老後資金はいくら必要?どう貯める?老後のお金「6つの対策」

  • 公開日:2019年11月08日
    最終更新日:2023年07月24日
  • 貯蓄・投資

2023-07-24

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「老後資金は公的年金以外に約2,000万円が必要」とした金融審議会の報告書により、世間では老後に対する不安が一気に高まっています。目の前の生活に精一杯で、老後については漠然と「年金がもらえるから何とかなるだろう」と考えていた人は、いったいどうしたらいいのか悩んでいるのではないでしょうか。

そこで、ここからは老後のお金の実態と、年金を受給する年齢になる前・なった後のお金の対策について、わかりやすく紐解いていきます。

1. 老後の資金、最新のデータでは年金以外に1,500万円必要

老後に、公的年金以外で2,000万円が必要(夫婦の場合)とする金融審議会の報告書は大きな議論と批判を巻き起こし、その後、事実上の撤回に追い込まれました。しかし、老後の生活は年金収入だけで賄えると考えて大丈夫なのでしょうか? 公表されている具体的なデータで見ていきましょう。

金融審議会の報告書は、総務省統計局の家計調査(2017年)を 基に作成されているようです。 高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1カ月間の「支出」は26万3717円に対して、「収入」は20万9198円。その差は5万4519円で、これが30年間では1962万6840円となるため、「約2,000万円が不足する」ということになっています。

これを見てもわかる通り、2,000万円というのは決して荒唐無稽な数字ではなく、ごく現実的なものです。

ただし、総務書統計局の最新の家計調査報告(2021年) では、金額に変化が生じています。この調査によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1カ月間の「支出」は26万94円となっています。その一方で、「収入」は23万7988円。つまり、支出と収入の差は2万2106円 となり、30年間では795万8160円が不足することになります。

コロナ禍での調査ではありますが、最新のデータを基にするのであれば「約800万円が必要」ということになります。それでも、年金だけでは賄えないという事実に変わりはありません。ただし、貯金や株式、生命保険といった金融資産がある場合には、必要額は少なくなります。それを加味しても必要額に達しない場合、何らかの対策を取らなければなりません。何もせずにいれば、老後破たんを迎えてしまう可能性もありえます。

2. 不足する老後資金への6つの対策とは?

老後への対策としては、年金を受給する年齢になる前となった後に分けて合計6つあげることができます。1つずつ確認していきましょう。

2-1. 年金受給前の現役のうちにすべきたい対策

老後に向かって資産を蓄えるという意味で、現役世代のうちに行っておくべき対策がとても重要です。

【対策1】ライフイベントとキャッシュフローを整理する

まずはこれからのライフイベントとキャッシュフローを整理しましょう。これは以後の対策を練っていくための基本情報の整理となります。

ライフイベントには、結婚、出産、進学、教育、退職のほか、家や車の購入(買い替え)、旅行なども含まれます。これらの大きなライフイベントと必要な金額、使う時期を書き出しましょう。これを加味しつつ、今後の収入と支出、貯蓄残高を1年ごとに区切り、ざっくりと計算してみてください。

65歳までのキャッシュフロー(お金の収支)がわかると、老後を迎える前に貯蓄がいくら残るかがわります。そこで2,000万円に足りないのであれば、何らかの手立てを講じる必要がありそうです。ただし、「2,000万円」はあくまで夫婦2人で用意する際の目安。例えばシングルの場合はもっと少なくて済むでしょうし、ゆとりをもって生活したい場合にはもっと多く準備する必要があります。老後にかかる1カ月の生活費も、自分のライフスタイルに合わせて予想を立ててみましょう。

【対策2】現役時代にできるだけ貯金を増やす

多くの人がすでに実践しているとは思いますが、やはり定年を迎える前までにできるだけお金を貯めておくことが大切です。確実に貯金するならば、王道の先取り貯蓄がおすすめ。先取り貯蓄とは、毎月の給料からあらかじめ貯金したい額を別の口座に移し、残ったお金で生活をする方法です。

勤め先に財形貯蓄制度があれば利用したり、銀行の自動積立定期預金を利用して、給与振込口座から指定金額を自動的に定期預金に振り替えるのもよいでしょう。貯金に回したお金は最初からなかったものとして、残ったお金の範囲内で家計を回すことを心がけてください。

【対策3】余裕資金を投資に回す

貯金が積み上がってきたら、その一部を投資に回すことも検討しましょう。というのは、現在は超低金利のため、メガバンクの定期預金でお金を預けても利息は年0.01%などごくわずか。一方で、投資信託で積立・運用(=投信積立)をした場合には、運用成績次第ではそれ以上の運用益を得ることが期待できます(反面損をすることもあります)。

例えば、2万円を30年間、(1)定期預金で積立 (年率0.01%)する場合と、(2)投信積立を年率3% (*)で行う場合とで比較してみましょう。
(*)安全性を考慮した長期積立による分散投資で年率3%を目標として設定

(1)の定期預金は、元本720万円に対して利息は1万円と少しです。

一方、(2)の投信積立は、元本720万円に対して、運用益は445万円超となります。

こう見ると、上手に投信積立を活用できた場合の効果がわかるのではないでしょうか。投信積立をする際には、「iDeCo」や「つみたてNISA」といった、国の優遇制度を活用するとよいでしょう。特にiDeCoは老後資金を準備するのに特化した制度で、他とは比較にならない程の税制優遇を受けることができます。

ただし、投資は運用次第で資産が目減りするリスクもあります。そのため貯金すべてを投資に回すのは厳禁。余裕資金で行うのが鉄則です。

もしも元本保証でないと不安だという場合には、メガバンクよりも金利の高いネットバンクを利用したり、iDeCoで運用する際の金融商品を投資信託ではなく、定期預金や保険といった元本保証型にする手もあります。

【対策4】退職金の使い道を慎重に考える

退職金や企業年金は、老後を支える大きな柱となるお金です。ただし、これらの制度の内容やそもそも制度があるかどうかは勤め先によって違います。自分はもらえるのか、もらえるとしたらいくらぐらいなのか、受け取り方は一括なのか、分割なのか、それとも組み合わせることができるのかなどを、定年を迎える前から確認しておきましょう。

人事部や総務部など、勤め先の担当者に聞くのが最も手っ取り早く正確ですが、まだ定年まで時間があるから聞きづらいといった場合には、社内規定の退職金規定や企業年金規約などをチェックしましょう。

まとまった額の退職金をもらうと、つい気持ちが大きくなり家のリフォームや海外旅行などに使ってしまう人がいます。しかし、このお金は老後のための貴重な資金です。どのように使うか受け取る前からしっかりと考えておき、闇雲に使うことのないようにしたいものです。

2-2. リタイア後の対策

定年退職でリタイアした後にするべき対策を紹介します。

【対策5】生活費のダウンサイジングをする

簡単なようでいて、意外とできないのが生活費のダウンサイジング、つまり生活にかかるコストを小さくすること。定年、継続雇用を終えて年金生活に入っても、現役時代の金銭感覚のままで過ごしてしまう人がいます。しかし、収入が減った分支出を抑えなければ、家計が切迫するのは当然です。家計を見直し、できるだけコストを削減していきましょう。

例えば食費や交際費です。現役時代は、外に働きに出ているためどうしても昼食代や飲み会などの費用がかかっていた、という人も多いでしょう。そういった費用がかからなくなるので、その分はコストを小さくできるはずです。

ちなみに、冒頭でも解説した2021年の家計調査報告によれば、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦の1カ月間の支出26万94円 のうち、食費は6万6118 円です。あくまでデータ上のことですので、実際にはこれより高い世帯、低い世帯がありますが、夫婦2人であればもっと減らせるというケースも多いのではないでしょうか。

また、子どもが独立して夫婦2人の生活になると、住んでいる家が広すぎて使い切れないなんていうこともあります。そういった場合は、夫婦2人で生活するのに十分な広さの家に住み替えることで、住宅にかかるコストの削減ができます

これ以外にも、老後を迎えて不要になった、もっとコストの低いものでも賄えそうだと思うものが出てきたら、見直しをするとよいでしょう。

【対策6】老後も働いて生活費を稼ぐ

「人生100年時代」と言われるように、60歳で定年退職、65歳で継続雇用を終えたとしても、そこから20年、30年生きるのがごく当たり前になっています。

健康であるにも関わらず65歳で仕事を辞めて、少ない年金収入と貯蓄で生活を切り詰めながら、先々に不安を感じながら暮らすよりも、少しでも働いて収入を得て、そのお金を自分のしたいことの足しにする方が生き生きとした老後を過ごせるはずです。

65歳を過ぎても第一線でバリバリ働く人もいますが、「せっかく定年(継続雇用を終了)して自由になったのに、そこまで働くのは……」という人もいるかもしれません。そういう人は、アルバイトで週3日など、自分のできる範囲で働くのもよいでしょう。 人材不足は深刻で、これからはシニアの求人もますます増えていくと考えられます。健康なうちはできるだけ働いて、収入を得ることを考えたいものです。

以上が、不足する老後資金に対する対策となる6つの例です。

2-3.自営業者の場合の対策

ここまでは主に会社員を想定してご紹介してきましたが、自営業者についても少し触れておきましょう。

自営業者には定年という概念がないので、長く働き続けることができるという、会社員にない強みがあります。その一方で、自営業者の場合は退職金もなければ厚生年金もありませんから、会社員以上に老後に備えておく必要があります

退職金の代わりになる「小規模企業共済」という制度を利用して積立をしたり、「国民年金基金」や前述の「iDeCo」を活用したり(会社員よりも利用枠が大きく優遇されている)、月々の年金保険料に400円をプラスすることで受け取る年金額が増える「付加年金」を利用するなど、事前に十分に備えておきましょう。

3.まとめ:早いうちから老後資金の準備を!

いわゆる「老後の2,000万円問題」は、私たちに「老後の生活資金は本当に年金だけで足りるのか?」という疑問を投げかけるきっかけになりました。そして家計調査の数字を見ても、年金だけでは足りないばかりか、大きなマイナスになってしまう可能性があることがわかっています。

何とかなるだろうと何も対策を講じなければ、厳しい老後を送ることになる可能性もあります。そうならないように、ここであげた6つの対策などを参考にしながら、できるだけ早くから老後のお金にしっかり向き合いましょう。

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※この記事の情報は2022年9月時点のものです。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。

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