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入院費用の自己負担額を減らすための知識と3つの工夫

  • 公開日:2016年07月21日
    最終更新日:2022年03月30日
  • 医療保険

2022-03-30

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病気やけがで入院すると、比較的軽めの病気であっても入院費用は10~20万円くらいかかってきます。病気や入院期間によっては50万円以上になることもあります。

しかも入院費用は予期せぬ急な出費であることが多く、費用を負担するのが大変だったり、場合によっては入院費用の支払いに困ってしまうこともあるでしょう。お金に余裕のある人でなければ、普通は入院費用をできるだけ安くしたいと思うものです。

ここでは、そんな人たちのために、社会保険や税金の控除制度などを活用したり、不要な差額ベッド代を節約したりして入院費用の負担額を少なくする方法(3つの工夫)をわかりやすく紹介します。入院費用に関する必要な情報のすべてを整理していますので、入院費用を抑えるためにお役立てください。

※2020年5月7日 更新日時点の最新の入院費用データに更新

1. 入院費用の自己負担額の実態

まずは、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年度)」から入院費用の自己負担額がいくらなっているかをみてみましょう。

1-1. 入院時の自己負担額は平均20.8万円

入院費用の自己負担額の平均は20.8万円で、費用の分布をみると「10~20万円未満」が30.6%と最も多くなっています。

20万円未満ですむケースが63.9%、30万円未満ですむケースが77.2%となっています。

■入院時の自己負担費用

直近入院時の自己負担費用

※過去5年間に入院し、自己負担を支払った人をベースに集計
※高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含む
(出典)生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和元年度)」より

1-2. 1日あたりの自己負担額は平均2.3万円

入院費用の1日あたりの自己負担額は平均で2.3万円で、費用の分布をみると「10,000~15,000円未満」が24.2%と最も多くなっています。

■入院時の1日あたりの自己負担費用

入院時の1日あたりの自己負担費用

※過去5年間に入院し、自己負担を支払った人をベースに集計
※高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含む
(出典)生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和元年度)」より

1-3. 入院日数の平均は29.3日

入院費用がいくらになるかは、入院日数が何日になるかもかかわってきますので、入院日数についてのデータについても確認しておきましょう。

厚生労働省が行っている「平成29年患者調査」によると、傷病全体、全年齢の平均入院日数は29.3日となっています。入院日数は3年ごとの調査のたびに短くなってきています。
多くの病気が20日以内くらいの入院ですんでいますが、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患等では入院が長くなっています。特に長いのは、統合失調症や認知症、アルツハイマー病などです。

2. 入院費用の内訳と健康保険

ひと言で入院費用といっても、医療費以外に入院に関連して必要になる費用などを含めて、その費用にはさまざまな項目があります。そんな入院費用の内訳と健康保険の適用範囲について把握しておくことが、入院費用を節約するためには大切です。

病院に支払う入院費用としては、おもに以下のような費用があります。

2-1. 健康保険の定めによる医療費

健康保険で自己負担が3割になる医療費です。以下のような費用が該当します。

健康保険が適用されるおもな医療費

  • 初診料・再診料
  • 入院基本料
    診察料や看護料、室料、寝具代などが、1日につきいくらと算定される
  • 治療費
    投薬料、注射料、手術料、検査料、画像診断料、リハビリ料など

2-2. 食事の自己負担額

健康保険の入院時食事療養費により、自己負担額は1食460円となっています。
入院時食事療養費の詳細については、「入院中の食事代はいくら?一目でわかる食事代と今後の値上げ予定」をご参照ください。

2-3. 健康保険適用外の費用

差額ベッド代、入院中の病衣のレンタル料、診断書料などがあります。
また先進医療を受けたような場合は、健康保険適用外の料金として全額自己負担になります。

また、ここまでみてきた病院に支払う入院費用のほかに、関連費用として入院生活を送るにあたっての日用品の購入代金などもかかってくることになります。

3. 入院費用の負担を抑えるための3つの工夫

入院費用の負担が大きくなることを防ぐための工夫として以下の3つがあります。

(1)健康保険の高額療養費で医療費の自己負担額を抑える
(2)不要な差額ベッド代を支払わないようにする
(3)医療費控除を使って税金の還付を受ける

これらの3つの工夫について、それぞれ3-1~3-3で詳しくご案内していきます。

3-1. 高額療養費で医療費の自己負担額を抑える

健康保険には、1ヵ月に負担する医療費を限定するための高額療養費という制度があります。この制度を使うと、1ヵ月あたりの自己負担額の上限は、一般的な会社員であれば約8万円、所得が高めの会社員で約17万円となります。

ただし、高額療養費の対象となる入院費用は、健康保険が適用される3割負担の部分のみで、差額ベッド代や食事代、個人的に購入した日用品の代金などは対象とはなりません。

■70歳未満の1ヵ月の自己負担限度額

所得区分自己負担限度額
(計算式)(目安の金額)

※1

約1,160万円~ 252,600円+
(総医療費-842,000円)×1%
約25万円
約770万~1,160万円 167,400円+
(総医療費-558,000円)×1%
約17万円
約370万~770万円80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
約8万円
~約370万円57,600円
住民税の非課税者等35,400円

※1 所得区分をわかりやすくするために目安となる年収を示していますが、実際は年収によって区分が分かれているわけではありません。正確な所得区分は加入している健康保険の保険者にご確認ください。
(出典)厚生労働省WEBサイトより

なお高額療養費は、一部の健保組合等を除いて自分自身で申請をしなければなりません。申請先は、国民健康保険であればお住まいの地域の役所、会社員であれば、会社の健保担当者に申請することになります。

3-2. 不要な差額ベッド代は支払わない

差額ベッド代は、4人以下で入院環境を向上させた病室に入院したときにかかる費用です。その額は病院側で自由に設定でき、病室の収容人数や設備内容などによって違います。
厚生労働省 中央社会保険医療協議会によると、差額ベッド代は全国平均で1日あたり約6千円となっています。この費用を支払わずにすめば入院費用を抑えることができます。

■1日あたりの差額ベッド代(推計)

区分料金
1人部屋7,837円
2人部屋3,119円
3人部屋2,798円
4人部屋2,440円
全体平均6,188円

 ※平成29年7月1日現在
(出典)厚生労働省 中央社会保険医療協議会「平成30年11月 第401回総会 議事次第」より

3-2-1. 希望しない差額ベッド代は払わなくてよい

差額ベッド代が発生する要件は、患者が差額ベッド室の利用を希望し、病院から差額ベッド室の設備、構造、料金についての説明を受け、同意書にサインして差額ベッド室に入院した場合となります。

したがって、本人が希望していなければ差額ベッド代は支払う必要はありません。

3-2-2. 差額ベッド代の節約には意思表示が大切

差額ベッド代を支払わずにすましたい場合は、入院時に大部屋を希望するという意思表示をし、差額ベッド室利用の同意書にサインしないようにすることが大切です。

ただし、大部屋に空きがなくて、それでも今すぐにその病院に入院しなければならないというようなときは、病院によっては対応が難しいケースもあるようです。病院と冷静に話し合いながら、基本的に大部屋を希望すること、経済的に差額ベッド代の負担が厳しいことを伝えておくようにしましょう。

■差額ベッド代を払わないようにするために必要な知識は?
自分の意思に反して差額ベッド代を支払うことになるのを避けるために必要な知識をわかりやすくまとめています。
 ⇒ 不要な差額ベッド代を払いたくない人のための基礎知識

3-3. 医療費控除で税金を安くする

医療費控除は、入院費用自体を安くできるわけではありませんが、年間の医療費が多くかかったときに税金を安くすることができるので、間接的に入院費用の負担を減らすことにつながります。

3-3-1. 医療費控除とは

医療費控除は、一般的な家庭で、1年間の医療費の合計が10万円を超えた場合に、超えた金額をその年の所得から控除(上限200万円)して、税金を軽減することができる制度です。医療費控除の対象になる医療費には、入院中に付添を頼んだ場合の付添料や患者の病院までの交通費(電車やバスなど)を含めることができます。

なお、高額療養費や民間の医療保険の給付などを受けた場合は、その金額を負担した医療費から差し引いて計算しなければなりません。

3-3-2. 入院費用20万円で2万円税金が安くなるケースも

たとえば、高額療養費や医療保険の給付を差し引いて、入院費用を20万円負担している場合、医療費控除の効果はどれくらいあるのでしょうか?

その年は、そのほかの医療費はかかっていないとすると、医療費控除額は10万円ということになります。

所得税率は収入によって違いますが、平均的な所得の会社員であれば10%と想定され、その場合は10万円の医療費控除により所得税が1万円安くなります。また通常は住民税も同様に1万円ほど安くなり、合計で2万円税金が少なくなります
※この計算において復興特別所得税や自治体独自の税金等は考慮していません

3-3-3. 医療費控除の申請の仕方

医療費控除の申請は、基本的に確定申告によって行います。ただし、通常は確定申告をする必要のない一般の会社員等が医療費控除のみを行う場合は、還付申告という申告になり、確定申告の申告期間に限らず、医療費控除を申請したい年の翌年の1月1日から5年間申告ができます。

医療費控除についての詳細な説明は「医療費控除とは?|3分でわかる節税のしくみと申請までの手順」をご覧ください。

4. 入院費用が払えそうにないときにできる3つの対策

入院費用は、退院するときや月をまたいで入院しているときは翌月の月初などに病院に支払うことになります。このようなときに、すぐに用意できるお金が足りなくて入院費用が支払えそうにないときにどうしたらよいでしょうか?

基本的には、もしそうなってしまったら病院に事情を説明して相談するしかありませんが、そのような事態に備える対処方法を3つ紹介します。

4-1. 高額療養費の限度額適用認定証で支払を抑える

3-1.で紹介した高額療養費制度ですが、前もって入院することがわかっている場合は、事前に申請して「健康保険限度額適用認定証」を受けておくと、病院の窓口で支払う入院費用を自己負担限度額ですますことができます。(差額ベッド代などは別途支払が必要です)

入院費用を請求されてからだと間に合わないですが、このような制度があることを知っておいて事前に準備しておけば、一度に何十万円という費用を支払わなければならない事態を避けることができます。

4-2. 病院の医療ソーシャルワーカーに相談する

病院に医療ソーシャルワーカーがいる場合は、医療費の支払いについて相談するとよいでしょう。医療ソーシャルワーカーは社会福祉や保健医療について専門知識もありますし、直接病院の事務員に話すより、相談もしやすいのではないでしょうか?

4-3. 役所に相談する

一時的にお金が足りないなどではなく、失業や災害などで収入が減ってしまったとか、そもそも所得が低くて生活に困っているという場合は、各市区町村の役所に相談しましょう。
各自治体によって違いはありますが、治療費用の減免や生活資金の貸付、生活保護などの適用を受けられる場合があります。

5. 入院費用の支払いに備えるための医療保険

ここまで、入院費用の負担を抑えるためのさまざまな方法を説明してきましたが、高額療養費などを使っても自己負担額はそれなりに大きな金額になります。また完全に自己負担となる差額ベッド代や先進医療を受けたときの技術料などに備えたい場合は、医療保険への加入が有効です。

5-1. 医療保険の保障内容

医療保険は、入院したときの入院給付金や手術をしたときの手術給付金などの保障が中心となる保険です。おもな保障としては以下のようなものがあります。

■医療保険のおもな保障

給付金の種類保障内容
入院給付金入院したときに、入院日数に応じて支払われる給付金です。加入時に契約した1日につきいくらという金額をもとに支払われます。
手術給付金手術をしたときに支払われる給付金です。手術の種類により支払われる金額が決まっています。
通院給付金入院して退院した後に引き続き通院した場合に通院日数に応じて支払われる給付金です。最近は、入院前の通院も給付対象にした保険もあります。
先進医療給付金厚生労働大臣が定める先進医療を受けた場合に支払われる給付金です。先進医療にかかった技術料と同額を受け取れます。
三大疾病一時金がん・急性心筋梗塞・脳卒中の三大疾病で所定の状態になった場合に支払われる一時金です。
女性疾病入院給付金女性特有の病気などで入院したときに支払われる給付金です。女性保険といわれる医療保険や女性疾病特約などをつけた場合に付加される保障です。

5-2. 医療保険に入るときの注意点

医療保険に入るときには、以下の項目に注意して加入する必要があります。

5-2-1. 保険期間の選び方

医療保険の保険期間には定期タイプと終身タイプがあります。
病気やけがの可能性が高くなるのは高齢になってからなので、加入時の保険料が一定で一生涯の保障がある終身タイプがおすすめです。定期タイプは更新のたびに保険料が上がり、80歳を超えると更新できなくなる商品も多いので、特定の期間だけ保障が必要な場合に選ぶとよいでしょう。

5-2-2. 1入院あたりの入院給付金の限度日数

医療保険で1回の入院において入院給付金が支払われる限度日数として、一般的に30日型、60日型、120日型などがあります。
統計データでは入院日数は平均で31.9日となっています。この日数は平均ですので、当然それ以上の日数になることもあります。したがって30日型では保障が足りないケースも出てきます。多くのケースに備えられるようにするには、最低でも60日型を選ぶようにしましょう。

入院給付金の限度日数の考え方について詳しくは、「医療保険の入院日数は何日?統計データからみた保険の入り方」をご覧ください。

5-2-3. 入院と手術以外にどんな保障をつけるか

医療保険の基本となる入院保障・手術保障に加えて、通院保障、先進医療保障、三大疾病保障、女性疾病保障などを付加することができます。保障が多いほど安心感はありますが、保険料も高くなります。自分に必要な保障が何かをよく考えて選ぶようにしましょう。先進医療保障は保険料も安いためつけておいて損はありません。

6. まとめ:入院費用の負担は抑えられる

生命保険文化センターの調査によると、入院費用の自己負担額の平均は20.8万円となっています。

病気の種類によってはどうしても入院費用が高額になってしまうことはありますが、差額ベッド代などを節約したり、高額療養費を利用したりすることで入院費用の負担を抑えることが可能です。また医療費控除を利用することで、多くの医療費がかかった年の税金を安くすることもできます。

そのほか医療保険による備えも組み合わせれば、さらに実質的な入院費用の負担を減らしていけます。

もしも入院したときに、冷静にこのような対策をとれるようにするためには、社会保障や税金に関する知識を深め、万一の場合に向けて自助努力をしておくことが大切です。

※本記事は2020年5月時点の情報をもとに作成しています。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。