寄付金控除とは?ふるさと納税との関係についても解説

2022-04-06

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寄付をした際に控除が受けられる「寄付金控除」。「ふるさと納税」の注目度が上がっていくのにともない、耳にする機会が増えました。とはいえ、「どんな寄付でも対象になるの?」、「控除を受けるためには手続きが必要なの?」など、疑問に思っている人も少なくないかと思います。

そこで今回は、寄付金控除の概要や仕組みからふるさと納税との関係まで、わかりやすくお伝えしていきます。

1.寄付金控除とは?

寄付金控除とは、個人が国や地方公共団体、特定の法人などに寄付を行ったとき、確定申告をすることで、その金額に応じて所得税や住民税の控除が受けられる制度のことです。

ちなみに税務用語上では「寄附金控除」が正式な表記ですが、この記事では「寄付金控除」と表記していきます。

1-1.特定の寄付で税金が安くなる

寄付金控除を申請すると、1年間の寄付金額に応じて、その年の所得から所得控除を受けることができ、税金が軽減されます。一部の寄付については住民税も控除されます。ただし、どんな寄付金でも対象となるわけではなく、特定の条件を満たす「特定寄付金」のみが対象となります。

また、基本的に寄付金控除は収入のある納税者に対する制度であるため、所得税や個人住民税が課税されない寄付者は税制優遇を受けることができません。年金生活者や専業主婦・主夫、学生など所得が一定以下の人が寄付する際には、活用できないこともあるので注意が必要です。

1-2.寄付金控除の背景

なぜこういった税制上の優遇措置が認められているのかといえば、日本では公益性の高い活動等への寄付が浸透しておらず、これを税制上からも促進するという狙いがあるためです。

2.寄付金控除の対象となる寄付は7パターン

上述のように、寄付金控除の対象なるのは特定寄付金のみです。特定寄付金とは以下のような寄付金を指します。

ただし、学校入学に際して行うものや、寄附をした人に特別な利益が生じると認められるものは含まれません。

<特定寄付金>

  1. 国または地方自治体に対する寄付金
  2. 指定寄付金(公益社団法人や公益財団法人、公益を目的とする事業を行う法人などに対しての寄付金のうち、「広く一般に募集されている」かつ「緊急性と公益性が高い」と財務大臣が認めたもの)
  3. 特定公益増進法人に対する寄付金(教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に寄与すると認められた一定のもの)
  4. 特定公益信託の信託財産にするための金銭支出(特定公益信託のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に寄与すると認められた一定のもの)
  5. 政治活動に関する寄付金(個人が支出した、政党、政治資金、団体公職の候補者等に対する寄付)
  6. 認定NPO法人等に対する寄付金
  7. 特定新規中小会社の特定新規株式の取得金額の一部

3.寄付金特別控除という制度もある

2011年の制度改正によって、特定の対象に寄付した場合、通常の寄付金控除に加えて寄付金特別控除が選べるようになりました。従来の寄付金控除が「所得控除」であるのに対して、寄付金特別控除は「税額控除」です。そのため控除額を算出する際の方法が異なります(詳しくは後述)。一般的に、税額控除の方が減税効果は大きくなります。

ただし寄付金特別控除の対象となるのは、政党や政治資金団体、認定NPO法人、公益社団法人等に対する寄付金のみ。つまりこれらに該当する対象に寄付した場合に限り、寄付金控除か寄付金特別控除のいずれか有利な方を選択することができるということです。

4.寄付金控除、寄付金特別控除で控除される金額

寄付金控除(所得控除)と寄付金特別控除(税額控除)は、それぞれ控除額の算出の仕方が異なります。ここではその二つを分けて説明します。

4-1.寄付金控除(所得控除)の算出方法

寄付金控除の控除額は次の計算式で算出します。この計算式で算出された額が「所得金額」から控除されます。

寄付金の年間合計額※1  - 2,000円 = 控除額
  ※1 年間総所得金額の40%が上限

4-2.寄付金特別控除(税額控除)の算出方法

寄付金特別控除の控除額の計算式は、寄付の対象によって異なります。それぞれの計算式で算出された額が「所得税額」から控除されます。

4-2-1.政党や政治資金団体への寄付

(寄付金の年間合計額※2 -2,000円)×30%=控除額
  ※2 年間総所得金額の40%が上限

4-2-2.認定NPO法人または公益社団法人等に対する寄付

(寄付金の年間合計額※3  -2,000円)×40%=控除額※4 
  ※3 年間総所得金額の40%が上限
  ※4  所得税額の25%が上限

4-3.どちらの控除がお得?

所得税額は大まかに、次のようなステップで計算されます。

(1)「総所得金額」を算出

(2) 総所得金額から所得控除の合計額を引いて「課税所得金額」を算出

(3) 課税所得金額に税率をかけて「税額」を算出

(4) 課税額から税額控除して「申告納税額」を算出

ここからわかるように、所得控除と税額控除は、税率をかける前の所得金額から控除するか、税率をかけた後の所得税額から控除するかという点で異なります。

寄付金特別除の計算上、寄付金額に30%または40%を掛けた額が税額控除されることから、所得税率が30%未満(政党等への寄付)あるいは40%未満(NPO等への寄付)であれば、寄附金特別控除(税額控除)の方が有利といえます。

ただし、寄付金控除で所得控除を受けることにより税率が一段階下がるようなケースでは、寄附金控除(所得控除)の方が、全体の税額が下がる可能性があります。

5.寄付金控除は確定申告で行う

冒頭でもお伝えした通り、寄付金控除、寄付金特別控除を受けるためには確定申告を行わなければなりません。会社で行う年末調整では計算の対象となっていないので注意しましょう。

確定申告をする際には、寄付金控除に関する事項を確定申告書に記載したうえで、寄付した団体などから交付を受けた寄付金の受領証(領収書)を確定申告書に添付する必要があります。

6.ふるさと納税も寄付金控除の対象

近年利用者が増えている「ふるさと納税」。応援したい自治体に寄付をする仕組みのふるさと納税は寄付金控除の対象となるため、納めた金額に応じて控除を受けることができます。

6-1. ふるさと納税と寄付金控除

ふるさと納税が通常の寄付金控除と違うのは、通常の「基本控除」に加え、住民税の「特例控除」があるという点です。これにより、ふるさと納税では実質2,000円程度の負担で返礼品をもらうことができ、人気となっています。

6-2.ふるさと納税の控除額の計算

ふるさと納税の控除額は、所得税と住民税のそれぞれについて次の計算式で算出されます。

<所得税>

(寄付金の年間合計額-2,000円)×所得税率=控除額
  ※控除対象となるふるさと納税の納税額は総所得金額の40%まで

<住民税>

(基本分):【(寄付金の年間合計額-2,000円)×10%=控除額
  ※控除対象となるふるさと納税の納税額は総所得金額の30%まで

(特例分):【(寄付金の年間合計額-2,000円)×(90%-所得税×1.021)=控除額
  ※特例分は住民税所得割額の2割まで

なお、寄附金控除による税金の軽減のされ方(納付、精算の方法)は、所得税と住民税とで少し違いがあります。

所得税の場合は、確定申告で税額が確定した後、寄付金控除を反映した税金をすみやかに納付します。会社員等ですでに納税済み(源泉徴収され年末調整済)の場合、寄付金控除による税金の減額分が指定した金融機関の口座に直接振り込まれます。

住民税の場合は、タイミングが少しずれて、翌年(確定申告後の)6月以降に前年分の税金(寄付金控除反映済)を収めます。

6-3.ふるさと納税の寄付金控除手続き

ふるさと納税の場合も、寄付金控除を受けるためには、基本的には確定申告を行う必要があります。

ただし、ふるさと納税には確定申告を行わなくても寄付金控除が受けられる「ワンストップ特例制度」が設けられています。もともと確定申告が不要な会社員等で、ふるさと納税先の自治体が1年間で5自治体までであれば、この制度を活用できます。6回以上ふるさと納税を行っても、5自治体以内であれば利用可能です。

ワンストップ特例制度についてさらに詳しく知りたい方は、『ふるさと納税とは|ワンストップ特例制度を使った申込み方法』の記事もご覧ください。

7.まとめ:寄付金控除をしっかり活用しよう!

一定の寄付をした場合、寄付金控除を利用することで、その年の税金を安くすることができます。手続きとしては確定申告をしなければなりませんので、一般の会社員等にとってはハードルが高いものに思われますが、寄付金控除の申告だけであれば、それほど難しくありません。税金が安くなるわけですから、もれなく申告するべきです。

特に、ふるさと納税を行っている人やこれから行おうと考えている人には必要な知識となるため、ぜひ覚えておいてもらいたい制度です。また、控除額の計算についてはシミュレーションを行えるサイトなどもあるのでそちらもあわせて活用してください。この記事を参考に制度をしっかり理解して、寄付金控除をもれなく利用していきましよう。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎 (編集・制作プロダクション)
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