かんたん保険診断

生命保険の受取人の決め方と注意点

  • 公開日:2020年10月30日
    最終更新日:2022年04月06日
  • 生命保険

2022-04-06

https://www.kurashino-okane.com/life-insurance/uketorinin/

生命保険に加入する際に、「生命保険金受取人」(以下、受取人)を指定する必要があります。

ここでは、「受取人を誰にしたら良いのか」あるいは「受取る人によって何か変わるのか」など受取人に関する基礎知識と決め方について解説します。

この記事は、ほけんペディア®の許可を得たうえで転載した記事となります。
■元記事:https://hokenpedia.itcstg.jp/seimeihoken/uketorinin/

まず基本の確認

「契約者とは」・・・生命保険会社と保険契約を結び、契約上の様々な権利(例えば、契約内容の変更等の請求)と義務(保険料を支払う義務)を持つ人の事を言います。

「被保険者とは」・・・保険(保障)がかけられている人のことを言い、その人の死亡・病気・ケガ等が保険の対象になります。

「受取人とは」・・・保険金・給付金・年金などを受け取れる人の事を言います。

保険金の受取人は誰でもいいの?

基本的な受取人は、「配偶者」または「二親等以内の親族」となります。

受取人指定の順位
①配偶者
②一親等(親・子)
③二親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)

保険会社によっては、二親等以内の親族がいない場合、三親等内の親族(叔父・叔母・甥・姪等)を指定できる場合もあります。

また、受取人を複数指定することも可能です。

例えば、2人のお子様両方に受取人にしたい場合など、割合に応じて指定することが可能です。(例:長男50%・長女50%など)

加えて「内縁関係」「婚約関係」についても、保険会社の一定の基準(※)をクリアすれば受取人の指定をすることが可能な場合があります。

(※)
・お互いが独身であること
・2年以上生計を共にしている(同居している)
・一定期間内に結婚の予定があること(婚約の場合)

2015年の「渋谷区パートナーシップ証明書発行」をきっかけに、同性パートナーを受取人として指定できる生命保険も増えています。

LGBTに対応する動きが拡大しています。(火災保険・自動車保険にも広がり)

保険会社により提出書類が異なりますが、主に「2人の住民票や戸籍の写し」「自治体発行のパートナーシップ証明書」の提出が必要になります。

なお、この章の最後になりますが、生命保険は、万が一の際に残された家族の生活を守ることが目的であり、内縁のパートナーが死亡した場合、たとえ籍が入っていなくても、それまで生活を共にしてきた家族として保険金を受け取ることが出来る権利は十分にあると考えています。

保険金にかかる税金

ここでは、保険金にかかる税金について解説をします。

生命保険にかかる税金は、「契約者」「被保険者」「受取人」の関係によって変わってきます。これらの関係によって下表のように「相続税」「贈与税」「所得税」のいずれかの課税対象になります。

保険契約者被保険者受取人課税関係
AAB相続税
ABC贈与税
ABA所得税

相続税

死亡保険金は、残された家族の生活保障という目的を持っており、「死亡保険金の非課税枠」が設けられています。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

また、「死亡保険金以外の非課税枠」として「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除枠があります。配偶者については1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までの非課税枠が設けられています。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

贈与税

贈与税がかかる契約形態の場合、死亡保険金から贈与税の基礎控除110万円を差し引いた金額が贈与税の課税対象になります。

課税所得=死亡保険金―基礎控除額110万円

所得税

所得税がかかる契約形態の場合、死亡保険金額から払込保険料総額を引き、さらに特別控除50万円を引いた金額に対して1/2が課税対象になります。

一時所得=(死亡保険金額―払込保険料総額―特別控除50万円)×1/2

受取人を決めるときの注意点

ここでは、受取人を決めるときの注意点について解説をしていきます。

まず、大変重要な事として「受取人が受け取る生命保険金は、【受取人固有の権利】」という点です。

生命保険金は、被保険者の「相続財産として」受取人に支払われるのではなく、【契約当初から受取人の固有の権利】として受け取るお金となります。

もう少し、わかりやすく解説しますと、例えば離婚をしたケースで、夫の保険契約に指定されていた受取人が元妻であった場合、離婚により親族関係は解消になり、元妻は法定相続人には含まれませんが、離婚前に加入していた生命保険の保険金に関する受取人の権利は有効のまま存続します。

仮に、夫が亡くなった場合には、受取人である元妻に保険金受取人としての権利があり、保険金が支払われることになります。

離婚が決まった際には、すみやかに子がいる場合には子に、いない場合には親など二親等内の親族に変更をしておく必要があります。

また、独身時代に加入していた生命保険についても、受取人を両親に指定しているケースが多いかと思います。

結婚後、夫に「万が一」があった際、当該保険の受取人が両親のままになっていると当然の事ながら、配偶者である妻には保険金は支払われません。

故人の遺志としては残された家族のための生命保険であったはずですから、こうした問題に直面しないためにも、結婚後速やかに配偶者あるいは子などに変更をしておくことをおススメします。

受け取る保険金の課税対象額を少なくする方法は?

生命保険は、契約形態「契約者・被保険者・受取人」によって、保険金を受け取る際の税金が異なります。

税法上、相続税には、死亡保険金の非課税枠や相続税の基礎控除などがあるため、贈与税等に比べ、課税対象額を少なくすることが可能です。

保険契約形態については、「契約者=被保険者」「受取人=法定相続人」とした契約形態にしておくことで相続税の対象となります。

一方、一時所得で保険金を受け取る場合には、「契約者=受取人」の契約形態となりますが、上述の通り、死亡保険金から払込保険料総額を引き、さらに50万円の特別控除を引いた金額に対して1/2課税となります。

受取人の変更方法

受取人の変更方法について解説をします。

受取人は、「いつでも」・「何度でも」・「遺言によっても」変更が出来ます。

生命保険は、長期にわたり加入することが一般的ですから、その時々の状況に合わせて受取人の変更も検討していく必要があります。

また、受取人変更の権利は契約者にありますので、受取人の承諾は必要ありません。(被保険者が契約者と異なる場合は、被保険者の同意が必要になります。)

実際の変更手続きは、保険会社指定の受取人変更書類と公的証明書および保険証券の提出が必要になります。

また、新たな受取人が記載された保険証券発行を希望する場合には、保険証券再発行の依頼を同時に進めることが可能です。

上述の「遺言によっても」変更ができる点ですが、ケース的には少ないかとは思いますが、手続きとして変更は可能です。

ただし、遺言による受取人変更の場合、遺言書の形式が法律上不適切だった場合には、変更が出来ないケースもあります。

遺言の有効性の証明などにも時間を要する場合もあり、保険金支払いが遅れることも考えられます。

と言った問題点もあることから、通常の受取人変更手続きを「適時」行っておくことが大変重要になります。

受取人が相続放棄をした場合は課税対象になる?

前述の通り、生命保険の死亡保険金は、「受取人固有の財産」となります。

ですから、相続を放棄しても死亡保険金を受け取ることが可能です。

但し、この死亡保険金は、税制上「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

また、受取人が相続を放棄した場合には、相続人としてみなされないため、生命保険の非課税金額「500万円×法定相続人数」の適用を受けることが出来ません。

(相続放棄した本人は非課税の適用を受けることは出来ませんが、非課税金額を算定する際には、法定相続人の人数に含めて計算をします。)
一方、相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人数」は相続放棄をした場合でも適用となります。死亡保険金が基礎控除額の範囲内であれば、相続税はかかりません。

まとめ

保険金の受取人を決める際には、契約形態によって課税される税金が異なってくる点や、婚姻や離婚等ライフイベントの変化があった際には、すみやかに受取人の変更をしておくことの重要性について解説をして参りました。

そして、最も大切なことは、生命保険は契約者の遺志に基づいた形で家族に支払われることが最大の目的です。不要な争いにならないよう正しく受取人を指定しておくことが重要となります。

執筆:綿引 隆弘(ファイナンシャル・プランナー)
1995年大学卒業後、大手住宅販売会社に入社。FP資格を活かすべく2002年外資系金融機関に転職。ライフプラン・相続事業承継・リタイアメントマネジメント等、法人・個人への提案業務に従事。2012年、更なるソリューションを追求するために独立し現在に至る。~Improve your quality of Life~(価値ある人生のお手伝い)を旨として、人生に関わるすべての課題・問題に対し、ファイナンシャル・プランナーとして、また保険マンとして、そしてひとりの人間として、解決方法を見出していく活動をしています。ほけんペディアへの記事掲載については、より多くの方々に保険について詳しく知って頂きたいという気持ちと自分自身が真摯に保険に向き合うことが出来る素敵な時間になっています。

■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格、トータル・ライフ・コンサルタント

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。