう。

例えば、死亡保険金が3,000万円、法定相続人が妻と子ども2人の場合、500万円×3人=1,500万円が非課税金額になります。3,000万円から1,500万円を引くと残りは1,500万円となり、この額が相続税の対象額に。税金負担が小さくなるため、保険金を受け取る人にとっては嬉しい仕組みです。

このような仕組みになっている理由は、死亡保険金は遺された“家族の生活を守る”という大切な役割を持っているため。死亡保険金すべてに税金がかかってしまっては、その役割が弱まってしまいます。そのため、こういった税金の優遇が受けられるのです。

1点、間違えがちなのが相続放棄の場合です。例えば、上記の例で子どもが二人とも相続放棄をしたとしましょう。その場合、非課税金額の計算は妻一人分(500万円×1人=500万円)と考えてしまいがちですが、相続放棄をしても法定相続人にはカウントされます。よって、子どもが相続放棄をしたとしても、妻は1,500万円分を受け取る保険金から控除できるというわけです。

また、相続人に養子がいる場合、法定相続人に含まれる養子の人数は、同時に実子がいるときは1人、実子がいないときは2人を限度としてカウントします。

3.相続税は基礎控除の範囲内であれば課税されない

生命保険に対する非課税枠がわかったところで、次は相続全体の例を見ていきましょう。

(例)Aさん(夫+子2人)の相続

Aさんの夫(生命保険の契約者・保険料負担者)が亡くなり、生命保険の死亡保険金の受取人であるAさん(妻)は2,000万円を受け取りました。夫にはそれ以外に4,000万円の遺産があり、Aさんが2,000万円、こども2人がそれぞれ1,000万円ずつを受け取ることに。

Aさんが受け取った死亡保険金は2,000万円、こどもは2人なので、生命保険の相続税の非課税枠の計算式は500万円×3人=1,500万円。2,000万円から1,500万円を引くと、500万円が課税対象となります。この500万円と4,000万の遺産の合計=4500万円が、課税対象の相続財産ということになります。

さらに、この相続財産からは「基礎控除」を差し引くことができます。そもそも相続税とは一定以上の財産を持った人に課せられるものなので、その一定額=基礎控除ということになります。

相続税の基礎控除の非課税額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

基礎控除の計算は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」となり、Aさんの例では「3,000万円+600万円×3」=4,800万円が基礎控除額となります。

この基礎控除額の範囲内で相続財産が収まる場合、相続税はかかりません

Aさんの相続財産は4500万円でしたから、相続税を支払う必要はないということになります。

もしも、この計算で基礎控除額を上回る相続財産がある場合には、その上回った分に対して相続税が課せられます。ただし配偶者に対しては、最低でも1億6,000万円までは非課税とする「配偶者の税制軽減の特例」があるため、相続税がゼロというケースも多くなります。

4.生命保険の非課税枠は相続対策になる?

ここまで読んでいただくとわかるとおり、生命保険の死亡保険金に対する非課税枠は、相続税を少なくするのに有効です。となれば、最初から遺産の相続税対策として生命保険を活用するという、逆の考え方をすることもできます。

そこで、生命保険の死亡保険金を相続に活用するメリットを整理していきます。

4-1.非課税枠の利用で課税対象額を減らせる

まず、言わずもがな、「500万円×法定相続人の人数」が税控除を受けられるのは、大きなメリットです。

例えば遺産が7,000万円あり、相続人が妻と子ども2人の合計3人の場合は、基礎控除の4,800万円を差し引いた2200万円が課税対象となります。これに対し、仮に生命保険の控除を上限まで1,500万円分使ったとすると、課税対象は700万円に。一気に減らすことが可能となります。

前述のような相続人が3人の例でいえば、保険金1,500万円の一時払い終身保険に加入すると、通常の相続資産の一部を保険金に移行でき、生命保険の非課税枠を存分に活用できます。「一時払い」とは保険料を契約時に一括で支払うことを指し、月払いや年払いに比べて保険料の総支払額も安く抑えることができるので、総合的にみてもお得になります。

4-2.受取人を指定できるので、財産を残したい人に残せる

さらに、生命保険で財産を残すメリットは税金面だけに留まりません。相続の際には残された財産をどう分割するかの遺産分割協議が行われます。この時に、法定相続人それぞれが遺産の配分などについて主張し、遺産争いが起きてしまうのはめずらしいことではありません。しかし生命保険であらかじめ保険金の受取人を指定することで、そういった争いが起きる余地がなくなります。

自分が親の立場で子どもが複数いた場合、自分の面倒をよく見てくれた1人により多くの財産を残したいといった希望を持つこともあるでしょう。そんな時には死亡保険金の受取人として指定することで、確実にその人に財産を渡すことができることとなり、モメ事が起きる心配もありません。

なお法定相続人以外に財産を残したい場合にも、受取人を指定できる生命保険の死亡保険金は有用です。ただし、この場合は非課税枠が使えないため、全額が課税対象になります。さらに、相続人ではない人が財産を得た場合には相続税が2割加算されるので、こちらも注意が必要です。

4-3.通常の相続財産と違い、すぐに受け取れる

保険の場合はお金の受け取りがスムーズなのも利点です。死亡した人が銀行に預けていた預貯金は一旦凍結され、出入金ができなくなります。遺産分割協議や遺言書などによって手続きを済ませれば、相続人が受け取ることができますが、ある程度の時間・手間がかかるのは否めません。

しかし、生命保険は遺産分割協議の対象外となるため、書類を用意して申請をすれば1週間程度で死亡保険金を現金で受け取ることができるのです。

5.まとめ:生命保険には相続税の非課税枠があり、税金対策として活用できる!

以上のように、生命保険は契約者と被保険者が同一で、死亡保険金の受取人が別な場合には相続税が課せられます。ただし、一定額について非課税となる税金優遇があるため、相続税対策として上手に活用することも可能です。

税金面だけでなく、生命保険の死亡保険金で財産を相続することにはさまざまなメリットがあるため、自分の家の場合はどのように活用するのがいいのか、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。