親の収入は子どもの教育費や学力に関係するの?

2022-09-14

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子どもにかける教育費や子どもの選択する進路は、家庭の教育方針によって異なりますが、そこに大きく影響してくるとされるが親の年収です。

今回は、親の収入によって子どもの教育費がどれくらい違うのか、また学力との関係性はあるのかについて文部科学省の調査結果をもとに紹介していきます。

1. 親の年収による教育費の差は公立小学校でも約2.5倍!

文部科学省が教育費の実態として調査した「平成28年度子供の学習費調査」のデータを元に、親の年収と子どもの教育費の関係についてみていきます。

1-1. 年収と年間の学習費の関係

まずは、世帯年収別の1年間にかかる学習費を比較します。学習費とは、「学校教育費」、「給食費」、「学校外活動費」を合わせたものです。

具体的には、学校でかかる授業料・PTA会費・修学旅行代・入学金・寄付金・制服・学用品代・通学費・クラブ活動費、給食代に学習塾・習い事代などを含んだ費用となります。

■公立・私立学校別 世帯年収ごとの年間平均学習費[単位:万円]

 小学校中学校高校(全日制)
公立私立公立私立公立私立
400万円未満23.3104.939.3109.435.076.0
400万円~599万円
26.6117.343.4112.739.689.4
600万円~799万円31.3130.048.9123.046.499.9
800万円~999万円37.1139.751.2131.452.4114.0
1,000万円~1,199万円43.7152.458.1132.956.0110.0
1,200万円以上58.4173.062.8146.973.2130.4

※文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」を基に『くらしのお金ニアエル』にて作成

上記の図から世帯年収と学習費の関係をみると、世帯年収が上がるほど、学習費も増加している傾向にあります

また公立よりも私立のほうが、世帯年収が上がるにつれ、学習費の増加額が大きく、格差が生まれやすい傾向にあるように思われます。

1-2. 年収と年間の補助学習費の関係

続いて、塾や家庭教師などにかける「補助学習費」をみてみましょう。

■公立・私立学校別 世帯年収ごとの年間平均補助学習費[単位:万円]

世帯年収小学校中学校高校(全日制)
公立私立公立私立公立私立
400万円未満4.417.015.916.26.98.8
400万円~599万円
5.421.219.813.810.616.2
600万円~799万円6.723.025.614.113.220.4
800万円~999万円10.627.127.519.621.423.0
1,000万円~1,199万円14.331.632.218.521.225.5
1,200万円以上23.236.034.027.835.439.2

※文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」を基に『くらしのお金ニアエル』にて作成

小、中、高および公立私立を問わず、世帯年収が高いほど補助学習費の金額は大きくななっています。特に高校では、世帯年収1,200万円以上の世帯は1,000万円~1,199万円の世帯より急激に金額が大きなっており、大学受験に向けて塾代や家庭教師などの補助学習により力を入れていることが読み取れます。

公立小学校でも、世帯年収1,200万円以上の世帯では、急激に補助学習費が増えています。これは高校と同様の傾向です。公立小学校から私立中学校への受験を見すえ、学校外の教育に力を入れる高所得世帯が多いことが背景にあると思われます。

2. 家庭の経済状況は学力の差に影響するの?

高所得世帯の方が、子どもの教育費にお金をかける傾向になることがわかりましたが、では経済状況によって学力の差は果たして生まれるのでしょうか?

お茶の水女子大学が行なった「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の 専門的な分析に関する調査研究」(平成25年)によると、世帯年収が高いほど成績が良いという調査結果が出ています。

■世帯年収と学力(正答率)の関係[単位:%]

 小6
国語A国語B算数A算数B
200万円未満67.348.569.735.6
200万円~300万円69.650.772.038.9
300万円~400万円70.652.273.539.8
400万円~500万円73.255.376.742.7
500万円~600万円74.756.778.544.9
600万円~700万円75.558.279.146.5
700万円~800万円76.760.281.048.2
800万円~900万円77.861.582.650.4
900万円~1,000万円79.062.484.252.1
1,000万円~1,200万円80.565.585.956.3
1,200万円~1,500万円81.466.687.157.1
1,500万円以上82.366.787.458.9
不明74.156.377.745.3

※お茶の水女子大学「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の 専門的な分析に関する調査研究」を基に『くらしのお金ニアエル』にて作成

これは、世帯年収を200万円未満から1,500万円以上という12段階に分けて、公立小学校6年生の国語と算数の平均点と世帯年収との関係性を調べたものです。世帯年収が上がるにつれ、児童の正答率は高くなり、例えば知識の活用力を測る算数Bに関しては、世帯年収1,500万円以上の子どもの平均正答率が58.9%だったのに対し、200万円未満は35.6%となるなど、年収によって差が開いています。

また同大学による「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する 調査研究」では、学校外教育支出が多い世帯の児童(公立小学校6年生対象)ほど正答率が高い傾向がみられるという調査結果も出ています。

■家庭の教育投資と子どもの学力[単位:%]

 小6
国語A国語B算数A算数B
支出はまったくない53.439.667.948.0
5千円未満58.844.774.454.7
5千円以上1万円未満61.347.676.256.4
1万円以上1万5千円未満63.250.678.059.0
1万5千円以上2万円未満64.052.079.560.9
2万円以上2万5千円未満66.854.280.662.9
2万5千円以上3万円未満69.256.784.264.9
3万円以上5万円未満74.261.385.170.6
5万円以上79.763.888.976.2

※お茶の水女子大学「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する 調査研究」を基に『くらしのお金ニアエル』にて作成

一概には言えませんが、より多くの教育費を支出できる家庭ほど子どもの成績がよい傾向にあり、経済状況が子どもの学力に少なからぬ影響を及ぼしていることがわかります。

3.まとめ:教育費のかけすぎに注意!貯め時を逃さないことが大事

今回は、世帯年収と子どもの学力の関係についての調査データを紹介しました。
子どもにはじゅうぶんな教育を受けさせたいと思いながらも、先立つものを考えると、なかなか思い通りにいかないのがママたちの本音ではないでしょうか。

その場合は、将来を見据えて、子どもが小さいうちはしっかり貯蓄に回したうえで、子どもの成長に合わせて、ママも仕事を始めたり、働く時間を増やしたりして、世帯全体で年収を上げていく努力と工夫をしていきたいものです。

ただ、子どもの教育費にお金をかけすぎて貯蓄ができず、老後のお金を準備することができないという最悪な状況が生まれないよう家計のバランスを保つように注意してくださいね。

※この記事の情報は2020年1月時点のものです。

倉沢れい執筆:倉沢 れい (編集者・ライター)
大学卒業後、IT企業や翻訳会社を経て、出産を機にライターとしての活動を開始。子育てや女性の生き方の分野を中心に、ママがよりよく子育てを楽しむための情報をわかりやすくお伝えしています。

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