専業主婦の加入は要注意!|確定拠出年金改正(2017年)

2021-11-24

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確定拠出年金(DC)が法改正され、2017年1月からは、公務員や主婦、企業年金加入者等が新たに個人型確定拠出年金(個人型DC)に加入できるようになります。

個人型確定拠出年金は、個人で将来の退職金または年金を用意できる制度で、しかも税制面でのメリットがあります。近年、国民年金や厚生年金などへの不安が高まってきていて、老後の生活資金を自分でも準備しなければならないという考え方が広まっていることもあり、この改正はそういった流れを推し進めることになりそうです。

しかし、多くのメディアで確定拠出年金の税制メリットが紹介される一方で、デメリットになる部分はあまり触れられない傾向にあります。特に、今回の改正で新しく加入対象となる人たちの中では、専業主婦へのメリットはあまりないのが現状です。

専業主婦の方で、もし2017年1月から確定拠出年金をはじめたいと思っている人がいたら、あわてて加入せずにもう少し様子を見たほうがよいかもしれません。

1.2017年から新たに個人型確定拠出年金(個人型DC)に加入できる人たち

今回の改正により、新たに個人型確定拠出年金に加入できるようになる人は、以下の人たちです。

  • 公務員
  • 企業年金を導入している企業の会社員
  • 専業主婦等(国民年金の第3号被保険者)

2.個人型確定拠出年金とは

確定拠出年金は、毎月掛け金を支払っていき、その掛金の運用方法を加入者本人が指示する年金です。加入者が60歳になると、運用した掛金を一括または年金として受け取ることができ、その金額は各加入者の掛金や運用成果によって変わってきます。

確定拠出年金には、企業が福利厚生制度として導入している企業型と自営業者や企業年金等のない会社員が加入できる個人型があります。個人型確定拠出年金とは、その個人型のことです。

確定拠出年金についての詳細は「確定拠出年金|2016年5月の法改正のポイントと制度の概要>3.確定拠出年金とは」を参照ください。

3.個人型確定拠出年金のメリット・デメリット

個人型確定拠出年金には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 掛金が所得控除される(所得税・住民税が非課税となる)
  • 運用益が非課税
  • 年金を受け取るときに所得控除がある(公的年金控除、退職所得控除)
デメリット

  • 確定拠出年金の管理手数料が高い(金融機関によるが月額500~600円程度)
  • 初心者には運用が難しく、運用の仕方によっては元本割れのリスクもある
  • 老後まで引き出せない

基本的には、所得控除や運用益への非課税という税制面のメリットが大きく、手数料や運用指示などの実際の運用面ではデメリットがあるというのが実情です。ただし、運用がうまくいけば税制メリットがさらに拡大することになります。

3.専業主婦やパートの主婦の加入は注意が必要

2017年から新しく個人型確定拠出年金に加入できるようになる人たちのなかで、専業主婦やパートやアルバイトで少額の収入(103万円以下の所得税非課税範囲)を得ている人は、加入メリットがあまりないので注意が必要です。

3-1.確定拠出年金の税制メリットのおさらい

2章でも個人型確定拠出年金のメリットを紹介しましたが、ここでもう少し突っ込んでみてみましょう。

個人型確定拠出年金の税制メリットは、掛金が所得控除され、運用益は非課税、年金受取時は所得控除があるというものでした。ここで運用益についてはおいておいて、掛金と将来の年金について注目すると、掛金については所得税が非課税になるかわりに、運用結果として受け取る年金は課税されるということです。

つまり、掛金については本当は非課税になったのではなく、その時点では課税しないが将来別の機会(年金受取時)にあらためて課税するという、税の繰り延べ制度なのです。ただし、年金として受け取るときにも別途所得控除があるため、通常、現役時代に所得税として払うよりは税金は少なくなるので、その点はメリットといえます。

3-2.では、そもそも収入のない専業主婦はどうなの?

ここで、問題となる専業主婦の場合を考えてみましょう。

専業主婦だと働いてないので所得はありません。だから掛金を支払って所得控除を受けようと思っても、所得控除を受けることはできません。ところが、将来、年金を受け取るときはその年金は雑所得として扱われ所得税が課税されることになります。そのときには公的年金控除や一括で受け取る場合は退職所得控除を受けられるので、年金額によっては非課税ですむこともありますが、もし非課税枠におさまらない額になったら税金を支払うことになります。

何か変ですよね。そもそも所得がなく課税対象にならないお金なのに、確定拠出年金として運用したら将来所得として課税されるかもしれないのです。もう少しわかりやすく説明すると、専業主婦が自分名義で積立預金をしたら、解約するときにその預金の元本も所得として扱われて課税されるのと同様のことが起きるのです。

専業主婦なので、夫が既に所得税を払った後のお金を掛金にしているのに、その掛金に将来さらに所得税がかかったら二重課税のようなものです。

おそらく、元々は専業主婦が加入することを想定せずに作った“税金を繰り延べする制度”なので、急に専業主婦も加入できるとなって、そのままの制度を当てはめることで、このようなおかしな現象が起きてしまうのだと思います。

今年5月に確定拠出年金の改正法が成立して以降、まだ表立って、このおかしな状況についての報道や発表はされていないようです。いずれは、この問題について議論され、税制などが改正されるのかもしれませんが、現段階ではどうなるかはっきりしていません。

したがって、この問題点の方向性がわかるまでは、専業主婦の方は個人型確定拠出年金への加入に慎重になった方がよいでしょう。

パートやアルバイトなどの収入が103万円以下で、所得税が非課税となる主婦の場合も専業主婦と同じで、所得控除を受けられないので注意が必要です。

3-3.専業主婦には確定拠出年金のデメリットがのしかかる

専業主婦や所得が103万円以下の主婦の場合は、確定拠出年金の最大のメリットである所得控除が受けられません。そのため、デメリットである確定拠出年金の管理手数料の高さが大きくのしかかってくることになります。

専業主婦の掛金は年間27.6万円(月額2.3万円)までとなる予定です。
手数料が安い金融機関でも手数料は月額500円はかかります。仮に月に1万円の掛金を支払った場合は、掛金の5%が手数料として消えていくことになります。2万円の掛金でも2.5%が消えていきます。マイナス金利の時代にこの手数料の高さの影響は大きく、この分を取り戻せるだけの運用成績を残すのは、素人には簡単なことではないと思われます。

そう考えると、専業主婦の場合は個人型確定拠出年金に加入しても、メリットはあまりないといわざるを得ません。

4.まとめ:主婦の確定拠出年金加入は慎重に!

個人型確定拠出年金は、あまり認知されていませんが手数料の高さがかなりネックになる制度です。会社員や公務員、自営業者などで所得がある人であれば、所得控除と運用益の非課税メリットがあるため、長期的に運用する際に手数料というコストを吸収していくことも可能ですが、専業主婦等は肝心な所得控除が使えないため、このコストを吸収して利益を出していくことは結構ハードルが高いのが現状です。

メディアによっては、専業主婦も退職金を用意ができるなどと言って、確定拠出年金への加入をあおっているところがありますが、安易な加入には気をつけてください。

専業主婦等はすぐに確定拠出年金をはじめるよりも、コスト計算や運用方針、将来の年金受取時の公的年金控除や退職金控除の適用状況をしっかりシミュレーションして、慎重に判断した方がよいでしょう。

また、民間の年金商品である個人年金保険を使った貯蓄法についても知りたい方は下記ページをご参照ください。
個人年金保険とは?|しくみと税金メリットを生かした貯蓄法

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