年齢別でみる介護保険の基本|こんなに違う!保障対象者

2022-03-07

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40歳の年齢を迎えたある月、給与明細を見ると「介護保険料」が天引きされて手取りが減っていた…。それがきっかけで「介護保険って?」「なぜ急に?」などと思った方も多いのではないでしょうか?

あるいは、ご自身や身内の方が介護状態になりそうなど、身に迫る「介護問題」に直面し、年齢により保障内容が違うことに驚いた方もいると思います。

介護保険の加入年齢は40歳から。そして65歳以上は第1号被保険者、65歳未満は第2号被保険者と年齢によって介護サービスを利用できる条件が違います。介護保険の仕組みや年齢による違いを理解しておくと、いざ介護保険が必要になったときに役立ちます。

この記事では介護保険の仕組みから、年齢によって2つに分けられる介護保険の内容、支払うお金や受けられるサービスなどについてご紹介します。介護保険制度を理解して、将来の介護リスクに備えましょう。

1.そもそも介護保険とはどんな仕組み?

介護保険と聞くと、「今のところ介護する側でもされる側でもないから関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、40歳を過ぎると給与などから「介護保険料」が徴収されます。この介護保険料に関わる介護保険制度とはいったい何なのか、知っておく必要があります。

1-1.介護保険制度について

公的な介護保険制度は高齢化の動きを受けて、2000年から始まった制度です。税金と介護保険料を財源として、介護を必要とする人に対してデイサービスや訪問介護サービスなど、さまざまなサービスの費用を保障しています。介護が必要になった場合、多くの人が利用することになる制度ですが、年齢や要介護度によって受けられるサービスや条件なども異なるため、制度について正しく理解しておきましょう。

1-2.介護保険に加入する年齢は40歳から

介護保険の加入年齢(被保険者となる)は40歳から。そして、本人が介護を必要としない場合でも、原則として40歳以上のすべての人が加入することが義務付けられています。

1つ注意したいのは、介護保険の加入は満40歳に達したときだということ。これは誕生日当日ではなく、誕生日の前日を指します。よって、8月2日に誕生日を迎え40歳になる人は、8月1日が満40歳到達日となり、8月分から介護保険料が徴収されます。しかし8月1日が誕生日の場合は、前日の7月31日が満40歳到達日となるため、7月分から保険料が徴収されるという考え方になるのです。

そしてこの介護保険料は、健常者でも要介護者でも、年齢に関係なく生きている限りずっと支払う必要があるのです。

1-3.65歳未満と65歳以上という年齢で、介護保険は2種類に分かれる

介護保険は年齢によって2つに分けられます。65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳~65歳未満の「第2号被保険者」です。

1-3-1.介護保険料の支払い方の違い

年齢(被保険者の区分)により保険料の支払い方に違いがあります。

<第1号被保険者> 第1号被保険者(65歳以上)の場合、介護保険料は直接自治体へ支払う「普通徴収」と、年金から天引きされる「特別徴収」に分けられます。特別徴収の対象者は、国民・厚生・共済などの老齢・退職による年金や、遺族年金・障害年金を年間18万円以上受給している人です。これはほとんどすべての人が、65歳になると年金から介護保険料が天引きされているということです。

<第2号被保険者> 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合は、加入している健康保険の保険料と一緒に介護保険料が徴収されるという仕組みです。職場の健康保険に加入している場合は給与や賞与から天引きされ、国民健康保険に加入している場合は世帯ごとに決定され、国民健康保険と一緒に支払いをします。

1-3-2.介護サービスを受けられる対象者の違い

年齢(被保険者の区分)により介護保険のサービスにも違いがあります。

<第1号被保険者> 第1号被保険者(65歳以上)でサービスを利用できるのは、介護や介護予防が必要と認定された人です。所定の介護状態になっていれば、その原因は問われません。

<第2号被保険者> 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)は、特定疾患が原因となって介護や介護予防が必要であると認定された人です。特定疾患は、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗しょう症など16種類に限定されており、これらの疾病によって要介護・要支援状態となった場合には、要介護・要支援認定申請をして認定がされれば、国が提供する介護サービスを1割(一部2割)負担で受けることができます。しかし、特定疾患以外が原因である場合は、介護保険の対象にはならないことがポイントです。

第2号被保険者で介護保険の対象となる特定疾病

がん【がん末期】/関節リウマチ/筋萎縮性側索硬化症/後縦靱帯骨化症/骨折を伴う骨粗鬆症/初老期における認知症/進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病/脊髄小脳変性症/脊柱管狭窄症/早老症/多系統萎縮症/糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症/脳血管疾患/閉塞性動脈硬化症/慢性閉塞性肺疾患/両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

つまり、年齢の若い第2号被保険者は一部の特別な疾病が原因のときにしか介護保険は使えず、事故の後遺症などで介護状態となったときには介護保険の対象外になるということです。

第2号被保険者で対象となる特定疾病の内容については、「介護保険の対象となる特定疾病16種類の一覧[第2号被保険者]」をご参照ください。

2.介護保険料の負担額の年齢差は?

厚生労働省によると、2020年度に会社員や公務員が負担する介護保険料は1人当たり平均月5,642円(2016年度当初比290円増)になると推計されています。つまり年間にすると約6万7,000円の負担(本人負担は原則半額)です。ちなみに国民健康保険に加入の人は平均月5,556円(204円増)。介護保険制度が始まった2000年当初の負担額は、平均で月2,075円ですから、いかに金額が増えているかがわかると思います。この背景には、高齢化で介護を必要とする人が増え続けているという現実があり、今後も負担する額は増えていくことが想定されます。

65歳以上、第1号被保険者の介護保険料は、市区町村ごとに算出された「基準額」か、本人や世帯の所得状況に沿って計算されます。介護保険料の決定方法は市区町村によって基準が違うので、詳しくは住んでいる地域の自治体への確認が必要です。なお、2015年から2017年度の全国平均額は月5,514円です。65歳という年齢は、定年を迎えた年金生活者であることを考えれば決して軽い負担ではありませんが、高齢になるにつれ介護を受ける可能性は高くなりますから、この制度が活用される機会も多いということです。

介護保険料の推移

介護保険料の負担額については、平均で見ると第1号被保険者も第2号被保険者も月額5,500円くらいで、年齢による違いはあまりありません。会社員や公務員などは本人負担は半額なので、むしろ少なくてすんでいるといえそうです。

3.介護保険で受けられるサービスと申請方法は?

いざ介護が必要になった場合に介護保険で受けられるサービスや受けられる条件、申請方法についても簡単に確認しておきましょう。

3-1.受けられるサービスの種類

介護保険で受けられるサービスは、「居宅サービス」と「施設サービス」の2つに分けられます。居宅サービスとは、自宅での生活を基本に訪問や通所、短期間の入所で介護サービスを受けることを指します。

3-1-1.居宅サービスの内容

居宅サービスは主に訪問による介護サービスで、日常生活の助けとなるホームヘルプ、移動入浴車などで訪問する訪問入浴介護、看護師が訪問して療養のケアなどをする訪問看護、などがあります。自宅で暮らしながら日帰りで施設を利用するデイサービスなども一般的に利用されています。

3-1-2.施設サービスの内容

施設サービスは、施設への入所により利用するサービスで、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」の大きく3つに分類されます。介護老人福祉施設は、寝たきりや認知症などで身の回りのことが自分ではできず、介護困難の場合に入所、介護老人保健施設は病気等があるものの症状が安定していて、医師の診察や介護が必要な場合に入所、介護療養型医療施設は、長期的な治療、療養、介護などが必要な場合に入所します。

介護保険で受けられるサービスや費用の目安については「【徹底解説】介護保険で受けられるサービスの種類や料金とは?」をご覧ください。

3-2.介護サービスを受けるための申請方法

これらの介護サービスを受けるためには、介護保険の対象となる必要条件を満たし要介護の認定を受けなければならず、被保険者が住所地の自治体へ介護申請の手続きをします。申請書類は各自治体の役所や地域包括センターに置いてあるのはもちろん、自治体ホームページからダウンロードできるようになっている場合も多いので、確認しましょう。

申請すると、自治体が被保険者の認定調査をします。一次判定、二次判定とステップを踏み、最終的に要介護区分が決定。この要介護区分によって受けられる介護サービスも変わりますが、利用料金の自己負担額は、かかった額の原則1割です。ただし年齢と所得の条件によっては2割になる場合もあります。また費用の負担を軽くする軽減制度」もあるので、必要に応じて活用したいところです。

さらに公的な介護保険だけの保障では不安だという場合は、民間の保険を検討するのも一考です。

なお、介護保険の申請方法や認定調査の詳細は「介護保険の申請方法と正しく認定されるための5つのポイント」をご参照ください。また民間の介護保険で備えたい方は「どこよりも詳しい!民間の介護保険の必要性と選び方」をご覧ください。

4.まとめ:介護保険の加入年齢は40歳から、本格的な保障は65歳から

介護保険料の加入年齢は満40歳になってから。そして介護の必要の有無に関わらず一生払い続けていくものであり、年齢によって支払うお金やサービスを受ける条件が違うこともお分かりいただけたかと思います。実質的に介護の保障を受けられるのは65歳からといえるでしょう。

そうなると、特に40歳~65歳までの年齢の方は介護保険料の負担が大きいと感じるかもしれません。しかし、いざ自分や身内が介護状態(主に65歳以上で)になった時には、この保険によって介護料の自己負担が1割で済むということを理解していると、感じ方も違うのではないでしょうか。そういった意味でも介護保険について正しい知識を深めることが大切だといえるでしょう。

※この記事の情報は2017年7月時点のものです。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。

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