あなたの口座も対象に!? ついに始まった「休眠預金」制度とは

2022-04-06

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2018年1月、みなさんの預貯金に深く関わる、ある法律が施行されました。それは、「休眠預金等活用法」。毎年数百億円ずつ増えているという「眠った預金」を、公益のために使おうというものです。

これだけ聞くと、「自分の預金が国に没収されてしまう!?」と、少し不安になってしまいます。そこで今回は、2019年1月から本格的に始動したこの制度をわかりやすく解説していきます。

1.「休眠預金」って、なに?

「休眠預金」という言葉について、くわしく見ていきましょう。

1-1.2019年は「休眠預金元年」

昔から、長い間取引のない預金を休眠預金と呼んでいましたが、「休眠預金等活用法」の中で改めて定義されました。

この法律では、「2009年1月1日以降の取引から10年以上、取引がない預金等」のことを「休眠預金等」と呼んでいます。つまり、2019年1月1日から、法律上の休眠預金が次々に生まれていくことになったのです。

1-2.休眠預金は公益活動に活用される

もし自分のお金が休眠預金になったら、どうなってしまうのでしょうか。まず、休眠預金等活用法の対象になったからといって、預金がすぐに「没収」されるわけではありません。預金者へ払い戻す努力が尽くされた上で残ったものが、政府などが出資する「預金保険機構」へ移管されるのです。

移管された後は、公益活動に取り組む民間団体への助成金や、貸付金などに活用されることになっています。

1-3.従来の「休眠口座」との違いは?

「休眠預金等活用法」が施行される前から、各金融機関では独自のルールで休眠口座を設定していました。「睡眠口座」「睡眠貯金」といった呼び方もあります。中には、2年間取引がないだけで「睡眠」扱いとなり、口座維持手数料が毎年引かれる場合もあります。ご注意ください。

休眠預金と同様、預金自体がなくなるわけではありませんが、引き出すためには窓口での手続きが必要になります。

2.休眠預金の対象になるのはどんな預金?

「休眠預金等活用法」では、休眠預金になる預金の種類が決まっています。

2-1.一般的な預金が対象、財形や外貨預金は対象外

休眠預金等活用法の対象となるのは、普通預金のほか、定期預金、当座預金、定期積金などです。郵便局(ゆうちょ銀行)や農協などの「貯金」も対象です。

一方で、財形貯蓄(財形住宅・財形年金)や、障がい者や遺族年金受給者のための非課税貯蓄制度(マル優)の適用を受けている預金は対象外です。また外貨預金も、日本の預金保険制度ではないため対象外となります。

2-2.最終取引が2008年以前の預金も対象外

最初に触れたとおり、休眠預金になるのは「2009年1月1日以降の取引から10年以上、取引がない預金等」と決まっています。このため、2008年12月31日以前が最終取引となっている場合は、金融機関から預金保険機構に移管されることはありません

ただし、各金融機関が定める「休眠口座」などになっている可能性が高いので、一度確認してみることをおすすめします。

2-3.「登録住所から転居」「残高1万円以下」は要注意

対象となる預金のうち、1万円以上の残高がある預金については、金融機関から登録されている住所へ「通知」が郵送されることになっています。この通知を受け取れば、以後10年間、休眠預金になることはありません。

注意しなければならないのは、
 ①転居などのため、通知が金融機関に返送されてしまった場合
 ②残高が1万円以下の場合
の2パターンです。

これらに該当する場合は、自分の知らないうちに休眠預金とされてしまう可能性があります。

2-4.「記帳」「残高照会」は取引にあたらない可能性

もう一つ注意しておきたいのが、「最終取引」の定義です。

当然、入金や出金は取引として認められていますが、記帳や繰越、残高照会などについては金融機関によって扱いが異なります。これらが取引として認められず、最後の入出金から数えて10年が経てば、休眠預金とされてしまうケースも考えられます。

3.もしも「休眠預金」になってしまったら?

あなたの預金が、もし休眠預金になってしまったら、もう戻ってこないのでしょうか?

3-1.移管後も、引き出しは可能

休眠預金になったお金は、各金融機関から「預金保険機構」へ移管されます。しかし、移管後も「没収」はされず、後から引き出すことは可能です。期限の定めもありません。

通帳やキャッシュカード、本人確認書類などが必要になりますが、取引のあった金融機関で預金を引き出すことができます。休眠預金になったことに後から気づいても、あきらめないでください。

3-2.公益活動に活用されても、休眠預金が引き出せる理由

しかし、ここで一つ疑問が残ります。先ほど、「休眠預金は民間公益活動に活用される」ことに触れました。使われているはずのお金がなぜ引き出せるのでしょうか。それは、休眠預金のすべてが使われるわけではないからです。全体の5割程度が、引き出しのための準備金として積み立てられることになっているのです。

4.まとめ:まずは確認! 気になったら金融機関へ連絡を

もう一度確認してください。「学生時代に使っていた」「以前の勤務先から給与振込のために作らされていた」「結婚前に使っていた」「亡くなったおばあちゃんが使っていた」など、休眠している口座はないでしょうか。

とにかく、思い当たる口座があれば金融機関に連絡してみましょう。あなたや家族の大切な預金を、眠りから覚ましてあげてください。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親 (編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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