低解約返戻金型終身保険とは、普通の終身保険よりも貯蓄性があって、老後資金を準備したり学資保険代わりに教育資金を準備することもできる人気の保険です。もちろん、一生涯の死亡保障を確保するために使っても割安ですし、最近は終身保険といえば、この保険を提案されることが多くなってきています。
ただし、途中で解約した場合は、普通の終身保険よりも解約返戻金が少なくなり大きく元本割れする場合がありますので注意が必要です。
そんな低解約返戻金型終身保険について、ここではその基本的なしくみや特徴、活用方法までをわかりやすく説明しています。また資金準備の活用例として、教育資金の準備法や学資保険との違いも解説しています。低解約返戻金型終身保険についての理解を深めて、ぜひ上手にご活用ください。
目次
1. 普通の終身保険より貯蓄性が高い低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間の解約返戻金の額を通常の終身保険よりも低くしていて、その代わりに保険料を割安にした保険です。保険料払込が終了すると、それ以降の解約返戻金は通常の終身保険と同じ水準に戻ります。
そのほか保障内容は通常の終身保険と同じです。
通常の終身保険についての詳細は「終身保険とは?|その特徴と確認すべき3つのポイント」をご覧ください。
1-1. 貯蓄性が高い理由
低解約返戻金型終身保険の貯蓄性が高いという話をするときは、実は、保険料払込期間が終了した後のことについて言っています。
低解約返戻金型終身保険は通常の終身保険より保険料が安くて、しかも保険料払込期間後についてみてみると、解約返戻金の額は通常の終身保険と同じです。つまり通常の終身保険より少ない出費で同じだけのお金が戻ってくる訳です。
支払った保険料の総額に対する解約返戻金の額の割合を返戻率といいますが、すなわちこの返戻率が高くなるということです。これが貯蓄性が高いといわれる理由です。
逆に、保険料払込期間中は解約返戻金が抑えられているので貯蓄性は悪くなります。
1-2. 低解約返戻金型終身保険の特徴
復習になりますが、低解約返戻金型終身保険は、通常の終身保険に比べて以下のような特徴があります。
- 保険料が安い
- 保険料払込終了後は貯蓄性が高い
- 保険料払込期間中は解約返戻金が少ない
保険料払込期間中の解約すると、支払った保険料よりも少額の解約返戻金しか戻ってきませんので、十分な注意が必要です。
2. 低解約返戻金型終身保険の4つの活用法
低解約返戻金型終身保険の特徴をいかすと、以下のような活用法がおすすめです。
2-1.死後の整理資金の準備
自分のお葬式代やお墓代を残すために加入するのが終身保険の基本的な使い方の一つですが、低解約返戻金型終身保険は保険料が割安なため、より適しているといえます。
2-2.相続対策
終身保険を利用すると、自分の死後に特定の人にお金を残すことができます。保険料が割安な低解約返戻金型終身保険は、このような活用法にもより適しているといえます。
2-3.老後資金の準備
一般的に、終身保険は60歳や65歳までに保険料の支払を終了させる加入の仕方が多く、それ以降は解約返戻金の返戻率が100%を超えてくるので、老後資金の準備に使うことができます。保険料払込期間終了後の返戻率がより高い低解約返戻金型終身保険は、老後資金準備にも適しています。
2-4.教育資金の準備
低解約返戻金型終身保険の保険料払込期間を10~15年くらいの短期間にして、こどもが大学に入学する前に保険料の支払いを終わらせておくと、大学入学資金を貯めることができます。返戻率のよい低解約返戻金型終身保険は、学資保険代わりに活用することができます。
具体的な活用例は「4.学資保険代わりに教育資金を貯める方法」でご紹介します。
3. 貯蓄のために加入する場合のチェックポイント
老後資金や教育資金を準備するために低解約返戻金型終身保険に加入する場合には、お金が必要となるときまでに目標金額がきちんと貯められるかどうかが重要となります。したがって、保険設計にあたり以下のポイントについてチェックが必要です。
3-1.何年で保険料払込を終了するか?
低解約返戻金型終身保険の解約返戻金の返戻率を100%以上にするには、お金が必要となるときよりも前に保険料の支払いを終わらせておかなければなりません。保険料の支払いは早く終わらせるほど返戻率は高くなりますが、1回あたりの保険料の支払額は大きくなります。保険料の支払いがつらくなって途中で解約すると、元本割れになってしまいますので、保険料負担のバランスを考えて設計することが大切です。
3-2.返戻率は何%か?
低解約返戻金型終身保険をお金が必要なタイミングで解約した場合に、受け取る解約返戻金の返戻率が何%になるかを加入前にしっかりチェックしておくことが大切です。返戻率が100%を超えているのは当然のこととして、他の保険や金融商品と比較してより貯蓄性が高いものを選ぶようにしましょう。
4. 学資保険代わりに教育資金を貯める方法
低解約返戻金型終身保険はさまざまな資金の準備に活用できますが、ここでは学資保険代わりに教育資金を貯めるプランをご紹介します。
4-1. 大学入学資金を貯めるためのプラン例
30歳のAさんは、長男が誕生したことをきっかけに、将来の大学進学資金として200万円程度は貯めたいと考えました。そのことをFPに相談したところ、低解約返戻金型終身保険を使ったプランを提案されました。
- 契約者:30歳男性(Aさん、長男は0歳)
- 保険金額:300万円
- 保険料払込期間:15年
- 月額保険料:10,209円
加入からの年数 払込保険料総額(a) 解約返戻金額(b) 返戻率(b÷a×100)
- 15年後 1,837,620円 1,922,160円 104.6%
- 18年後 1,837,620円 1,988,610円 108.2%
- 30年後 1,837,620円 2,269,713円 123.5%
保険料を15年で支払い終えているので、
こどもが大学に入学する18歳になったときには解約返戻金が100%を超えるように設計されています。
このケースの場合、こどもが18歳になり大学に入学するときには、約198万円を貯めることができ、解約して大学進学資金に使うことができます。解約返戻金は、支払った保険料に対して+8.2%の額になります。
4-2. 学資保険との比較
Aさんが、B生命の学資保険で同じような金額を貯められるプランについてみてみましょう。
- 加入者:30歳男性(Aさん)
- 被保険者:Aさんの長男0歳
- 受取総額:180万円(高校入学30万円、大学入学60万円、大学2~3年時に毎年30万円)
- 保険料払込期間:18年
- 月額保険料:7,914円
加入からの年数 払込保険料総額(a) 解約返戻金額(b) 返戻率(b÷a×100)
- 18年後 1,709,424円 1,800,000円 105.2%
保険料支払期間や教育資金の受け取り方が違うため単純比較はできませんが、低解約返戻金型終身保険の返戻率108.2%は、学資保険とそん色なく活用できることがわかります。
4-3. 学資保険と比べたメリット・デメリット
低解約返戻金型終身保険を学資保険と比べた場合のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。
<メリット>
- 加入条件によっては学資保険より返戻率が高くなることがある
- こどもが学資保険に入れない年齢になってからも加入できる可能性がある
(そのかわり保険料払込期間は短くなり月額保険料は上がる) - 保険料払込期間中に万一契約者が死亡した場合は死亡保険金が受け取れる
- 教育資金が不要になった場合でも、継続して貯蓄が続けられる
<デメリット>
- 加入条件によっては返戻率が低くなる
- 親の健康状態によっては加入できない場合がある
4-4. 低解約返戻金型終身保険を学資保険代わりに使うときの注意点
低解約返戻金型終身保険を学資保険代わりに使うときには、どのような設計プランにするかによって、解約返戻金の返戻率が変わってきます。加入する場合には、いろいろと条件を変えてみて複数のプランを比較しながら検討するようにしましょう。
したがって、加入相談は、丁寧にいろいろなプランを提案してくれるような人にお願いすることも大切です。なお、そのときのチェックポイントは、基本的に「3.貯蓄のために加入する場合のチェックポイント」と同様です。
5. まとめ:設計次第でいろいろ使える終身保険
低解約返戻金型終身保険は、通常の終身保険よりも保険料が割安になるため、死亡保障が目的でも貯蓄が目的でもどちらでも活用しやすい便利な保険です。終身の死亡保障やお金を貯める必要があるときには、ぜひ検討してみてください。
ただし、保険料払込期間中の解約はデメリットになりますので、そこだけはご注意ください。
- 死後の整理資金の準備
- 相続対策
- 老後資金の準備
- 教育資金の準備
なお、最近はマイナス金利の影響による運用難から、低解約返戻金型終身保険の貯蓄性が低下し、返戻率が悪くなっています。そのため保険会社は、より予定利率(運用利率のようなもの)が高い外貨建て終身保険の販売に力を入れています。実際に提案された方も多いのではないでしょうか?
ただし、外貨建て保険はリスク商品で、為替変動により大きく得する場合もあれば損する場合もある保険です。加入を検討される場合は、下記ページを参考にしてご判断ください。
・「リスクがこわい!?ドル建て終身保険選びの3つのチェックポイント」
・「外貨建て保険|入っていい人・いけない人&加入時の3つの注意点」
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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。