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先進医療特約は必要?知っておきたい先進医療のポイント

  • 公開日:2019年10月30日
    最終更新日:2022年04月06日
  • 医療保険

2022-04-06

https://www.kurashino-okane.com/medical-insurance/advanced-medical-contract/

医療保険やがん保険を選ぶ時に、先進医療特約を付加するケースが多くなっていますが、先進医療特約は本当に必要なのでしょうか?

そもそも先進医療とは何か、普通の治療方法とはどう違うのか、そしてどのぐらいの費用がかかるのかなど、先進医療のイロハを知っておくともしもの時に便利です。 また先進医療特約は、保険商品によって保障内容が違っていることもありますので、選び方のコツも抑えておきましょう。

1. 先進医療とは?

先進医療特約について話す前に、まずは先進医療とは何かということをしっかり理解しましょう。

公的医療保険制度が適用されない治療の中には、高度な技術による治療方法があります。そのような高度な治療方法のうち、特定の大学病院などで研究・開発され実施されている高い医療技術で、将来的に保険導入が期待されている医療技術で、厚生労働大臣の承認を受けたものを先進医療といいます。

1-1. 先進医療の種類と、対象となる医療機関

先進医療はどこの病院でも受けられるわけではありません。医療技術ごとに、実施する医療機関(高度な技術を持つ医療スタッフと施設設備を持つ大学病院など)が特定されています
※令和4年2月1日現在、先進医療の対象となっている医療技術は81種類

同じ治療方法でも、承認を受けていない医療機関の場合は先進医療には該当しないということになりますので、この点に注意してください。

つまり、傷病の種類や治療方法によって、先進医療を受けられる医療機関は決まっていますので、希望する先進医療を受けるために、遠い地域まで行かなければならない場合もあります。

参考として、先進医療の重粒子線治療を現在行っている医療機関を掲載しておきます。

■先進医療の重粒子線治療を行っている医療機関

山形県山形大学医学部東日本重粒子センター
群馬県群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学研究センター
千葉県量子科学技術研究開発機構QST病院(旧放医研病院)
神奈川県神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設
大阪府大阪重粒子センター
兵庫県兵庫県立粒子線医療センター
佐賀県九州国際重粒子線がん治療センター

(出典)厚生労働省より(令和4年2月1日現在)

1-2. 先進医療にかかる費用は全額自己負担!

先進医療にかかる技術料は公的医療保険制度の対象とならないため全額自己負担となります。ただし、診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されますので、この部分については高額療養費制度の対象となります。この点が、自由診療とは異なる点です。

2.【事例でみる】先進医療を受けた場合の費用負担額

先進医療特約が必要かどうかの判断材料として、高額な費用がかかる先進医療を受けた場合にどれくらいの費用負担となるか事例をもとに計算してみましょう。

【事例】総医療費200万円(先進医療費100万円+保険適用治療費100万円)のケース
このケースについて、自己負担額がいくらになるかみていきましょう。

2-1.基本的な費用負担の考え方

総医療費200万円のうち

  1. 先進医療に係る費用100万円は、患者が全額負担
  2. 通常の治療と共通する保険給付分(診察、検査、投薬、注射、入院料等 )の100万円は、公的医療保険適用
    → 70歳未満の人は一部負担(自己負担)が3割なので、30万円を負担
      ※ただし、この部分は「高額療養費制度」が適用されるため自己負担額は更に減ります

となります。

以上により、130万円を負担することになります。

■先進医療にかかる費用と自己負担

(出典)厚生労働省より

2-2.高額療養費を利用した場合の自己負担額

上記、130万円の自己負担額のうち30万(保険適用の医療費100万円)については高額療養費が適用されます。

仮に、今回の事例の患者さんが一般的な年収の会社員であった場合(標準報酬月額28万~50万円の人)、自己負担分30万円(医療費100万円)の部分は、高額療養費制度適用後には8万7430円となります。
※一月分(1日から月末まで)の医療費の場合、以下の高額療養費の上限額の表参照

そのため、高額療養費制度を適用した自己負担分費用の合計は、以下の金額となります。

先進医療の技術料100万円 + 8万7,430円 = 108万7,430円

■高額療養費制度【70歳未満・ひと月(月の初めから終わりまで)の上限額】

適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円~約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000)×+1%
年収約370万円~約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者35,400円

注:1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1000円以上であることが必要です。)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

(出典)厚生労働省より

高額療養費のしくみやメリット、申請方法などは『「高額療養費」を最大限活用する完全ガイド|過剰な医療保険は不要!』をご覧ください。

3. 先進医療の費用はどのぐらいかかるの?

先進医療にかかる費用は、治療内容によって異なっていて、数万円程度のものから300万円以上など高額なものまであります。技術費用の一部を紹介しますので、先進医療特約の必要性を考えるにあたっての参考にしてください。

■先進医療の費用例(平成30年7月1日~令和元年6月30日)

技術名平均入院期間年間実施件数1件あたりの先進医療費用
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術11.4日147件302,852円
陽子線治療19.8日1,295件2,697,657円
重粒子線治療9.6日720件3,089,343円
歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法56件60,064円
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術1.1日33,868件678,496円
LDLアフェレシス療法25.5日6件99,408円
多項目迅速ウイルスPCR法によるウイルス感染症 の早期診断79.0日54件46,701円
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法2.5日821件107,660円
腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術9.8日187件872,597円

(出典)厚生労働省 中央社会保険医療協議会「平成元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」より

4. 先進医療特約の選び方6つのポイント

現在発売されている医療保険やがん保険の多くが先進医療特約を付けられる仕様になっています。あらかじめセットされているものから、特約をセットするかどうか選択できるタイプなどもあり、どの保険商品に先進医療特約をセットするか検討も必要です。そのためのポイントや注意点をまとめましたので参考にしてください。

【ポイント1】
先進医療特約の保険料はそれほど高額ではない場合が多いので、可能であればセットしておく方が無難です。

【ポイント2】
先進医療は特定の病院でしか受けられないため、いざというときに自分が遠くの病院まで出かけて治療を受けるのか?という点を考えることも必要です。

【ポイント3】
先進医療特約は、1被保険者につき1保険会社なら1つしか加入できません。そのため同じ保険会社で、医療保険とがん保険の両方に先進医療特約を付けることはできません。ただし保険会社が別々の場合は複数加入でき、給付金も両方から受け取れます。

【ポイント4】
先進医療特約は、がん保険よりも医療保険にセットすることをお勧めします。がん保険の先進医療特約は、がんの治療のみを対象としていることが多くなっていますが、先進医療は、がん治療だけとは限らないからです。

【ポイント5】
先進医療特約には保険会社や商品によって、更新型と終身型の2種類がありますが、終身タイプの方が安心です。

【ポイント6】
先進医療の給付金について、保険会社から医療機関への直接払いサービスがあるか、また、どの医療機関と提携しているかを確認しましょう。あとから給付金を受け取れるとしても、一時的にでも自分が立て替えて医療機関に支払うには高額となるケースもあり負担が大きいからです。

5.まとめ:先進医療特約はつけておいた方が無難

先進医療には高額な医療費を自己負担しなければならない治療があります。したがって、先進医療特約は保険料も安いため、医療保険に加入する際にはつけておいた方が無難です。ただし、何も考えずに付加するのではなく、上記「先進医療特約の選び方6つのポイント」の注意点などもしっかり理解して判断するようにしましょう。

※本記事は、2022年3月時点の情報をもとに作成しています。

森田 直子(保険ジャーナリスト|有限会社エヌワンエージェンシー代表)執筆:森田 直子 (保険ジャーナリスト|有限会社エヌワンエージェンシー代表)
保険・金融専門の執筆家で庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、経済紙記事、書籍「就業不能リスクとGLTD(共著)」ほか執筆実績多数。保険業界メールマガジンinswatch発行人。

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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。