【必携】災害に遭ったらどうする?公的支援制度あれこれ

2022-04-06

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災害に遭ってしまったら、どう生活を建て直すか。いざというときのために、誰もが考えておきたい問題です。

今回は、「住宅」「家計」「学校」の3つの視点から、災害時に受けられる公的な支援についてご紹介します。

1.【住宅編】住まいを取り戻すための支援

はじめに、住まいについて考えます。災害により自宅が壊れてしまった場合に受けられる支援について見ていきましょう。

1-1.<修理・補修>自治体による応急修理や公的機関融資も

まずは、自宅が半壊するなどして、修理・補修が必要になったケースについて確認していきます。

住宅の応急修理(災害救助法)

住宅の応急修理は、住宅の居室や水回りなどを、生活に必要な最小限の部分に限って修理してもらえる制度です。修理は、自治体の委託を受けた業者が実施します。

対象は、災害救助法が適用された自治体の、半壊、大規模半壊または一部損壊となった住宅の住民。支給限度は、1世帯当たり半壊または大規模半壊の場合59万5,000円(税込)以内、一部損壊の場合30万円(税込)以内となっています。各自治体への申し込みが必要です。

災害復興住宅融資(補修)

災害復興住宅融資(補修)は、住宅を補修するための資金を、独立行政法人住宅金融支援機構(以下、機構)が融資する制度です。対象は、被災した住宅の住民または所有者で、住宅が被害を受けた旨の、り災証明書の交付を自治体から受けている人です。

補修資金の融資限度額は1,200万円(10万円以上1万円単位)で、返済期間は最長で20年または年齢に応じた最長返済期間です。機構への申し込みが必要です(融資を受けるためには、住宅が機構の定める基準に適合していることが必要です)。

1-2.<建設・購入>住宅金融支援機構の融資が受けられる

続いて、住宅を建設・購入する場合の支援について確認します。

災害復興住宅融資(建設)

災害復興住宅融資(建設)は、新しい住まいの建設資金を機構が融資する制度。対象は、被災した住宅の住民・所有者で、自治体から住宅が全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊した旨の、り災証明書を交付された人です。
※大規模半壊、中規模半壊、半壊は修理不能または困難である旨の説明が必要

融資額の限度は、3,700万円(10万円以上1万円単位)です(土地を取得しない場合は2,700万円)。返済期間は最長35年で、機構への申し込みが必要です。

災害復興住宅融資(新築住宅,中古住宅購入)

新築住宅や中古住宅を購入する場合も、資金を機構から融資してもらえます。この制度も、住宅が全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊した旨の、り災証明書を自治体から受けている人が対象。融資額の限度は3,700万円です。返済期間は35年です。
※大規模半壊、中規模半壊、半壊は修理不能または困難である旨の説明が必要

1-3.低所得世帯などへの融資制度

収入が少ない世帯や、障害者・高齢者世帯、母子・父子世帯の場合は、住宅資金について、さらなるバックアップを受けることができます。

生活福祉資金制度による住宅資金の貸付(福祉費)

都道府県の社会福祉協議会が主体となって実施している生活福祉資金貸付制度。このうち福祉費について、災害時の住宅補修・増改築などにも利用ができます。

対象は低所得者世帯と障害者世帯、高齢者世帯。住宅のための貸付は、限度額が250万円、返済期間は7年が目安です。連帯保証人がいれば無利子ですが、いない場合は年利1.5%となります。各自治体の社会福祉協議会への申請が必要です。

母子父子寡婦福祉資金の住宅資金

厚生労働省の母子父子寡婦福祉資金のうち、住宅資金の部分を災害時の住宅建設・購入・補修などに利用することもできます。対象となるのは、母子家庭の母親、父子家庭の父親、夫と死別・離別した寡婦です。

貸付の限度は200万円。返済期間は7年となっています。連帯保証人を立てれば無利子、そうでない場合は年利1.0%です。申し込みは自治体の福祉事務所で行ってください。

2.【家計編】生活再建への経済的支援

次に確認したいのが、暮らしを立て直すための生活資金について。給付や融資などの制度を見ていきます。

2-1.まず活用したい給付型支援

被災したときの家計に対する大きなサポートになる、給付型の支援についてご紹介します。

被災者生活再建支援制度

被災者生活再建支援制度による給付金は、使途が限定されておらず、自由に使うことができます。対象は、災害により住宅が全壊、大規模半壊、中規模半壊になった世帯です。

全壊世帯には100万円、大規模半壊世帯にはは50万円の基礎支援金が支給されます。その後住宅を建設・購入する場合は200万円、補修なら100万円、賃借(公営住宅以外)は50万円の加算支援金が上乗せされます。なお、世帯人数が1人の場合は、3/4の金額になります。各自治体への申請が必要です。また、令和2年度の法改正により、中規模半壊世帯に対し、住宅を建設・購入する場合は100万円、補修する場合は50万円、賃貸する場合は25万円が加算支援金として支払われます。世帯人数が1人の場合は、3/4の金額になります。

2-2.住宅ローンの返済猶予なども利用可

機構のローンを利用している人は、返済を待ってもらうなどの措置を受けられます。

住宅金融支援機構融資の返済方法の変更

機構には、返済方法の変更という制度があります。対象となるのは、被災しその後の収入が機構の定める基準以下となる見込みの人です。

被災の程度によって、返済金の払込みの据置(返済猶予)(1~3年)、据置(猶予)期間中の金利引下げ(0.5~1.5%減)、返済期間の延長(1~3年)などが適用されます。返済を行っている金融機関へ相談してください。

2-3.生活再建のための貸付(融資)制度

生活を立て直すための資金の貸付制度をご紹介します。

災害援護資金

生活再建支援として、災害援護資金という貸付(融資)制度があります。災害救助法が適用された市町村が1つでもあった災害で負傷したり、住居や家財に損害があった人が対象です。

貸付には所得制限があります(2人世帯の場合、前年中の総所得額が430万円未満)。貸付の限度額は被災の程度によって異なりますが、最大で350万円。年利3%、10年返済が原則です。各自治体へ申し込んでください。

生活福祉資金制度による臨時資金の貸付

「1-3低所得世帯などは他の制度の利用も」でご紹介した生活福祉資金制度による貸付。福祉費について、災害により臨時に必要となる経費として利用できます。限度額の目安は150万円となっています。

3.【学校編】就学継続のための支援

続いて取り上げるのは、被災した子どもたちに学業を続けてもらうためのサポート。現物支給から資金援助まで、さまざまな制度が設けられています。

3-1.<小中学生>教科書支給や給食費援助なども

義務教育である小中学生に対しては、下記のような支援メニューがあります。

教科書等の無償給与(災害救助法)

教科書等の無償給与は、災害のために学用品を失った児童・生徒に対して、教科書や教材、文房具、通学用品を現物支給する制度です。対象は、災害救助法が適用された自治体の小中学校、特別支援学校などの児童・生徒。通学している学校へ相談してください。

小・中学生の就学援助措置

就学に必要な学用品費や通学費、給食費などを援助してもらえる制度もあります。対象は、被災により就学が困難になった児童・生徒の保護者。避難をしている場合でも、制度の利用は可能です。こちらも、まずは学校へ問い合わせてください。

3-2.<高校生>授業料減免措置が利用可能

続いて、高校生に対する就学サポートについてご紹介します。

教科書等の無償給与(災害救助法)

さきほど小中学生の支援で紹介した教科書等の無償給与は、高校生も対象。災害救助法が適用された自治体の高校生・特別支援学校などの生徒に適用されます。

高等学校授業料等減免措置

授業料に対する支援もあります。災害により経済的に困窮している生徒を対象に、授業料や入学料などの減免や猶予、免除などの措置が行われます。通学している学校に相談してください。

3-3.<大学・各種学校>授業料減免のほか奨学金も

最後に、大学や専門学校などの学生に対しての支援について見ていきます。

大学等授業料等減免措置

大学などに通う学生のために、授業料などの減免措置があります。対象は、災害による家計急変で経済的に困窮している、大学、短期大学、大学院、高等専門学校の学生。授業料などの減額、免除が行われます。各学校が個別に支援内容を決めているので、まずは通っている学校に問い合わせてください。

緊急採用奨学金(日本学生支援機構)

日本学生支援機構(JASSO)の緊急採用を、災害時に申請することもできます。これは、家計の急変で就学が難しくなった大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)の学生を対象とした奨学金(第一種・無利子)。一定の学力基準を満たす必要があります。

また、学力基準が比較的ゆるやかな応急採用(第二種・有利子)の制度もあります。いずれの場合も、通っている学校に相談してください。

4.いざというときのために各種制度を理解しておこう

この記事では、災害時の住宅の補修・建設・購入や、生活再建、そして就学継続に役立つ公的支援制度についてご紹介しました。今回は概要のみ掲載しているので、資格要件など各制度の詳細は、自治体など窓口となる機関に確認することをおすすめします。

また、ここで取り上げた制度のほかにも、さまざまな支援メニューが用意されているので、下記のページからご覧ください。いざというときにスムーズに支援を受けるためにも、どんな制度があるのかを理解しておきたいですね。

<参考>被災者に対する支援制度(内閣府)

※本記事は2022年3月現在の情報をもとに各種支援制度を紹介しています。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親 (編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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