年金はいくらもらえる?受給額の計算方法をプロが解説!

2022-04-06

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老後の生活を支える柱と言えば、なんといっても公的年金ですが、公的年金は制度がとても複雑で、実際「どれくらいもらえるのか」がとてもつかみづらいとの声をよく聞きます。

ここでは老後の公的年金の簡単な計算方法をみていきたいと思います。

1.日本の公的年金は2階建て

日本の公的年金は現在、2種類の制度があります。国民年金厚生年金です。国民年金は原則として20歳から60歳になるまでの全国民が加入し、厚生年金には会社員や公務員等お勤めの方が加入することになっています。この時、厚生年金に加入している人も国民年金に同時加入扱いとなります。

将来一定の年齢になると、国民年金の納付記録から計算した「老齢基礎年金」がもらえ、厚生年金に加入したことがある人は、老齢基礎年金に上乗せして厚生年金の加入記録から計算した「老齢厚生年金」がもらえる、という仕組みになっています。

よく「日本の年金は2階建て」と言われますが、老齢基礎年金は誰もがもらえることから家の1階部分に、厚生年金に加入したことがある人だけがもらえる老齢厚生年金を2階部分に、というように、年金を家に例えているということですね。

年金の仕組みは複雑でわかりにくいものですが、ひとまず真っ先に知りたいところが「いくらくらいもらえるのか」ということでしょう。ここから、老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれの金額がどのくらいになるのかをざっくりとみていきたいと思います。

2.年金の本体部分を計算してみよう

まず、年金の本体部分を計算してみましょう。
本体部分は1階部分である「老齢基礎年金」と2階部分である「老齢厚生年金」に分かれています。それぞれ計算し、その合計額が将来の年金の本体部分となります。

2-1.1階部分「老齢基礎年金」の計算方法は?

まず1階部分である「老齢基礎年金」の計算方法を説明します。老齢基礎年金は、原則として65歳から、原則10年以上、保険料を払い込んだ人は誰もがもらえることになっています。

2-1-1.老齢基礎年金の額は保険料の納付月数で決まる(満額は年78万円程度)

老齢基礎年金には最高額(よく「満額」といわれます)があります。国民年金の納付可能期間である原則として20歳から60歳になるまでの40年間、480ヵ月について、全部納付をすれば満額が得られ、納付していない期間があれば、その割合に応じて減額される、という仕組みをとっています。ちなみに、満額の老齢基礎年金は、年額約78万円となっています。

ざっくりいうと、国民年金保険料を1年間納付すると、老齢基礎年金は年額で約19,500円増える、ということになります。20歳から60歳になるまでの40年納めれば約78万円となります。

■老齢基礎年金の計算式

約78万円 × 納付月数 / 480月

ちなみに、ここで、「納付をした」と評価される期間は、以下のとおりです。

  • 国民年金保険料を納付した期間
  • 20歳から60歳になるまでの間で厚生年金に加入した期間
  • 20歳から60歳になるまでの間で厚生年金に加入している配偶者の扶養に入っていた期間

また、国民年金の保険料が納付できない事情がある場合は、保険料の全部または一部の支払いが免除されることがあります。この場合は免除を受けた月数に定められた換算割合をかけ、納付月数にプラスすることになっています。

2-1-2. お得なプラスアルファ年金「付加年金」

自営業者等(第1号被保険者)は、国民年金保険料を納付するときに、申し出をして本体の保険料に1回あたり400円をプラスして納付する(「付加保険料」)ことができます。そうすると1回納付するごとに年額200円の「付加年金」というプラスアルファが老齢基礎年金に上乗せされます

1年間付加保険料を納付すると、4,800円(400円×12ヵ月)の負担で、将来年額2,400円の付加年金を受けられることになり、金額は多くありませんが、2年もらえば元が取れるという、とてもお得な年金です。

2-2.2階部分「老齢厚生年金」計算方法は?

続いて2階部分である「老齢厚生年金」の計算方法をみていきましょう。
老齢厚生年金は、原則として10年以上年金保険料を支払い、老齢基礎年金を受ける権利がある人であれば、厚生年金の加入自体は1ヶ月でも、その分に応じて受けることができます

年金の受取開始年齢は、現在のところ65歳より前(後述「特別支給の老齢厚生年金」)ですが、段階的に65歳まで引き上げられています。現役世代の方は65歳と思っておけば間違いはないと思います。

2-2-1.老齢厚生年金の額は平均のお給料と加入月数で決まる

本体部分の計算は、度重なる制度改正によってとても複雑になっています。ここでは、複雑な計算式は置いておいてざっくりとした金額を見てみます。

本体部分の年金額は厚生年金加入1年につき、年額約10,000円から50,000円の間になります。10年加入した場合は年額10万円から50万円の間、40年加入なら年額40万円から200万円の間となりますね。

このように金額に幅ができるのは、本体部分の計算には、加入した月数のほか、平均の給与額という考え方が入っているからです。このため、本体部分を「報酬比例部分」と呼びます。

一般的には、10年未満といった短期間で退職した場合は昇給がそれほどなかったと思われますので平均の給与額が低く、30年以上といった長期間にわたり勤務した場合は給与が上がっているので平均も高くなります。その結果、勤務期間が短い人の年金額の方が低くなり、勤務期間が長い人の方が年金額が高くなる傾向はありますが、実際の給与額がどうだったかによって人それぞれ全く異なった年金額となります。

■老齢厚生年金の原則的な計算式

A=平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの加入月数
B=平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の加入月数

A+B=老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額

上の計算式で「平均標準報酬月額」や「平均標準報酬額」というのが、ざっくり言って加入期間中の給与の平均です。平均標準報酬額の方にはボーナスも含まれます。実際にはこの計算のほか、生年月日に応じた例外があったり、過去の給与額を現在の物価に引き直したりするので、とても複雑な計算をしなければならないことがお分かりいただけるかと思います。

2-2-2.帳尻合わせの経過的加算

老齢厚生年金には「経過的加算」という加算部分が付きます。これは以前の制度改正によって年金額が減ってしまうことを防止する、いわば「帳尻合わせ」のような年金ですが、その性質上それほど多額にはなりません。

3.年金には加算部分がある

ここまで本体部分の計算を見てきましたが、年金に加算を受けられる場合があります。

3-1.加給年金

一定の条件を満たした配偶者や子を扶養している場合、老齢厚生年金に加算を受けることができます。一般的には配偶者については扶養する側が65歳になってから扶養される側が65歳になるまでの間、年額約39万円の加算が受けられます。子については扶養する側が65歳時点で原則18歳の年度末に達していないことが条件なので、受けられるケースは多くありません(扶養される側が年上の場合は加給年金の給付はありません)。

3-2.振替加算

配偶者の加給年金が終了した後、一定の条件を満たせば加給年金打ち切り後に扶養されている側の年金に少額の加算が受けられます

3-3.特別支給の老齢厚生年金

一定の生年月日以前に生まれた人が厚生年金に1年以上加入している場合、65歳前から老齢厚生年金が受けられます。さらに44年以上厚生年金に加入し退職するなどの一定の条件を満たせば、65歳まで「定額部分」を受けることもできます。

4.計算された年金額は増減することがある

これまで年金の計算方法を見てきましたが、計算された年金がそのままの金額で受け取れるとは限りません。ほかに収入があったり、年金の受給開始時期を早めたり遅らせたりすれば年金額は変わってきます。

具体的には以下のような事情がある場合です。

  • 給与収入がある場合など…収入の種類や額に応じて減額がある場合がある
  • 繰上げ受給…早めて年金をもらうと減額される
  • 繰下げ受給…65歳以降に年金の受給を遅らせると増額される

また、年金には「物価スライド」という仕組みがあり、物価や現役世代の賃金の増減に合わせて毎年少しずつ変動します。一度決まった年金額は一生涯そのまま、というわけではありません。

5.具体的に年金額を計算してみよう

上で説明したことを踏まえ、具体例で計算してみましょう。

【例1】Aさん(男性)23歳から60歳まで一般企業に勤務した場合

老齢基礎年金…約19,500円 × 37年 = 約72万円
老齢厚生年金…約30,000円 × 37年 = 約111万円
合計…年額約183万円(月額約15万円)
※長期間勤務なので、厚生年金加入1年あたり3万円程度が見込めると想定しました

【例2】Bさん(女性)23歳から7年間一般企業に勤務し、その後会社員の夫の扶養に入って60歳を迎えた場合

老齢基礎年金…約19,500円 × 37年 = 約72万円
老齢厚生年金…約10,000円~約20,000円 × 7年 = 約7万~約14万円
合計…年額約79万~約86万円(月額約6万~約7万円)
※短期間の勤務なので、厚生年金加入1年あたり1万~2万円程度の想定としました

なお、二つの場合とも老齢厚生年金の経過的加算は年額数百円程度です。

AさんとBさんが夫婦であった場合、夫婦ともが共に65歳になって以降は夫婦合計で年額約262万~269万円(月額約21万~22万円)を受け取れることになります。厚生労働省のモデル年金では月額約22万円が受け取れるとされていますが、これに近い数字になりますね。

このほか、加算部分としてAさんが65歳になってからBさんが65歳になるまでの間、加給年金が年額約39万円老齢厚生年金に加算され、Bさんが65歳になると加給年金が終了します。Bさんの生年月日によっては、Bさんの老齢基礎年金に振替加算が加算されることもありますね。

AさんとBさんが夫婦であった場合の年金額を図にすると以下のようになります。

6.まとめ:実際の年金額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認を!

年金の計算式は非常に複雑です。実際の年金額は人それぞれ全く異なるのが通常ですので、実際の年金額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認するのが必須と言えます。

公的年金の年金額が把握できれば、次のステップは老後の生活はそれだけで賄えるのかの検証、賄えないとしたならばいくら不足するのか、不足分をどうやって用意するのか、ということを考えていくことになります。

人生100年時代と言われ、公的年金だけで生活は成り立たないと叫ばれている昨今ですが、一方で公的年金が老後の収入の柱であることは変わりません。まずは公的年金の金額の把握から老後の準備の第一歩を始めてみましょう。

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執筆:綱川 揚佐 (社会保険労務士)
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