出産育児一時金の直接支払制度の利用法と使えない場合の対策

2021-11-24

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出産の準備を行うなかで、病院の選定や必要な物の用意とともに誰もが気になることの一つは、やはりお金です。

出産するときに病院に支払う費用は、通常の医療費とは違い、3割負担ではなく全額自己負担(異常分娩等を除く)となります。ただし、その代わりに出産一時金(正式には出産育児一時金)を受け取ることができるため、一般的な出産費用はこのお金でほぼまかなうことができます。その点は安心材料といえます。

とはいえ、それでも出産育児一時金を受け取るまでの間、自分で何十万円という出産費用を立て替えなければならないのは、正直ちょっとつらいのではないでしょうか? そんなときに、ぜひ活用していただきたいのは出産育児一時金の直接支払制度です。直接支払制度を使うと、病院の窓口で出産費用の精算をするときに、42万円までは自分で支払わなくてもよいのです。これは大きいと思いませんか?

この記事では出産育児一時金の直接支払制度の概要、申請方法をわかりやすく、かつスムーズに申請できるように説明いたします。ぜひお読みいただき、直接支払制度を積極的に利用してください。

1.出産育児一時金と直接支払制度

まずは出産育児一時金の概要や直接支払制度等、しくみの全体像を理解しましょう。

1-1.出産育児一時金とその支給額

出産育児一時金とは、健康保険の被保険者やその被扶養者が出産したときに42万円が支給される制度です。出産時に病院等に支払うことになる費用に3割負担が適用されない代わりに支給されるお金といえます。

出産育児一時金は、妊娠4ヵ月(85日)以上での出産が支給対象で、死産や流産なども含まれます。支給される金額は一児につき42万円ですが、産科医療補償制度対象外の医療機関で出産した場合は40.4万円となります。

出産育児一時金の支給額は、一般的に病院に支払う出産費用に近い金額となっているため、実質的には出産費用はあまり自己負担しなくてよいようになっています。

1-2.出産育児一時金の直接支払制度とは?

出産育児一時金であとから出産費用が補てんされるとしても、出産時に数十万円の支払いを立て替えるとなると、一時的とはいえとても大きな出費です。そこで、そのような負担をなくすための制度として、直接支払制度や受取代理制度があります。

1-2-1.直接支払制度

直接支払制度とは、医療機関等が本人(被保険者)に代わって加入している健康保険の保険者に出産育児一時金の申請を行うことで、出産育児一時金が保険者から医療機関に直接支払われる制度です。これにより、被保険者の病院窓口での出産費用の支払いが大幅に軽減されます。

病院等での実際の支払額が出産育児一時金の金額よりも大きい場合は、足りない金額(差額)を支払うことになり、出産育児一時金の金額より小さい場合は、後で残りの金額を健康保険の保険者に請求します。
なお、直接支払制度を利用できない医療機関もありますので、事前に直接支払制度が利用できるかを確認しておきましょう。

1-2-2.受取代理制度

受取代理制度とは、医療機関等を代理人と定めることで、出産育児一時金を医療機関等が代わりに受け取ることができる制度です。これにより、直接支払制度が導入されていない医療機関等で出産する場合でも、窓口での出産費用の支払い額を軽減することができます。

受取代理制度を利用できる医療機関は一部に限られており、さらに利用できるのは出産予定日まで2カ月以内の方と定められています。必ず利用できるかを医療機関等に確認してください。

1-3.加入する健康保険により直接支払制度は違うのか?

出産育児一時金は、どの健康保険に加入していても支給される額は変わりません。
※一部の健保組合等ではプラスの補助がつくところもありますが、出産育児一時金としての支給額は同じです

そして、協会けんぽ、各種健康保険組合、国民健康保険、共済組合など、加入する健康保険が違っていても、同じように直接支払制度はあります(受取代理制度もあります)。

2.直接支払制度等の申請方法

それでは、出産育児一時金の制度の直接支払制度等を利用するときの申請方法について説明します。

2-1.直接支払制度の申請

直接支払制度を利用するには、まずは医療機関等で利用可能かを確認し直接支払制度について説明を受けましょう。

<申請>
利用に際しては、退院までの間に医療機関等で保険証を提示して、出産育児一時金の支給申請および受け取りにかかる代理契約についての書面を取り交わすことになります。書面は1通を被保険者・被扶養者、もう1通を医療機関等が保管します。被保険者から健康保険への申請は不要です。

<精算>
退院時の費用精算では、費用が出産育児一時金を超えた場合のみ、超えた金額を支払います。また、出産費用が出産育児一時金よりも安かった場合は、病院から受け取る出産費用の明細書または領収書の写しを添えて、保険者に差額の請求を行います。

また、出産育児一時金に加え、健保組合等独自の出産補助金がある場合は、その申請が必要な場合がありますので、忘れないようにしましょう。

2-2.受取代理制度の申請

受取代理制度を利用するには、まずは医療機関等で利用可能かを確認します。

<申請>
利用に際しては、出産育児一時金の受取代理用申請書を入手します。医療機関に記名・押印してもらう箇所もありますので、そこも含めて必要事項を記入した上で、保険者に事前に申請します(出産予定日まで2ヵ月以内に申請、提出)。申請が受け付けられたら、保険者から受取代理申請受付通知書が医療機関に送付されます。

<精算>
退院時の費用精算では、費用が出産育児一時金を超えた場合のみ、超えた金額を支払います。また、出産費用が出産育児一時金よりも安かった場合は、保険者から差額が被保険者に支払われます。

2-3.直接支払制度等を利用しない場合の出産育児一時金の申請

直接支払制度や受取代理制度を利用しない場合は、出産後に出産育児一時金の申請をします。出産育児一時金の支給申請書を入手して記入し、必要書類(医療機関による直接支払制度を利用しなかったことの証明書、出産費用の領収・明細書の写し)と共に保険者に提出します。

3.直接支払制度・受取代理制度に対応していない病院で出産するときの対策

もし、出産予定の病院で直接支払制度や受取代理制度が利用できず、かつ出産費用を自分が立て替えることが困難な場合はどうすればよいでしょうか?

その場合には出産費貸付制度があり、出産育児一時金の8割相当額を限度に健康保険から借りる(無利子)ことができます。借りられる期間は出産育児一時金が支給されるまでの間です。

対象者は、出産育児一時金の支給が見込まれる人で、出産予定日まで1ヵ月以内または妊娠4ヵ月以上で医療機関等に一時的な支払いが必要な人です。出産予定日の1ヵ月前から出産日までに必要書類を提出します。

4.まとめ:出産育児一時金の直接支払制度を活用して出費を抑えよう!

このように出産育児一時金の直接支払制度、受取代理制度をうまく活用することで、約42万円分の立て替えが不要となり、経済的な不安要素はかなり薄くなります。また、直接支払制度を使えない病院であっても、出産貸付制度により、出費を抑えることも可能です。

こどもが生まれるということは、出産費用だけでなく、妊娠中の諸費用、出産後の育児に関する費用など何かと出費が多くなります。ぜひ出産育児一時金の直接支払制度を利用して、支払いのことを気にせず安心して出産に臨んでください。

敷田 憲司(Webマーケティングコンサルタント)執筆:敷田 憲司(Webマーケティングコンサルタント)
1975年福岡県北九州市生まれ。SEOやPPC広告運用、コンテンツ企画からライティングも行うサッカー大好きなコンサルタント。書籍も多数執筆。金融システムの開発や保険サイトに携わった経験から、保険や金融の有益な情報を届けします

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