【体験談】地方在住ライターが語る!移住とお金のリアル

2022-04-06

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最近、「地方移住」という言葉を耳にしたことはありますか? 都会の喧騒を離れて、地方でのんびりと暮らそうという人が増えているようです。

今回は、実際に地方移住を果たしたライターが、その生活やお金の「リアル」を語ります。また、どんな人が移住に向いているのかについても紹介します。

1.増えている?地方移住とは

まず、地方移住の基礎知識をおさらいしましょう。移住のパターンや、近年の動きについて解説します。

1-1.「U・J・Iターン」とは?

一口に移住と言っても、「Uターン・Jターン・Iターン」の3つに大きく分けられます。Uターンは、自分の生まれ育ったふるさとを一度離れた人が、地元に戻ることJターンはそれに少し似ていて、ふるさとの近くにある地方都市に戻ってくることです。

Iターンは少し性格が違います。おもに都市で生まれ育った人が、ふるさとではない地方に移住することを指します。

1-2.年々増える、地方移住

こうした「U・J・Iターン」に興味を示し、実際に移住する人は、2010年代になって増加していると考えられます。

明治大学地域ガバナンス論研究室による毎日新聞、NHKとの共同調査よると、2014年度に地方に移住した人の数は1万1735人。5年前の2009年度に比べて、4倍以上に増えたそうです。

また、都市住民の地方移住を支援する「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」によると、2018年の1年間に同センターに移住の相談を寄せた人は41,518名。調査をはじめた2009年に比べて10倍以上となっています。

2.わたしの地方移住ストーリー

年々注目を浴びるようになってきた地方移住。私も、2015年にふるさとの山梨県富士吉田市へとUターンしました。どんなきっかけで移住を選んだのかをご紹介します。

2-1.過酷な日々が、Uターンのきっかけに

私は都内の大学を卒業後、転職を経て雑誌の編集部員として働いていました。月刊の雑誌を数人で編集する体制。やりがいが大きい一方で、入稿(締切日)の直前は深夜まで勤務し、土日も取材に赴くなど、体力もメンタルもいっぱいいっぱいでした。

30歳を目前にし、東京でずっと仕事を続ける自分が想像できなくなった私。いずれは帰ろうと思っていた故郷への思いが強くなり、Uターンを決意しました。

2-2.とにかく仕事!生活基盤を整えて移住へ

Uターンを決めたはいいものの、移住のためには仕事が必要です。記者や編集者として働いてきた私の経験を、そのまま活かせる仕事は地元にはありませんでした。そこで、それまでのキャリアを一旦リセットして、自分に合った仕事を探すことにしました。

選んだのは、サービス業でした。実家が商店だったこともあり、接客には抵抗がなかったためです。無事にホテルマンとしての職を得て、移住。28歳の春のことでした。後にフリーの編集者・ライターとして独立し、今も山梨に居住しています。

3. 移住者が語る「地方のお金事情」

地方移住にあたって気になるのは、やはりお金のこと。都内などと比べて生活コストが低いイメージですが、移住者の私が感じた金銭面でのメリット・デメリットを見ていきます。

3-1.【メリット1】リーズナブル!家賃と農作物

地方のメリットの一つは、家賃が安いことです。最も家賃が高い東京都の1か月当たりの家賃・間代を100%とした場合、私の住む山梨県は52%の水準。なお、最も家賃が安いのは鹿児島県で、47%となっています。
(総務省 平成30年住宅・土地統計調査を基に、『くらしのお金ニアエル』にて計算)

また、地場の農産物などが安く手に入るのもメリットです。夏なら、トマトやとうもろこし、桃やぶどうなど、新鮮な果物や野菜が安く売られています。知人や親戚などからの「おすそわけ」も日常的にあります。

 

3-2.【メリット2】少ない誘惑=節約にぴったり?

意外なメリットが、消費をする場所が少ない点。都内に住んでいたころよく訪れていた、大規模な本屋さんや雑貨屋さん、映画館やボウリング場などは、私の住んでいる地域にはありません。

不便ではあるのですが、なければないなりに生活できるもの。本当に必要なサービスなら、通販を利用したり、近隣の都市に出向いて購入すれば良いことです。この「誘惑」の少なさは、お金の節約という面ではメリットと言えます。

3-3.【デメリット1】やっぱり低い 給与水準

デメリットもあります。とりわけ給与水準は、都会よりもぐっと下がります。私の場合は100万円ほど年収がダウンしました。賃金の指標である都道府県別の最低賃金(2019年10月1日)も、東京が1,013円に対し、山梨は837円。なお、最も低いのは青森県、鹿児島県などの15県で、790円となっています。
(厚生労働省WEBサイト「地域別最低賃金の全国一覧」より)

一概には言えませんが、求められる業務レベルは都内で勤務していたころと比べると高くはありません。どちらかというと、地方のほうがのんびり働けるというのが率直な感想です。

3-4.【デメリット2】必須アイテム!車の負担

そして、地方暮らしに欠かせないのが車です。公共交通機関が発達していないため、大人1人に車1台が常識。どこへでも行けるメリットはありますが、お金の面では相当の負担となります。

車両の購入費はもちろんのこと、各種の税、保険料、オイル交換や車検などのメンテナンス費用、日々のガソリン代など、お金があっという間に消えていきます。そして、私が住んでいる街は標高800m超。真冬は氷点下10℃を下回ることもあり、冬用タイヤは必須です。自分の「足」を守るためのコストは、決して安くないのです。

3-5.【デメリット3】じわじわ効く!外食コストと燃料コスト

もう一つ感じているのは、外食の機会が多いこと。コミュニティの中のつながりが強固なこともあり、地域の人々とお酒を飲むこともしばしば。しかも、地方だからといって居酒屋のメニューが安いわけではないので、ジャブのようにお財布にダメージを与えます。

また、先述のように寒冷地であるため、冬の暖房コストもばかになりません。とにかく寒いので節約にも限界があり、毎月の灯油代や電気代はあえて計算しないようにしています。

4. 地方移住に向いている人とは?

ここでは、私の体験談を踏まえて、どんな人が地方移住に向いているのかについて考えてみます。

4-1.「ないものねだり」をしない人

地方は基本的に不便です。提供される商品やサービスも、高い品質であるとは限りませんし、そもそも手に入らない可能性もあります。都会のような便利さ、ハイクオリティな商品・サービスは期待できないと考えてください。

地方移住に向いているのは、そうした「ないこと」に対して寛容になり、楽しめる人だと思います。

4-2. 近くに頼れる人がいる人、良好な人間関係を築ける人

また、地方のコミュニティに溶け込めるかも重要です。人口が少ないエリアであればあるほど、「身内」と「よそ者」の意識が生まれやすく、孤立してしまう移住者も少なくないからです。

私の場合はUターンだったので全く問題はありませんでしたが、J・Iターンの場合にはここに留意すべきです。人より優れたコミュニケーション力を持っていて、すぐに良好な人間関係を築ける人は別ですが、J・Iターンでは、知り合いや友人が1人でもいる地域を選ぶことをおすすめします。

5. まとめ:自分の好きな場所で身の丈に合った暮らしを

ここまで見てきたように、低い賃金や、車や燃料にかかるコストなど、地方移住はお金の面では決して「バラ色」とは言えません

一方で、豊かな自然や、ゆっくり流れる時間の中で過ごせるのは、地方住まいの魅力。便利さや合理性にこだわらず、コミュニティに溶け込める人には、ぜひおすすめしたいと思います。日々の暮らしを楽しめる、あなたにぴったりの場所を、じっくり探してみてくださいね。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親 (編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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