高額療養費|70歳以上の自己負担が拡大!(平成29~30年の見直し内容)

2021-11-24

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高額療養費制度の見直しがあり、平成29年8月から70歳以上の自己負担限度額が引き上げられました。しかも、この見直しは今回限りではなく、平成30年8月にさらにもう一段の引き上げが予定されています。

このような一連の限度額の引き上げについて、その内容をわかりやすくまとめました。ご自身やご家族が関係してくる方は、ぜひ参考にしてください。

1.高額療養費(70歳以上)見直し内容[平成29年8月]

健康保険の高額療養費制度により、1ヵ月に負担する医療費(自己負担額)には上限が設けられています。この上限は、70歳未満と70歳以上で区分されており、70歳以上の方が負担額が少なくなっています。

今回の高額療養費制度の見直しでは、この70歳以上の自己負担限度額が改定され、負担が拡大することになりました。

■70歳以上の1ヵ月の自己負担額の改定内容(平成29年8月)

所得区分自己負担限度額
平成29年7月まで平成29年8月から
外来(個人ごと)外来・入院(世帯合算)外来(個人ごと)外来・入院(世帯合算)
現役並み所得者
(年収の目安 約370万円~)
44,400円80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
57,600円80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
一般
(年収の目安 約156万~約370万円)
12,000円44,400円14,000円
※年間上限
14万4,000円
57,600円
 低所得者
(住民税非課税者)
下記以外  8,000円24,600円  8,000円24,600円
総所得金額0円の世帯
(年金収入のみ80万円以下など)
  8,000円15,000円  8,000円15,000円

(出典)厚生労働省WEBサイトより

具体的には、外来の自己負担限度額が、収入区分で一般の人は2,000円、現役並みの所得がある人は13,200円上がりました。なお、一般の人の外来の上限は、新しく年間の上限額が設定され、1年間トータルの上限は改定前と変わらないように配慮されているようです。

また一般の人は外来・入院を含めたトータルの自己負担限度額も13,200円上がっています

ちなみに、過去1年以内に3回以上高額療養費の対象となっている場合の多数該当の上限額(44,400円)は変更ありません。

高額療養費制度自体の詳しい内容について知りたい方は、『「高額療養費」を最大限活用する完全ガイド|過剰な医療保険は不要!』をご覧ください。

2.平成30年8月の改定では、さらに70歳以上の負担が増える!

70歳以上の高額療養費の見直しは、今年と来年の2段階で進みます。したがって、平成30年8月の改定では、上限がさらに引き上げられることになります。

■70歳以上の1ヵ月の自己負担額の改定内容(平成30年8月~)

所得区分自己負担限度額(平成30年8月~)
外来(個人ごと)外来・入院(世帯合算)
現役並み所得者年収の目安
約1,160万円~
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
年収の目安
約770万~1,160万円
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
年収の目安
約370万~770万円
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
一般
(年収の目安 約156万~約370万円)
18,000円
※年間上限
14万4,000円
57,600円
 低所得者
(住民税非課税者)
下記以外  8,000円24,600円
総所得金額0円の世帯
(年金収入のみ80万円以下など)
  8,000円15,000円

(出典)厚生労働省WEBサイトより

平成30年の8月の改定では、一般区分の外来の上限が18,000円と4,000円引き上げられます。平成29年7月までの上限からは6,000円アップで1.5倍になります。ただし、引き続き年間の上限があり、平成29年7月までの年間上限を維持する形となります。

そして、大きく変わるのが現役並みの所得がある人です。ここの区分は、外来用の上限がなくなり、70歳未満の高額療養費の自己負担限度額の計算と全く同じになります。正確にはどのような収入かによって違ってきますが、年収約770万円以上の人にとっては、高額療養費の自己負担限度額が9万円近く、年収約1,160万円以上の人は約17万円も上がることになります。

ちなみに多数該当の上限も70歳未満と同じになり、年収約770万~1,160万円の区分は93,000円に、年収約1,160万円以上の区分は140,100円になります

おそらく、高額療養費制度の今回の見直し(一連の改定)では、現役並みの所得のある人を現役世代と同じ上限にするというのが、一番の目的であろうと思われます。

3.高額療養費制度の見直し(70歳以上)理由

今回、70歳以上の高額療養費の自己負担限度額が引き上げられた(引き上げられる)のは、医療保険制度が財政的に苦しい状態であることが背景にあります。特に平均寿命が延び高齢化も進むなかで、高齢者の医療費が膨らんできています。

このような現状から、高齢者であっても十分な収入がある人については、現役の人同様に自己負担してもらってもいいのではないかという意見が以前よりありました。通常の医療費の3割負担の部分については、現役並み所得の人は既に3割になっていますが、高額療養費に関しても同様に、現役と合わせられることになったということです。

1,000万円くらい収入があるなど、高収入の人については一定の負担をしていただくというのは、苦しい財政事情をかんがみると、理にかなった判断といえるかもしれません。ただし、所得区分が一般の人にとっては、自己負担限度額の引き上げは少し厳しいかもしれません

一方で、住民税非課税世帯については、この2年間の見直しでも負担の増加はありません。低所得者層は、これまで通り守られるということです。

4.まとめ:高額療養費制度の見直しで、収入が多い人は現役扱いに

平成29年8月、平成30年8月と2年にわたり、高額療養費の70歳以上の自己負担限度額が引き上げられることになります。この見直しは、高齢者であっても現役並みに所得がある人は、現役世代と同じ負担をしてもらう、一般区分の人(年収156万円~370万円が目安)も少し負担を増やしてもらうという趣旨の改定です。

本当に所得が多い人は、負担が増えたとしても生活が苦しくなるという訳ではないかもしれません。しかし、所得が低めの人にとっては、その分生活にも影響が出てくる可能性があります。そして、このことは70歳以上の人だけの問題ではなく、いずれは必ず70歳以上になる現役世代の人にとっても影響のある話です。

例えば、定年後に大きな収入を得るような見込みがなく、年金暮らしになるだろうという人であれば、老後の医療費については何かあったときの備えを事前にしておくことが大切です。しっかり貯蓄しておくというのも良い対策ですし、若いうちに医療保険などに入り備えておくということも対策の一つとなります。

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