検証してわかった!医療保険が不要な人・必要な人

  • 公開日:2016年03月10日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 医療保険

2022-04-15

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医療保険は不要だという話を聞くことがありますが、本当なのでしょうか?

もし本当に不要なら、わざわざ入りたくないですよね。しかし、その一方で入院をして医療保険があったから助かったと言っている人もいます。いったいどちらが正しいのでしょうか?

ここでは医療保険が不要というのはどういうことなのかを掘り下げ、実際にかかる医療費の額と医療保険の費用対効果の2つの面から、医療保険が不要か必要かを徹底的に検証します。この記事を読めば、あなたに医療保険が不要か必要かが自分で判断できるようになれます。

1. はじめに:世帯主なら8割以上が加入している医療保険

医療保険が必要か不要かを検証する前に、まずは、実際にどれくらいの人が医療保険に加入しているのか統計データをみてみましょう。

生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、2人以上世帯における世帯主の医療保険(特約含む)加入率は88.7%、配偶者の加入率は65.8%となっています。単身世帯ではこれより低い加入率になると思われますが、29歳以下の人たちでも世帯主89.2%、配偶者49.2%となっていることから、かなりの人が医療保険に加入している可能性があります。

この加入率の高さからすると、多くの人が医療保険を必要と考えているといえそうです。

詳しくは以下の表をご覧ください。

■医療保険・特約加入率(2人以上世帯、世帯主年齢別)

世帯主年齢加入率(%)
世帯主配偶者
全体88.765.8
29歳以下89.249.2
30~34歳92.366.0
35~39歳88.168.3
40~44歳89.970.0
45~49歳91.770.8
50~54歳94.067.7
55~59歳91.470.0
60~64歳87.468.3
65~69歳91.266.1
70~74歳85.563.3
75~79歳86.559.6
80~84歳73.549.3
85~89歳73.859.5
90歳以上25.016.7

生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」より

2. 医療保険が不要とはどういうこと?

前章でみてきたように既に多くの人が医療保険に加入していますが、医療保険が不要とはどういうことなのでしょうか?

一般的に医療保険が不要というときには、「医療保険に入っていなくても大丈夫(医療費は払える)」という意味と「医療保険は割に合わない(損をする)」という意味の2つがあると考えられます。

あなたにとって医療保険が必要か不要かを考えるときには、この2つのことを分けて考えるようにしないと、混乱して正しい判断をすることが難しくなります。それぞれについて自分にとってどうかを判断するようにしましょう。まずいちばん重要なののは、医療保険がなくても医療費は払えるか?ということではないでしょうか?

3.[不要検証1]医療保険がなくても医療費は払えるのか?

医療保険が必要か不要かの判断として、まずは、医療保険に入っていなくても医療費は払えるものなのか?ということを検証していきます。そのためには、入院や手術をしたときに医療費の自己負担がどれくらいかということを知らなければなりません。

3-1. 医療費の自己負担は3割

私たちは国民皆保険で健康保険(公的な医療保険)に加入しています。そのため病院にかかったときや処方せんを受けて保険薬局で薬の調剤をしてもらったときの支払いは、保険証を提示することで一部を自己負担するだけですむようになっています。

このように、原則、3割の自己負担ですむようになっているので、たとえば10万円かかるような治療を受けた場合でも、実際に支払う額は3万円ですむようになっています。

■医療費の一部負担の割合

年齢自己負担割合
小学校入学前2割
小学校入学以後70歳未満3割
70歳以上75歳未満(※1)2割
(現役並み所得者は3割)
75歳以上1割
(現役並み所得者は3割)
(一定以上の所得がある人は2割※2)

※平成26年3月31日以前に70歳に到達した人は1割
※令和4年10月1日以降

3-2. 一月あたりの自己負担額は原則8万円ちょっとでよい

健康保険があって医療費の自己負担は3割になっていますが、それでも、大きな病気やけがの場合は何十万円もの医療費がかかってしまうのではないでしょうか?

 

安心してください・・・、上限があります。

 

公的な医療保険には高額療養費という制度があって、1ヵ月あたりの自己負担額に上限が設定されているのです。つまり、どんな病気に医療費がいくらかかるということを細かくみていかなくても、この高額療養費制度をみると、原則いくらまで負担することになるかがわかるようになっています。

3-2-1. 高額療養費による1ヵ月あたりの限度額は?

高額療養費制度を使うと、会社員であればたいていの人は、1ヵ月あたりの医療費は8万円強ですむようになっています。ただし、高額療養費は月ごとに計算しますので、一つの入院でも月をまたいだ場合は、十数万円くらいになる可能性があります。

また所得が高めの人の場合は1ヵ月の自己負担限度額は17万円程度となり、高額所得者は25万円強となります。

ところが、これらは1ヵ月の限度額なので、もし長期の入院ということになればこの額が何ヵ月か続くことになります。ただし、高額療養費の給付を1年間に3回(三月)以上受けている場合は、4回目以降は多数該当となり一般の所得区分であれば44,400円が上限となります。
(高額療養費による限度額については、以下に区分表を掲載しますので、興味のある方は後でゆっくりご覧ください。)

■高額療養費の区分(70歳未満)

 所得区分 自己負担限度額多数該当
健保:標準報酬月額83万円以上
国保:年間所得901万円超
(年収の目安 約1,160万円~)
 252,600円+
(総医療費-842,000円)×1%
 140,100円
健保:標準報酬月額53万~79万円
国保:年間所得600万~901万円
(年収の目安 約770万~1,160万円)
 167,400円+
(総医療費-558,000円)×1%
 93,000円
健保:標準報酬月額28万~50万円
国保:年間所得210万~600万円
(年収の目安 約370万~770万円)
80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
44,400円
健保:標準報酬月額26万円以下
国保:年間所得210万円以下
(年収の目安 約210万円以下)
 57,600円 44,400円
住民税の非課税者等 35,400円 24,600円

※年間所得とは基礎控除後の所得です。
※多数該当は直近1年間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合の4回目から

(出典)厚生労働省WEBサイトより

3-2-2. 入院日数の平均は29.3日

それでは、このように長期入院することになる可能性について統計データをみてみましょう。厚生労働省の平成29年患者調査によると、一般的な入院期間は平均入院日数が29.3日となっています。三月にまたがるような入院は多くはなさそうだということがわかります。

■傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数(平成29年9月)

主な傷病平均在院日数
(単位:日)
傷病全体29.3
結核54.1
ウイルス肝炎21.2
胃の悪性新生物19.2
結腸及び直腸の悪性新生物15.7
肝及び肝内胆管の悪性新生物16.9
気管,気管支及び肺の悪性新生物16.3
乳房の悪性新生物11.5
糖尿病33.3
高血圧性疾患33.7
心疾患(高血圧性のものを除く)19.3
脳血管疾患78.2
肺炎27.3
肝疾患22.9
慢性腎臓病47.9
骨折37.2

(出典)厚生労働省 平成29年患者調査より

3-2-3. 高額療養費についての注意点

この節では高額療養費で医療費が限定されることを説明してきました。その限度額までのお金が支払えるなら医療保険は不要そうです。しかし、この制度にも注意点があります。高額療養費の対象となるのはあくまでも健康保険が適用される医療費です。健康保険のきかない差額ベッド代や先進医療の技術料などは別途全額自己負担となりますので、十分にご注意ください。

3-3. 医療保険がなくても医療費は払えるか?

ここまで、健康保険の自己負担額という視点で医療費がどれくらいかかるかを見てきましたが、ではその金額が払えるかどうかを考えてみましょう。

たとえば、一般的な所得の会社員が手術をして10~20日間くらい入院したとします。このとき、入院が一月内におさまっていれば高額療養費で自己負担額は8万円強、入院が月をまたぐとしても自己負担額は16万円程度にはおさまります。

さて、この金額は医療保険に入っていなくても払える金額でしょうか?
払えるならば、医療保険は不要ということになります。

同じ収入であっても人それぞれ生活スタイルや貯蓄額は違います。ある程度預金があって急遽16万円くらいの支払いがあっても、生活に困ったり将来の人生設計にあまり影響がない人であれば払えるといえるでしょう。そうでない人はちょっと困るかもしれません。

また、入院したときに大部屋が嫌で個室や少人数の部屋を使う場合は差額ベッド代がかかります。厚生労働省 令和3年9月「第488回 中央社会保険医療協議会 総会・主な選定療養費に係る報告状況」よると、1日あたりの差額ベッド代の平均は6,527円となっています。10日間の入院であれば約6.5万円、20日間の入院であれば約13万円は自己負担額が増えることになります。
少人数部屋を希望する人は、高額療養費の自己負担限度額に加えてこの金額も払えるかどうかで判断が必要となります。

■平均的な1日あたりの差額ベッド代(推計) ※平成2年7月1日現在

部屋の種類料金
平均6,527円
1人部屋8,221円
2人部屋3,122円
3人部屋2,851円
4人部屋2,641円

厚生労働省 令和3年9月「中央社会保険医療協議会 総会(第488回) 議事次第」より

さらにいうと、確率は低いですが、数ヵ月以上の入院ということもあるかもしれません、その場合はもっとかかりますが、そういうことまで想定するかどうかによっても払える払えないの判断は変わってくるでしょう。

3-4. 医療費の支払い能力からみた医療保険が不要な人、必要な人

ここまで「医療保険がなくても医療費は払えるのか?」ということを検証してきました。ここからわかる医療保険が不要な人、必要な人とはどのような人でしょうか?

3-4-1. 医療保険が不要な人

医療保険が不要(入らなくてよさそう)な人は、以下のような人になります。

  • 貯蓄が十分にある人
    所得水準にもよりますが急に10~20万円くらいの医療費が必要になったとしても困らない。そういうことが生涯で数回あっても大丈夫そうだという人には医療保険はなくてもよさそうです。
    ただし、入院で個室希望の場合は、さらに多くの資金が必要なのでそれを支払える人となります。

    さらにここで一点つけ加えておくと、確率は低くても難病になってしまたったり、何度も入院するようなことになってしまったりする可能性は誰にでもあります。そういうときのことを割り切って考えられる人ということも、医療保険が不要な人の条件となります。

  • 資産家
    資産がたくさんあり、現金資産だけでも何千万円、何億円とある人。先進医療で300万円くらいかかる重粒子線治療を受けても、健康保険外の自由診療を受けても、寝たきりになったとしてもぜんぜん困らないくらいのお金がある人。

3-4-2. 医療保険が必要な人

医療保険が必要(入ったほうがよさそう)な人は、以下のような人になります。

  • 急な医療費などがあると日常生活に影響がある人
    急に10~20万円の出費があると普段どおりの生活を送るのに支障がでて困ることになりそうな人は、医療保険があったほうがよいでしょう。
  • 手厚い医療を受けたい人
    入院したら個室に入りたい、状況によっては保険外の薬や診療もためしたい、先進医療も受けたいといった人は、医療保険で備えたほうがよいでしょう。
  • 重い病気やけがになったときのことが不安な人
    ちょっとした手術や入院はともかく、重病にかかったり、人生で何度も手術や入院をすることになったときのことが不安な人は、医療保険に入っておいたほうがよいでしょう。

4.[不要検証2]医療保険は割に合う商品なのか?

それでは次に、医療保険が不要というもう一つの意味「医療保険が割に合う商品か? 意義がある商品か?」ということをみていきましょう。そのために、保険料をどれだけ支払い、給付金をどれだけもらえそうかということについて考えてみます。

4-1. 生涯に払う医療保険料はどれくらい?

たとえば、Mさん(30歳男性)が入院日額1万円の標準的な医療保険に加入した場合の保険料を見てみましょう。

<契約内容>

  • A社 終身医療保険
  • 被保険者:Mさん(30歳・男性)
  • 保険期間:終身
  • 保障内容:入院日額1万円(60日型)、手術給付金5・10・40倍
  • 保険料:終身払い 月額3,390円/60歳払い済み 月額4,850円
    ※2016年1月29日試算

この場合の総支払保険料は、終身払いで80歳まで生きたとすると2,034,000円、60歳払い済みなら合計1,746,000円となります。

4-2. 医療保険の給付金はどれくらいもらえそうか?

さきほどのMさんが手術(重大ではない)をして20日間入院したとしましょう。この場合に医療保険から給付される金額は、手術給付金10万円、入院給付金20万円で合計30万円になります。

Mさんがもし重大な手術を受けることがあれば、手術給付金は40万円受け取れます。また、60日間入院するようなことがあれば入院給付金を60万円受け取れます。

4-3. 医療保険は得なのか損なのか

それでは、支払った保険料の額ともらえる給付金の額を比べて、医療保険が得なのか損なのかを考えてみましょう。もし損なら、医療保険は不要ということになります。

Mさんの場合、保険料の総支払額は60歳払い済みの場合で約170万円でした。元を取るためには、前項のような手術を伴う20日間程度の入院を生涯で6回しなければなりません。

どうでしょうか? あなたの家族や親戚、知人のなかでご高齢の方が、これまでにどれくらい入院した経験を持っているでしょうか?

もちろん、人によって違います。難病にかかって、入退院を繰り返している人もいるでしょう。でも、比率としては非常に少ないのではないでしょうか?

加入者一人ひとりでみたら、支払った保険料以上の給付金を受けられる人はとても少ないはずです。

このことは、実は計算するまでもありません。たとえはよくないかもしれませんが、宝くじで高額当選する人はごく一部で、ほとんどの人が損をしているのと同じ理屈だからです。そうでなければ、保険会社が利益を出せませんし、そもそも保険が成り立たなくなってしまいます。

つまり、医療保険が得か損かという視点で見ると、大部分の人は損をします

ただし、保険とはそういうものです。多くの人が協力し合って、重い病気にかかったり、何度も病気やけがをしてしまったりして困っている一部の人を助けるのが医療保険なのです。医療保険に加入したあなたが、助けるほうになるのか助けてもらうほうになるのかは、誰にもわかりません。

4-4. 損得からみた医療保険が不要な人

このように医療保険を損得勘定で考えた場合に、医療保険が不要な人は以下のような人になります。

  • 損をしたくない人、経済合理性を重視したい人
    医療保険は、多くの場合損をすることになります。損をするのが嫌な人や経済合理性を重視する人には医療保険は不要といえます。
    ただし確率は低くても、難病になってしまったり、何度も入院するようなことになってしまったりする可能性は誰にでもあり、そういうときのことを割り切って考えられる人でなければなりません。
    逆に、保険という仕組みで安心したいという人は医療保険が必要です。

5. まとめ:医療保険が不要な人もいるが、最終的にはあなたの家計の状況と価値観で決める

今回は、医療保険は本当に不要なのかを検証してきました。日本は健康保険制度(公的な医療保険制度)が充実しているため、医療費については自己負担額が限定されています。したがって、万一の場合に何千万円というお金を残すために加入する生命保険ほどには、医療保険の必要度は高いとはいえません。

しかし、私たちはいつ病気やけがをして入院することになるのかはわかりません。思いがけない出費があって困るということもあるでしょう。

そのような確率をどのようにとらえるかによって判断はわかれます。さらに人それぞれに家計や資産状況が違いますし、価値観・人生観も違っています。したがって、自分に医療保険が必要か不要かを判断できるのは、自分だけということになります。

医療保険に入るかどうかは、この記事で示した医療保険が不要な人、必要な人を参考にしてご自身でよく考えてみてください。

医療保険が不要な人

  • 貯蓄が十分にある人
  • 資産家
  • 損をしたくない人、経済合理性を重視したい人

医療保険が必要な人

  • 急な医療費などがあると日常生活に影響がある人
  • 手厚い医療を受けたい人
  • 重い病気やけがになったときのことが不安な人
  • 保険という仕組みで安心したい人

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