高額介護サービス費|介護の自己負担が高額になったら申請を!

2022-04-06

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デイサービスや訪問看護など、幅広いサービスをカバーする介護保険。1~3割の自己負担で、自分に合ったサービスを受けられます。とはいえ、利用頻度が高まると負担は増えるもの。

今回は、負担軽減のための制度である高額介護サービス費について取り上げます。

1. 高額介護サービス費とは?

最初に、高額介護サービス費がどんなしくみなのか、どんな人が対象になるのかについて説明していきます。

1-1. 負担上限を超えたサービス費が返ってくる

高額介護サービス費とは、介護保険制度に組み込まれた、利用者の負担を軽減するためのしくみです。

介護保険が適用される介護サービスを利用する際、自己負担割合は1~3割です。その自己負担が高額になった場合に適用されるのが、高額介護サービス費。個人や世帯の所得によって決められている月々の負担額上限を超えた分が、介護保険から支給されます。

1-2. 介護保険給付対象者が利用できる

では、どのような人が利用できるのでしょうか。先ほども触れたように、高額介護サービス費は、介護保険に組み込まれたしくみのひとつ。介護保険の給付対象になっている人に限って利用できます。

対象は、自治体から「要介護(1~5)」「要支援(1、2)」の認定を受けた人のみ。「非該当(自立)」と判断された場合は、介護サービスを利用していても対象にはなりません。

2. どの介護サービスが対象?

次に、どのような介護サービスが「高額介護サービス費」の支給対象となるのかを確認します。

2-1. 介護保険適用の基本サービスが対象

高額介護サービス費の支給対象となるのは、次の3つの基本サービスです。

一つは、本人が自宅に居住したまま利用できる「居宅サービス」です。買い物や身の回りのサポートをする訪問サービス、デイサービスなどの通所サービス、ショートステイなどの短期入所サービスが該当します。

もう一つは、「介護施設サービス」。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設などへの入所に付随したサービスです。食事や入浴、排泄の補助などのほか、看護などが含まれることもあります。

3つ目は、本人が慣れ親しんだ地域で暮らせるようサポートする「地域密着型サービス」。居宅サービスよりさらに細やかな訪問・通所型サービス、自宅近くの小規模な施設に入所する施設・特定施設型サービス、そして認知症対応型サービスなどが提供されています。

介護保険で受けられるサービスの種類や料金の目安については「【徹底解説】介護保険で受けられるサービスの種類や料金とは?」をご覧ください。

2-2. 住宅改修などは対象外

介護保険が適用されていていても、高額介護サービス費の支給対象にならないものもあります。手すりの設置や段差解消などの住宅改修費、ポータブルトイレや入浴用品などの特定福祉用具購入費は対象外です。

また、ショートステイなどを含む施設を利用した際にかかった食費や居住費、日常生活費など、もともと介護保険の対象外となる費用についても、高額介護サービス費の支給対象にはなりません。

介護保険の住宅改修費の内容については「介護保険の住宅改修とは?制度の仕組みと申請のポイント」をご覧ください。

3. 自己負担上限額は所得により違う

高額介護サービス費は、対象サービスへの月々の支払い(自己負担)が、一定の金額を超えた場合に適用されます。ここでは、所得によって異なる自己負担の上限について解説します。

■介護保険サービスの自己負担上限額

所得区分自己負担上限額(月額)
現役並み所得者※144,400円【世帯合計】
住民税課税世帯44,400円【世帯合計】※2
住民税非課税世帯
(世帯全員)
以下の(1)(2)以外24,600円【世帯合計】
(1)老齢福祉年金受給者(個人)

24,600円【世帯合計】
15,000円【個人】

(2)前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の人(個人)
生活保護受給者等15,000円【個人】

※1. 同じ世帯に 65 歳以上で課税所得 145 万円以上の人がおり、 65 歳以上の人の収入の合計が520 万円以上(単身の場合は 383 万円以上)である場合
※2. 2020年7月までは1割負担の被保険者のみ世帯は年間上限446,400円(月当たり37,200円)

3-1. 基本は世帯あたり月額44,400円

現役並みの所得がある人や住民税の課税対象となる人がいる世帯は、月額44,400円が自己負担の上限額となります。世帯の誰か1人でも住民税を課されている場合はこれに該当します。

なお、世帯のすべての被保険者が「1割負担」の場合は、年間の負担上限額が446,400円(月額37,200円)と定められています。ただし、これは2020年7月までの時限措置。同年8月からは、月額44,400円が上限となります。

3-2. 住民税非課税世帯なら月額24,600円

世帯の全員が住民税を課されていない場合は、自己負担の上限が月額24,600円となります。

さらに、前年の所得と公的年金収入の合計が年間80万円以下の人、老齢福祉年金を受給している人については、個人としての負担上限が月額15,000円と定められています。単身世帯の場合は、こちらの基準が適用されます。

3-3. 生活保護受給者は月額15,000円

生活保護を受給している人は、月額15,000円が負担上限になります。

4. どうやって申請すればいい?

最後に、高額介護サービス費の申請の流れや、申請の期限などについて説明します。

4-1. 市町村からの通知をもとに申請

高額介護サービス費の支給対象となった場合、通常、お住まいの自治体から支給申請書が送られてきます。必要事項を記入し、捺印のうえ、役所などへ郵送または持参してください。申請が受理されると「支給決定通知書」が届き、申請時に指定した口座へ振り込みが行われます。

1度申請すると2回目以降は指定した口座に自動的に振り込まれます。

4-2. 申請は2年以内に

申請期間は、支給対象となったサービスが提供された月の、翌月1日から2年間と定められています。自治体から申請書が届いたら、忘れないうちに申請しておきましょう。なお、受け取る口座を変更したい場合は、別途手続きが必要です。

5. まとめ:適切な介護サービスで、より良い暮らしを

今まで、負担が増えることを気にして、介護サービスの利用を控えていた人もいるかもしれません。高額介護サービス費を活用して適切なサービスを受けることで、よりよい暮らしに近づけられるはずです。もしわからないことがあれば、担当のケアマネージャーさんに相談してみてくださいね。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親(編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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