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生命保険の受取人が死亡していないとき、保険金は誰のもの?

  • 公開日:2019年10月30日
    最終更新日:2022年04月06日
  • 生命保険

2022-04-06

https://www.kurashino-okane.com/life-insurance/no-beneficiary/

死亡保険に加入するときは、保険金の受取人の指定が必要です。通常は、被保険者が亡くなったら、受取人が保険金の請求手続きをして死亡保険金を受け取ります。しかし、受取人のほうが先に亡くなってしまったときは、誰が保険金を受け取るのでしょうか。

この記事では、事例をもとに死亡保険金の受取人がいないときの対処法をお知らせします。

1.受取人が先に亡くなったら保険金はどうなるの?

子どものいない夫婦、生涯独身の人などは、配偶者や親を死亡保険金の受取人に指定するケースが多いのではないでしょうか。その場合、受取人のほうが被保険者よりも先に亡くなる可能性があることを考慮しておきましょう。

1-1.受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取る

受取人が先に亡くなった場合、本来は受取人の変更手続きをしなければなりませんが、変更をしていなかった場合は、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ります。これは、法律(保険法第46条)で「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」と定められているためです。

つまり、受取人の変更手続きをしておかないと、死亡保険金を受け取ってほしい人以外にもお金が渡ってしまうことがありということです。

1-2.では、その法定相続人とはどんな人?

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。法定相続人になれるのは、配偶者と血族です。配偶者は常に相続人になりますが、血族には優先順位があり、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になることができません

■法定相続人(血族)の順位

第1順位子(死亡している場合は孫などの直系卑属が代襲相続)
第2順位父母(死亡している場合は祖父母などの直系尊属が相続)
第3順位兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪が代襲相続)

保険金受取人が死亡している場合は、上記優先順位に基づき、保険金受取人の配偶者(いる場合)+優先順位の高い血族が法定相続人として受取人になります。また、この場合で受取人が複数になったときは、全受取人が死亡保険金を均等割で受け取ります。遺産相続の分割では配偶者や優先順位により法定相続分に重みづけがありますが、保険金の受け取りは遺産分割とは異なりますので注意が必要です。

1-3.  事例で見る、受取人死亡時の保険金のゆくえ

それでは、事例を見ていきましょう。

事例1 子どものいない夫婦(本人が母を受取人として死亡保険に加入していたケース)被保険者(および契約者):本人
受取人:母(先に死亡)
死亡保険金:1,000万円

本人が結婚前に母を受取人として加入し、結婚後および母の死亡後も受取人の変更をしていませんでした。夫婦に子どもはなく、本人には兄が1人います。

この場合、受取人は母の法定相続人である本人と兄になりますが、本人も死亡しているので、本人の権利はその法定相続人である配偶者に移ります。したがって、配偶者、兄の2人が受取人となり、死亡保険金を500万円ずつ受け取ります

仮に、本人が配偶者に死亡保険金を残したいと思っていたとしても、母から配偶者に受取人の変更をしていなかったために、兄も母の法定相続人として死亡保険金を受け取ることができるのです。このようなことにならないためには、適宜、受取人の変更を行うことが大切です。

※この事例は、保険法の条文や過去の判例に基づく一般的な法解釈により作成しています。保険会社や弁護士、学説などにより見解が異なる可能性もあります。また約款に規定がある場合は、その規定が優先されます。

2.受取人の法定相続人もいないときは?

次に、受取人が死亡していて、その法定相続人もいない場合をみてみましょう。

たとえば、一人暮らしの高齢者で、受取人である配偶者はすでに亡くなっており、ほかに身寄りがない場合などがあてはまります。

受取人の法定相続人がいない場合は、亡くなった人の財産は最終的に国庫に帰属します。裁判所が選定した相続財産管理人が、亡くなった人の財産を整理したのち、国庫に入れる手続きが執られます。

事例2 子どものいない夫婦(本人が配偶者を受取人として死亡保険に加入していたケース)被保険者(および契約者):本人
受取人:配偶者(先に死亡)
死亡保険金:1,000万円

本人が配偶者を受取人として死亡保険に加入し、先に受取人である配偶者が亡くなりました。本人の父母はすでに死亡し兄弟姉妹はいません。また、配偶者の父母・妹もすでに亡くなっています。したがって、受取人である配偶者、被保険者(および契約者)である本人ともに生存している法定相続人はいません。

このケースでは、本人が亡くなると死亡保険金を受け取れる人がいなくなります。このようなときは、死亡保険金は本人の相続財産とともに国庫に帰属することになります。

3.受取人が亡くなったときは変更手続きを忘れずに!

受取人が先に亡くなった場合は、すみやかに受取人の変更手続きをおこなってください。うっかり忘れてしまうと、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ることとなり、本来受け取ってほしい人以外にも死亡保険金が渡ってしまいます。親族間のもめごとに発展するおそれがあるので、注意が必要です。

4.死亡保険金と受取人

これまでみてきたとおり、受取人を誰にするかは重要な問題です。受取人は誰でもよいわけではなく、保険会社が指定する範囲の親族でなければなりません。

4-1.受取人になれるのはどんな人

基本的には2親等以内の血縁者とする保険会社が多いのですが、3親等内の親族(おじ:おば、甥・姪、曽祖父母など)まで受取人に指定できる場合もあります。一般的には、子や配偶者を受取人にすることが多いのですが、被保険者を受取人にすることも可能です。

■保険金受取人に指定できる人の範囲

保険金受取人に指定できる人の範囲

4-2.内縁関係(事実婚)、婚約者は受取人になれる?

保険会社によっては、内縁関係(事実婚)、婚約者も、一定の基準を満たせば受取人になれます。

4-3.同性パートナーは受取人になれる?

保険会社によっては、同性パートナーも、一定の基準を満たせば受取人になれます。

生命保険の受取人について詳しく知りたい方は、「生命保険の受取人になれる人|内縁や同性パートナーなどは?」の記事を参考にしてください。

5.まとめ:受取人が亡くなった場合のことも考えて加入を

死亡保険金の受取人が死亡したときは、すみやかに受取人変更手続きをおこないましょう。手続きを忘れてしまうと、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ることになり、親族間のもめごとになりかねません。保険に加入する場合は、受取人を誰にするかだけでなく、受取人が亡くなったときのことも考えておきましょう。

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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。