年末調整の保険料控除|計算方法や書き方をらくらくマスター

2022-04-15

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勤め先から年末調整の申告書類をもらって、いざ記入しようとたときに最も困るのが保険料控除の計算方法や書き方ではないでしょうか? 毎年のように記入していても、1年経つと忘れていたり、控除証明書の見方がわからなくなったりしています。

会社の総務や人事の担当者に問い合わせるのも面倒だし、「まあ、いいか?」などと申告せずにすませたくなるときもありますが、ちょっと待ってください。保険料控除は所得税や住民税が安くなる制度なので、しっかり申告するようにしましょう!

今回は、年末調整のなかでも書くのが面倒な保険料控除の部分について、制度の概要や計算方法、書き方をわかりやすくご案内します。ぜひ参考にしていただき、年末調整の申告書の作成をスムーズに進めてください。

※平成30年以降の新しい年末調整申告書の書き方に対応しています

※2020年5月29日 更新日時点の最新の申告書を使った説明に更新

1.年末調整の保険料控除の種類

年末調整の保険料控除というと、まずは生命保険料控除をイメージするのではないでしょうか。しかし、申告書には保険料控除に関する記入欄が下図のように複数あります。まずはそれらをざっと把握してしまいましょう。

給与所得者の保険料控除申告書 ※サンプル画像

給与所得者の保険料控除申告書

なお、保険料控除について補足すると、所得控除という制度の一つで、所得税を計算するときに、支払った保険料の金額に応じて一定額をその年の所得から差し引くことがでます。課税対象となる所得金額が少なくなるので、その分税金が安くなります。

1-1.生命保険料控除

生命保険料控除を簡単に言うと、民間の保険会社の生命保険や医療保険などに加入して保険料を支払っている場合に、所得税や住民税を割り引いてもらえる(課税所得を少なくしてくれる)制度です。年末調整の保険料控除のなかで、最も該当者が多いのではないでしょうか。

生命保険料控除には、加入している保険の種類により、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの区分があります。

■生命保険料控除の区分と該当する保険

区分該当する保険具体的な保険種類
一般生命保険料控除生存又は死亡に起因して一定額の保険金、その他給付金を支払う保障の保険料定期保険、収入保障保険、終身保険、養老保険、学資保険など
介護医療保険料控除入院・通院等にともなう給付部分に係る保険料医療保険、がん保険、介護保険など
※ただし平成23年以前に契約した保険は一般生命保険料控除になります
個人年金保険料控除個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等に係る保険料個人年金保険(税制適格)

生命保険料控除の所得控除額(所得から差し引いてもらえる金額)は、3つの区分ごとに計算します。そして年間の支払保険料の額をもとに、各区分それぞれ最高で40,000万円(住民税は28,000円)、3区分合計では最高で120,000円(住民税は70,000円)が控除されます。※平成24年以降の新制度の場合

なお、生命保険料控除は、家族の保険の保険料を支払っていれば、その保険料も控除できます

1-2.地震保険料控除

地震保険料控除は、地震保険に加入して保険料を支払っている場合に、年間の支払保険料を所得から差し引いてもらえる制度です。年末調整において、生命保険料控除の次に該当者が多いと思われます。

地震保険料控除は、年間の支払保険料が全額(上限50,000円)控除されます。したがって生命保険料控除のような面倒な計算は不要です。
※住民税の控除は、所得税の控除額の1/2となります。

1-3.社会保険料控除

社会保険料控除は、健康保険や年金などの保険料が控除される制度です。1年間に支払った保険料全額が所得から控除されます。

ただし、年末調整の申告書に記入しなければならない人は少ないはずです。なぜなら、通常、健康保険や年金保険の保険料は給料から天引きされており、個人が年末調整の申告書に記入しなくても、会社の方で手続きしてくれるからです。

この欄に記入する必要があるのは、天引きされている社会保険料以外に自分で負担した社会保険料がある場合、たとえば、会社を辞めて次の会社に入るまでの期間に自分で社会保険料を支払っている場合扶養家族の社会保険料を払ってあげている場合などが考えられます。

1-4.小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、中小企業等の役員が加入している小規模企業共済、個人型確定拠出年金、心身障害者の扶養者が加入している心身障害者扶養共済の掛金を支払っている場合に、1年間に支払った掛金全額が所得から控除されます。

ただし、社会保険料控除と同様に、給料から天引きされている場合は、年末調整の申告書への記入は必要ありません。一般の給与所得者で、この欄に記入するケースとしては、個人型確定拠出年金に加入していて、給与天引き以外で掛金を支払っているという人が最も多いと思われます。

2.生命保険料控除の計算方法と年末調整書類の書き方

年末調整の保険料控除のなかでも、控除額を計算したり書き方が最も大変なのが生命保険料控除です。

2-1.生命保険料控除の計算方法

生命保険料控除の計算は、該当する保険の種類による3つの区分ごとに行います。また各区分においては、保険に加入した時期によりさらに新制度と旧制度に分けて、控除額を計算します。

各区分の控除額は、以下の表にしたがって計算します。

■【新制度】所得税の生命保険料控除額(一般・介護医療・個人年金共通)

年間の支払保険料額控除金額
20,000円以下支払保険料の全額
20,000円超 40,000円以下(支払保険料等×1/2)+10,000円
40,000円超 80,000円以下(支払保険料等×1/4)+20,000円
80,000円超一律40,000円

※3区分合計の生命保険料控除の上限は120,000円

■【旧制度】所得税の生命保険料控除額(一般・介護医療・個人年金共通)

年間の支払保険料額控除金額
25,000円以下支払保険料の全額
25,000円超 50,000円以下(支払保険料等×1/2)+12,500円
50,000円超 100,000円以下(支払保険料等×1/4)+25,000円
100,000円超一律50,000円

※2区分合計の生命保険料控除の上限は100,000円

例えば、一般の生命保険料控除(新制度)に該当する保険の保険料を1年間(1~12月)に50,000円支払っている場合は

50,000円×1/4+20,000円=32,500円

が控除額(所得から差し引かれる額)になります。

介護医療保険料控除、個人年金保険料控除についても、新制度、旧制度ごとに上記表に基づいて計算します。

2-2.生命保険料控除の書き方

年末調整等で申告が必要な生命保険契約がある場合は、保険会社から事前に保険料控除証明書が送られてきます。その証明書には、該当する区分や新制度・旧制度の違い保険の種類や保険期間等の必要事項が記載されています。

したがって、年末調整の申告書を記入する場合には、保険料控除証明書の内容をしっかり確認して、該当する欄に必要事項を転記していけば間違いを防ぐことができます。

支払った保険料は、通常、控除証明書の中の「本年12月末時点の予定額」などと記載されている欄の保険料を転記します。

該当する保険についてすべての転記が終わったら、各区分ごとに新制度、旧制度別に保険料を合計し、2-1の計算方法で控除額を計算します。あとは、申告書類の各欄の指示通りに控除額を記入してくと、生命保険料控除全体の控除額を計算できるようになっています。

以下のような記入例を参照しながらの詳しい書き方は、「生命保険料控除の7つの疑問を解消してスラスラ計算する方法>4. 年末調整の生命保険料控除申告書の書き方」をご覧ください。

■生命保険料控除の記入例

生命保険料控除の記入例

3.地震保険料控除の書き方

地震保険料控除も生命保険料控除と同様に、保険会社から事前に地震保険料控除証明書が送られてきます。その証明書を見ながら、年末調整の申告書に転記していきます。

■地震保険料控除の書き方

地震保険料控除の書き方

<記入の手順>

  1. 保険会社の名称
    加入している保険会社名を記入します。
  2. 保険等の種類
    地震保険と記入します。
  3. 保険期間
    地震保険の契約年数を記入します。
  4. 保険等の契約者の氏名
    地震保険の契約者名を記入します。
  5. 保険対象の建物の居住者または家財の利用者|続柄
    地震保険のかかった家の居住者(通常は本人)の氏名を記入します。
  6. 地震保険料又は旧長期損害保険料の区分
    地震保険に○をつけます。(旧長期損害保険料控除を受ける場合は旧長期に○)
  7. 本年中に支払った金額
    控除証明書に記載の控除対象保険料を記入します。

地震保険料控除は、複数の保険に入っているような場合を除き、通常は計算の必要がありませんので、生命保険料控除よりも簡単に記入ができるはずです。
※旧長期損害保険料控除に該当する保険がある場合は計算が必要です。

4.社会保険料控除の書き方

社会保険料控除は、該当する社会保険について、保険の種類、保険料の支払先、保険料を負担する人(本来負担すべき人)の氏名・続柄、支払った保険料の金額を記入します。

なお、国民年金や国民年金基金の掛金以外の社会保険料については、年末調整に証明書類の添付が必要です。

5.小規模企業共済等控除の書き方

小規模企業共済等控除は、年末調整の申告書の記入欄の種類には、はあらかじめ該当する共済や確定拠出年金が記載されていますので、該当する場合は金額を記入するだけです。

6.まとめ:書き方は、年末調整申告書の説明通り!

年末調整の申告書は1枚に多くの記入欄や説明文が詰め込まれています。記入欄は小さく、説明の文字も小さいため、説明を読む気がしないというのが正直な感想ではないでしょうか?

しかし、そこを我慢して書類を見れば、基本的な書き方はわかるようになっています。生命保険料の計算方法だけは、かなり複雑で苦労すると思いますが、今回の記事でも補足説明をしていますので、年末調整の申告書類作成にぜひお役立てください。

保険料控除は、税金を安く出来る制度なので漏れなく申告するようにしましょう!

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。