介護保険の対象となる特定疾病16種類の一覧[第2号被保険者]

2022-04-06

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自分自身や配偶者、親が病気となってしまい、介護が必要となって、そのための介護サービスを利用する場合、あなたを助ける制度として公的な介護保険があります。

ただし、公的介護保険は誰でも利用できるわけではなく、40歳以上の加入者でなければなりません。しかも、40~64歳の第2号被保険者の場合は、特定疾病と呼ばれる16種類の病気が原因の場合しか保障されないのです。

したがって、第2号被保険者の場合は特に、特定疾病のことを知っておかないと介護保険を受けられると思っていたらダメだったという勘違いをしてしまうことになりかねません。

この記事では、介護保険の被保険者の違いを説明するのはもちろん、介護保険の対象となる特定疾病についても紹介しますので、ぜひ読んで確認してみてください。

1.介護保険の特定疾病とは?

介護保険とは、介護が必要になった高齢者が現在住んでいる市区町村が運営し、介護を行っている家族の方々の金銭面の不安や負担が軽減されるよう社会全体で支え合う保険制度のことです。

1-1.特定疾病は、被保険者の種類による保障の違いに関係する

介護保険は40歳以上の方全員が保険料を納めなければなりませんが、対象となる被保険者の種類も年齢によって2種類に区分され、保障の条件も以下のように定められています。

  • 第1号被保険者 65歳以上の方が該当します。第1号被保険者は病気やけがで介護が必要となった場合、要介護(要支援)認定を受けると、介護サービスを1割の自己負担で利用できます。利用額は、要介護区分により上限があります。
  • 第2号被保険者 40歳以上65歳未満の方が該当します。第2号被保険者が介護保険の保障を受けるには、法令で定められた特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限られます。それ以外では介護サービスを医療することができません。要介護(要支援)認定を受け、該当する要介護区分に応じてサービスが利用できるのは第1号被保険者と同じです。

このような年齢による介護保険の保障の違いについては以下の記事で詳しく説明しています。 →「年齢別でみる介護保険の基本|こんなに違う!保障対象者

1-2.それでは特定疾病とは?

特定疾病とは、心身の病的な加齢現象と医学的な関係があるとされている疾病で、次の2つの要件を満たして介護が必要な状態を引き起こしていると認められる疾病です。

(1) 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳~65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む)が加齢との関係が認められる疾病であるもの。また、その医学的概念を明確に定義できるもの。

(2)3~6ヶ月以上継続し、要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病であること。

出典:厚生労働省ホームページ

要するに、通常、高齢になるとかかる病気で、それ以前の40歳~64歳でもかかることがあり、その病気になることで継続して介護が必要になる病気を指します。

こう言い換えても何のことかわかりにくいと思いますが、特定疾病については、具体的に16種類の個別疾病が定めめられています。

2.特定疾病(16種類)の一覧

特定疾病とされている16種類の病気は以下の通りです。

2-1.がん(末期)

がんは、悪性腫瘍、悪性新生物などとも言います。人間のさまざまな部位や臓器に生じ、症状も様々です。 また、ここでいう末期のがんとは、医師が一般に認められている医学的知見に基づいて、回復の見込みがない状態にであると判断されたものに限られます。

2-2.関節リウマチ

関節内の滑膜という組織が異常に増殖することにより、慢性の炎症が生じる病気です。進行すると関節の軟骨や骨が破壊されて、変形が生じるようになります。また関節だけではなく、貧血や体がだるい、微熱がでるなどの全身症状も起こります。

2-3.筋萎縮性側索硬化症

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足や呼吸器系の筋肉が衰えて使いにくくなっていく疾患です。筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かす命令をつかさどる神経(運動ニューロン)が病気に侵されることで命令が伝わらなくなり、次第に体を自由に動かせなくなります。

2-4.後縦靱帯骨化症

後縦靱帯骨化症(OPLL)とは、背骨(椎骨)の中にある脊柱管の内部後方を走る後縦靭帯が何らかの原因で骨のように硬くなった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。 後縦靭帯骨化症で頚椎の脊髄が圧迫されると、手足のしびれや手指の細かい運動がしづらくなり、足がつっぱってつまづきやすいなどの歩行障害も起こります。

2-5.骨折を伴う骨粗鬆症

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は低骨量によって骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。つまづいたりくしゃみをしたりしただけで骨折することもあります。大腿骨などの骨折で介護が必要になる人も少なくありません。

2-6.初老期における認知症

初老期とは40歳から64歳を指さし、その間に発症する認知症を初老期認知症と言います。記憶障害や失語・失行・失認などが起こります。 認知症にはアルツハイマー病や脳血管性認知症、レビー小体型認知症など様々な種類があり、種類によって原因や症状、改善策も異なります。

2-7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

進行性核上性麻痺とはパーキンソン症候群の一つであり、歩行障害や運動障害、認知症などの様々な症状を起こす病気です。(パーキンソン病とは動作の緩慢さや安静時の震え、転びやすいなどを主症状とする神経細胞の変性を主体とする疾患の一つです)。 また、大脳皮質基底核変性症とは、脳の神経細胞が脱落し神経細胞内等に異常なたんぱく質が蓄積することで起こる病気です。パーキンソン症状と大脳皮質症状が同時に見られます。

2-8.脊髄小脳変性症

脊髄小脳変性症とは、歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等の症状が現れる神経系の病気です。これらの症状は、主に、小脳の一部が病気となったときに現れ、総称として運動失調症状と呼ばれます。したがって、脊髄小脳変性症は一つの病気ではありません。

2-9.脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは、背骨の変形や椎間板のふくらみなどにより、脊髄の神経が通る脊柱管が狭くなり、それによって神経が圧迫されることから起こる病気です。腰痛、太ももや膝から下の痛み・しびれが起こります。進行すると、歩行が困難になったり排便・排尿の障害が起こる場合もあります。

2-10.早老症

早老症とは、早期に全身に老化の兆候が表れる疾患の総称です。ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群やウェルナー症候群、コケイン症候群などの疾患が含まれます。 ウェルナー症候群では、20歳代から白髪、脱毛、白内障が起き、手足の筋肉や皮膚もやせて固くなり、実年齢より老けて見えるようになります。

2-11.多系統萎縮症

多系統萎縮症とは、小脳性運動失調、パーキンソン症状、自律神経障害などが現れる疾患の総称です。歩行時のふらつきなど小脳性運動失調があるものをオリーブ橋小脳萎縮症、動作緩慢などパーキンソン症状のあるものを線条体黒質変性症、起立性低血圧や排尿障害など自律神経障害があるものをシャイ・ドレーガー症候群と呼んできました。

2-12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

いずれも糖尿病の合併症です。

糖尿病性神経障害とは、高血糖によって神経細胞の代謝障害が起き、知覚神経障害、運動障害、自律神経障害の症状が現れます。

糖尿病性腎症とは、血糖値の高い状態が長期間続くことで、腎臓の糸球体(毛細血管の塊のような組織)が壊れ、腎臓の機能障害が起きる疾患です。

糖尿病性網膜症とは、高血糖により網膜の毛細血管が障害を受け、視力障害や網膜剥離などが起きる疾患です。

2-13.脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによる病気の総称です。脳血管疾患は、「虚血性脳血管疾患」と「出血性脳血管疾患」の大きく2つに分類されます。

虚血性脳血管疾患は、脳の血管が詰まることによって脳への血流が悪くなり、脳細胞が酸素不足・栄養不足となり新でしまうものです。「脳梗塞」が代表です。

出血性脳血管疾患は、脳の血管が破裂して出血が起こる病気です。脳内の血管から出血する「脳出血」、脳の表面を覆っているくも膜の内側に出血する「くも膜下出血」などがあります。

2-14.閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により血管が狭くなったり、詰まったりすることで血液の流れが悪くなり、栄養や酸素を十分に送ることができなくなる疾患です。閉塞性動脈硬化症は全身疾患ですが、特に、手足の冷えやしびれ、痛みによる歩行困難などが該当します。

2-15.慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性気管支炎や肺気腫、気管支喘息など、呼吸がしにくくなる病気の総称です。空気の通り道となる気管支や肺に障害が起きることで呼吸がしにくくなり、咳や淡が出ます。 喫煙習慣と関係があるといわれています。

2-16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

変形性関節症とは、さまざまな原因により関節軟骨の変性や摩耗、関節周囲の滑膜の炎症などが起こり、関節の痛みや腫れをきたす疾患です。 特定疾患では、特に膝関節や股関節の変形によって、著しい痛みや歩行困難となる状態が該当します。

3.介護保険の申請~利用までの流れ

介護保険、及び介護サービスの申請方法、基本的な流れは以下の通りです。

  1. 申請を行う 必要書類をそろえて市区町村に申請します。
  2. 要介護認定の調査、判定 調査員の訪問による認定調査、主治医から意見書などをもとに要介護度が判定されます。
  3. 認定結果の通知 申請から原則30日以内に結果が通知されます。
  4. ケアプランの作成 介護認定されたら、要介護度や必要な介護に応じたケアプランを作成します。ケアマネージャー等に相談するとよいでしょう。
  5. サービスの利用 実際に介護サービスを利用します。自己負担は原則、1割。

介護保険および利用できる介護サービスや個別の相談については、申請を行う各自治体にお問い合わせください。

また介護保険の申請方法については、「介護保険の申請方法と正しく認定されるための5つのポイント」をご参照ください。

4.介護保険の第2号被保険者が保障されるのは、特定疾病のときだけ。

最後に介護保険の第2号被保険者と特定疾病についておさらいします。 介護保険は、40歳以上の人が加入している保険で、誰もが介護保険の保障を受けられるわけではありません。さらに介護保険の加入者でも、40~64歳の第2号被保険者の場合は、いくら介護が必要な状態になったとしても、特定疾病と呼ばれる16種類の病気が原因の場合しか保障されません

また、申請により介護認定を受けなければ保障を受けることができないのも大きな特徴です。

介護保険を受ける場合は、「第1号被保険者か第2号被保険者か」、更に「16種類の特定疾病であるか」をしっかり確認した上で確実に申請を行う。これを心がけておいてください。

敷田 憲司(Webマーケティングコンサルタント)執筆:敷田 憲司(Webマーケティングコンサルタント)
1975年福岡県北九州市生まれ。SEOやPPC広告運用、コンテンツ企画からライティングも行うサッカー大好きなコンサルタント。書籍も多数執筆。金融システムの開発や保険サイトに携わった経験から、保険や金融の有益な情報を届けします

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