個人年金保険とは?|しくみと税金メリットを生かした貯蓄法

  • 公開日:2017年01月25日
    最終更新日:2023年07月12日
  • 生命保険

2023-07-12

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個人年金保険とは、老後の生活資金等を貯めていくための貯蓄タイプの保険です。 老後に向けた貯蓄方法としてはもっともオーソドックスな商品で、かつ個人年金保険料控除など税金面でのメリットがあり、総合的にみて損な貯蓄商品ではありません。

ただし個人年金保険には、途中解約や個人年金保険料控除の条件など注意しなければならないこともあります。それらのことを知らずに加入すると、損をしたり保険料控除のメリットを受けられなかったりすることもあります。

ここでは、まずはじめに個人年金保険がどんな商品であるかを初心者でもわかりやすいように説明するとともに、個人年金保険の良いところや注意すべき点を解説します。また他の貯蓄とも比較した上で、個人年金保険を活用するとよいのはどんな人かもお伝えしていきます。お読みいただくと、個人年金保険への理解が深まり、納得して老後資金の準備ができるようになるでしょう。

1. 個人年金保険とは?

個人年金保険とは、一定の年齢(60歳や65歳などの年金受取開始年齢)になったときに、支払った保険料から積み立てられたお金を年金として毎年受け取れる貯蓄タイプの保険です。 もし保険料払込期間中に死亡した場合には、それまでに支払った保険料に相当する額が戻ってきます。

■個人年金保険のしくみ

個人年金保険のしくみ

1-1. 老後に向けて貯蓄(積立)していく保険

一般的には、個人年金保険は、働いている現役世代のうちに加入して保険料を支払っていき、定年退職後に年金を受け取るようになっています。

定年退職後は公的年金もありますが、それだけでは不足しそうな場合に備えたり、ゆとりある生活を送るために、自分で老後資金を積み立てたいときに活用する金融商品の一つです。

1-2. 退職金などのまとまったお金を運用するタイプもある

個人年金保険のなかには、加入時に保険料全額を支払い、5年~10年程度の期間を経たあとで年金を受け取る一時払個人年金保険というものがあります。

一時払個人年金保険は、定年退職時に受け取る退職金などのまとまったお金があり、すぐに全額を使うことがない場合に、その一部を一定期間運用して将来年金として受け取ることができる商品です。

■一時払個人年金保険のしくみ 一時払個人年金保険のしくみ

なお、以下の章では、この一時払タイプではなく現役世代から保険料を支払っていき老後に年金を受け取る積立タイプの個人年金保険のことを中心に説明していきます。

2. 個人年金保険が良い理由

老後資金の準備方法として個人年金保険の良いところは、目的にあったわかりやすい商品性と個人年金保険料控除による税金上のメリットがあることです。

2-1. 目的にあった商品性

個人年金保険は個人年金という名称の通り、各個人が自分で準備する年金です。したがって個人年金保険に加入すると、老後のために貯蓄するという目的がぶれずに貯蓄を続けやすく、他の目的にお金を使ってしまうという失敗が起こりにくくなります。

また、一度に大金を受け取るのではなく年金としてもらっていくことが、日常の生活資金という用途にあっているといえます。

2-2. 個人年金保険料控除で毎年の税金が安くなる

個人年金保険は一定の条件をみたすと、個人年金保険料控除が使えます。この個人年金保険料控除は、1年間に支払った保険料の金額に応じて所得税や住民税が安くなる制度で、一般の生命保険料控除とは別枠で利用できます。

例えば、所得税率10%の一般的な所得の会社員が個人年金保険料を月額15,000円支払っている場合、所得税で40,000円、住民税で28,000円の所得控除を受けることができ、合計で年間6,800円(40,000円×10%+28,000円×10%)の節税効果があります。 ※ここでは復興特別所得税は考慮していません

この金額を何十年にも渡って節税できるので、そのメリットはかなり大きいものとなります。60~65歳くらいまで安定的な収入があって長期にわたり毎月コツコツとお金を貯めていくことができる人で、リスクのある運用を避けたい人にはおすすめの貯蓄といえます。

なお、個人年金保険の種類についてはこの後4章で詳しく紹介しますが、この個人年金保険料控除を利用できるのは、定額タイプの個人年金保険で以下のような要件をみたして税制適格特約をつけた場合となります。一時払タイプや変額・外貨建てタイプは対象となりません。

個人年金保険料控除の対象となる要件

  • 年金の受取人が保険料支払人(契約者)かその配偶者であること
  • 年金の受取人が被保険者であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること
  • 年金の支払開始が60歳以上で、支払期間が10年以上あること

個人年金保険料控除の具体的な節税効果のシミュレーションや申告方法について興味のある方は「個人年金保険の保険料控除でトクする金額と6つの注意点」をご参照ください。

3. 個人年金保険の注意点

前章で個人年金保険の良さを紹介しましたが、一方で注意しなければならないこともあります。

3-1.途中解約には要注意!

個人年金保険で一番注意が必要なのは、途中解約をしたときの元本割れリスクです。

個人年金保険は、年金受取開始年齢になる前の保険料を支払っている期間の途中で解約した場合、解約返戻金が戻ってきます。しかしその解約返戻金は、年金受取開始年齢に近い時期を除いて、多くの場合、支払った保険料の総額よりも少ない金額となってしまいます。

つまり、途中で解約すると損をしてしまうことが多いということです。(一時払商品は事情が異なります)

老後のために時間をかけて貯蓄していくというタイプの金融商品なので、途中でやめてしまうことがないような無理のないプランで加入しておくということが大切です。

個人年金保険を解約したときの解約返戻金の事例については「個人年金保険の解約リスクと年金を残すための3つの方法」をご参照ください。

3-2.その他の注意点

その他にも個人年金保険には以下のような点に注意する必要があります。

  • 個人年金保険料控除を利用するには細かい条件がある(詳細は2-2を参照)
  • 定額の個人年金保険はインフレに弱い
  • 変額個人年金保険・外貨建て個人年金保険については、商品特性と元本割れリスクをよく理解しておく必要がある

※定額、変額、外貨建てなどの個人年金保険の種類については次章で説明します

4. 個人年金保険を選ぶときに知っておきたい商品知識

個人年金保険のメリットや注意点がわかって、加入したいと思ったときにぜひ知っておいていただきたいことがあります。1章で、個人年金保険に積立タイプと一時払タイプがあることに触れましたが、それ以外にも年金の受け取り方や積立金の運用方法などにより、個人年金保険には多くの種類があります。個人年金保険を選ぶ前にそれらの違いについて把握しておきましょう。

4-1.年金の受け取り方の違い

個人年金保険は、下記表のように年金の受け取り方が大きく3種類あります。

■年金の受け取り方の主な種類

終身年金年金受取開始年齢に達して以降、被保険者が生存している間はずっと年金が支払われます。 生死に関係なく、一定期間の年金の支払いが保証された保証期間付終身年金もあります。
確定年金年金を受け取る期間が10年とか15年などとあらかじめ決まっている年金で、その期間内に被保険者が死亡した場合でも、残りの期間分の年金が支払われます
有期年金年金を受け取る期間が10年とか15年などとあらかじめ決まっている年金で、その期間内に被保険者が生存している場合に年金が支払われます。途中で死亡した場合は年金の支払いはなくなります。 生死に関係なく、一定期間の年金の支払いが保証された保証期間付有期年金もあります。

年金の本来的な意義からすると終身年金が理想的ですが、終身年金は保険料が割高になること、早く死亡してしまった場合に支払った保険料よりも少額の年金しか受け取れないことなどから、確実に支払ったお金が戻ってくる確定年金の方が人気があるようです。

年金額を同じとした場合に、3種類の受け取り方で保険料と最終的に受け取れる年金総額がそれぞれどう違うかをチャートで示すと以下のようなイメージとなります。

■3種類の年金の受け取り方の違い(イメージ)
3種類の年金の受け取り方の違い

なお、個人年金保険の年金を受け取るときには、支払った保険料よりも増えた部分に対して税金がかかります。詳しい税金のかかり方について知りたい人は「個人年金保険にかかる税金の基本と最もトクする受取方法」をご参照ください。

4-2.積立金の運用方法の違い

個人年金保険では、積立金の運用方法により大きく3つの種類があります。

■運用方法による種類

定額個人年金保険定額個人年金保険は、将来受け取る年金の額が契約時から決まっている個人年金保険です。定額というのは変額に対してのことばで、通常、区別の必要がないときは個人年金保険と表記されます。
  • ローリスク・ローリターン
変額個人年金保険

将来の年金支払いのための積立金を、株式や債券などのリスク資産で運用する個人年金保険です。運用成績により将来受け取る年金額が増減することになります。

変額個人年金保険のしくみについてはこちら→「すぐわかる!変額保険のメリット・デメリットと上手な活用法>4. 変額個人年金保険

  • ハイリスク・ハイリターン
  • ミドルリスク・ミドルリターン

※運用タイプにより異なります

外貨建て個人年金保険

将来の年金支払いのための積立金を、米ドルや豪ドルなどの外貨資産で運用する個人年金保険です。外貨ベースでは将来の年金額とは決まっています(○ドルなど)が、為替レートが変動するため、日本円に換算した年金額は増減することになります。

外貨建て保険の注意点についてはこちら→「外貨建て保険|入っていい人・いけない人&加入時の3つの注意点

  • ハイリスク・ハイリターン

手堅い貯蓄として活用するなら定額個人年金保険がよいですが、支払った保険料が年金として大きく増えるということはありません。一方、資産運用として活用するなら変額個人年金保険や外貨建て個人年金保険を選ぶことになりますが、運用成績や為替レートによっては受け取る額が大幅に増減する可能性があります。大きく元本を割れるリスクもありますので、年金額が小さくなると困るという方はご注意ください。

5. 個人年金保険は他の貯蓄と比べても良いといえるか?

ここで、個人年金保険の良さについてさらに突っ込んで考えてみましょう。老後のための貯蓄商品として他の貯蓄や制度と比べたとき、個人年金保険には利用価値があるといえるでしょうか?

5-1. 経済情勢が大きく変わらなければ定期保険より良い

貯蓄としてもっとも一般的な金融商品は銀行の定期預金ですが、現在、大手都市銀行の定期預金金利は0.002%(2021年12月1日時点)です。

個人年金保険は、商品にもよりますし単純に利率がいくらとはいえませんが、定額個人年金保険で途中解約せずに継続して年金をもらえば、今の定期預金金利の利率で貯蓄するよりも多くのリターンが期待できます。

また、個人年金保険料控除を使うと、税金の節約分だけで定期預金の金利より大きな金額になるため、個人年金保険の方に優位性があるといえます。

ただし、定期預金は今後の経済情勢により金利が変動するのに対して、個人年金保険は加入時点の利率が固定されるため、インフレが起きたときは不利になります。その点には注意が必要です。

5-2. リスクを負って運用するなら確定拠出年金もある

同じく年金と名のつく制度として確定拠出年金があります。かつては企業が福利厚生として導入する企業型がメインでしたが、制度改正により2017年1月から個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)を利用できる人が公務員や主婦、多くの会社員に拡大されて注目されている制度です。

確定拠出年金とは

国民年金や厚生年金などの公的年金に上乗せして加入する年金で、拠出金の運用について自分で指図する(どんな金融商品で運用するかを指示する)年金です。

確定拠出年金の最大のメリットは、毎月の掛金の全額が所得控除されるということです。このため、個人年金保険の保険料控除よりも控除額が大きくなり、節税効果もより大きくなります。

一方で、確定拠出年金は、拠出額に比べて手数料が割高(月額500~600円程度)という大きなデメリットがあります。また、確定拠出年金の運用商品についてみると、投資信託など一定のリスクがある商品が中心となっているため、運用成績によっては元本割れのリスクがあります。

以上の特性をふまえて、個人年金保険とどちらがよいかを判断すると、運用による元本割れを避けてコツコツためていきたい人は定額の個人年金保険の方がよく、投資信託などで積極的に運用したい人は確定拠出年金の方がよいといえます。

確定拠出年金について知りたい人は「確定拠出年金|2016年5月の法改正のポイントと制度の概要>3.確定拠出年金とは」をご覧ください。

6. 個人年金保険の活用があっている人

最後に、他の金融商品との比較も考慮して、個人年金保険をどんな人が活用すると良いかをご紹介します。

個人年金保険が適している人

  • 老後に向けて安定的な収入がある
  • 長年(10年以上)コツコツと貯蓄を続けていける人
  • 運用リスクをとりたくない人、または、資産の一部は安定的な運用をしたい人

個人年金保険の大きなメリットは、一定の条件の下、個人年金保険料控除が使えることです。したがって、現役世代から個人年金保険料控除の対象となる定額の個人年金保険に加入して、節税しながらコツコツとお金をためるプランに魅力を感じる人が、個人年金保険を活用するのに適している人だといえます。

また、積極運用したい人であっても、ベースとなる貯蓄として一定額を個人年金保険で貯めていくという考え方ができます。

いずれにしても、老後のために最低限用意したいお金はこのプランで貯めると良いでしょう。

なお、それ以外に余裕資金などを積極的に運用したいときには、変額個人年金保険や外貨建て個人年金保険を検討することになります。しかし、これらの保険はリスク商品なので、確定拠出年金や通常の投資信託・株式、REIT(不動産投資信託)なども含めて、幅広く商品選択することをおすすめします。

7. まとめ:個人年金保険とは老後資金をコツコツためるのに適した保険

定額の個人年金保険は、途中で解約さえしなければ、元本割れがなくお金を貯めていくことができます。さらに個人年金保険料控除を使えば、利率以上の節税効果があります。その点で老後資金の準備には適した保険だといえます。

一方で、変額個人年金保険や外貨建て個人年金保険は個人年金保険料が使えず、お金を増やせるかどうかは運用成績や為替レート次第というリスク商品です。したがって、他のリスク商品も含めた比較が必要となります。

個人年金保険についてまとめると、やはり個人年金保険料控除を活用してコツコツとお金を貯めるプランが一番のおすすめで、そのような貯蓄に適した保険だといえます。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。