雇用保険|失業以外でも使える3つの給付の活用マニュアル

2021-11-24

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会社員なら必ず入っている雇用保険。
俗に失業保険といわれているように、失業してしまったときに一定期間、基本手当の給付を受けることができます。

しかし、この雇用保険には、実は失業したとき以外にもお金がもらえる場合があるということをご存じですか?

たとえば、スキルアップのために自分で通っている教育機関の講座や受けている通信教育講座などの費用を補助してくれる教育訓練給付金、育児休暇中に給料代わりとなる給付を受けることができる育児休業給付(男性でもOK)などがあります。

これらのなかでも、特に教育訓練給付金は自分自身で申請しなければ会社も教えてくれませんし、知らないでいると損してしまう可能性があります。いや、既に損してしまっている人もいることでしょう。

今回は、その教育訓練給付金を中心に、会社を辞めたり失業したりしたとき以外に会社員を続けながらでも利用することができる雇用保険の給付を複数ご紹介します。会社員の方もこれから会社員になる方も、ぜひ忘れずに上手にご活用ください。

1. 失業以外でも使える雇用保険の3つの給付

雇用保険には、労働者が失業した場合の手当や就職を促進するための給付、失業の防止や雇用の安定、雇用機会の増大を図るための給付などがあります。

雇用保険の給付の概要

 

それらの給付のなかでも、現役世代の人が失業することなく会社に勤めながら利用できる雇用保険の給付としては以下の3つがあります。

  • 教育訓練給付金
  • 育児休業給付
  • 介護休業給付

それではそれぞれの給付金の概要について、次章から順に説明していきます。

2. スキルアップに使える教育訓練給付金[雇用保険]

教育訓練給付金は、資格取得やスキルアップを目指して教育講座等を受講した場合に、申請によりその費用の20~60%を受け取ることができます。業務外で自己研鑽の勉強をしている会社員の方なら絶対に活用すべき雇用保険の制度です。

教育訓練給付金には、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金があります。
一般教育訓練給付金はビジネス系の幅広い資格・検定などを対象としており、専門実践教育訓練給付金は資格がある人でなければつけない職業や専門職を目指す講座、専門職学位を取得するための大学院などを対象にしています。

一般教育訓練給付金一般的なビジネス資格、検定・認定などのための講座が幅広く対象
専門実践教育訓練給付金業務独占資格や専門職大学院など、より専門性が高い講座・学校が対象

2-1. 一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は、会社員が働きながら取得することが多い資格や認定試験(TOEICやFP資格、簿記検定、パソコン系の認定試験など)の勉強をするための講座や通信教育などに適用され、その費用の20%の金額(上限10万円)が支給がされます。なお、支給額が4千円以下の場合は支給されません。

たとえば、簿記1級の受験のために専門学校に通い、その受講料が20万円かかった場合、4万円を受け取ることができます

会社員ならほとんどの人が活用できる制度なので、ぜひ上手に活用してください。

2-1-1. 対象となる講座の例

一般教育訓練給付金の対象となる講座は、厚生労働大臣の指定を受けた講座となりますが、世の中に広く認知されているビジネス資格や各種検定など数多くが該当しています。

たとえば、司法書士の講座をみてみても、通学(夜間、土日)、通信講座、eラーニングなどの講座が揃っており、働きながら自分にあった勉強方法が選択できるようになっています。

どんな業種・職種の人でも、何か関連したものがあると思いますので、以下の表を参考にしてみてください。

情報関係Webクリエイター能力認定試験、Webデザイナー検定、CGクリエイター検定、Illustratorクリエイター能力認定試験 、MOS2010、建築CAD検定、シスコ技術者認定(CCNA等) など
事務関係TOEIC、実用英語技能検定(英検)、実用イタリア語技能検定試験、実用フランス語技能検定試験 簿記検定試験(日商簿記)、行政書士など
専門サービスAFP資格審査試験、CFP資格審査試験、公認会計士、司法書士、証券アナリスト、税理士、米国公認会計士(USCPA)、産業カウンセラー試験、社会保険労務士試験、中小企業診断士試験、不動産鑑定士・鑑定士補、マンション管理士試験など
営業・販売・サービス関係調理師、カラーコーディネーター検定試験、インテリアコーディネーター、消費生活アドバイザー試験、総合旅行業務取扱管理者、宅地建物取引士、美容師など
社会福祉・保険衛生関係看護師、救急救命士、理学療法士、介護福祉士、社会福祉士、介護職員初任者研修、管理栄養士など
自動車免許・技能講習大型自動車第一種免許、大型自動車第二種免許、普通自動車第二種免許、フォークリフト運転技能講習など
技術関係電気主任技術者、電気通信工事担任者、気象予報士、危険物取扱者など
製造関係自動車整備士、製菓衛生師など

具体的に対象となる講座を知りたい場合は、こちら(厚労省WEBサイト)から検索できます。

2-1-2.申請できる人(支給対象者)

同じ会社で3年以上雇用されている人(雇用保険の被保険者)等が、一般教育訓練給付金の支給対象者となります。ただし、転職などで会社を変わっている場合でも、今の会社と前の会社の間の雇用保険の空白期間が1年以内であれば両社の雇用期間を通算することができます。

また一度、一般教育訓練給付金を利用した場合も、前回の利用から3年が経過していたら再度、利用することができます。

2-1-3.申請手続き

一般教育訓練給付金の申請の流れ

一般教育訓練給付金は、対象となる教育訓練を受講した本人が受講後に、自分の住所地のハローワークに書類を提出して申請します。申請には、教育機関から発行される教育訓練終了証明書や領収書などの証明書類が必要となります。

申請は、原則、本人がハローワークに行かなければなりませんが、疾病や負傷、在職中であることを理由にハローワークへの来所が難しい場合は、郵送で行うことができます。

なお、申請時期は一般教育訓練の受講終了日の翌日から1ヵ月以内となっています。申請できる期間が短いので注意が必要です。

2-2. 専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は、看護師や救急救命士、はり師、あん摩マッサージ師、理学療養士、調理師などの業務独占資格・名称独占資格の取得や訓練のための養成施設、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院などに適用されます。給付金は、講座受講費用の40%(最大で3年間で96万円が上限)が支給され、終了後1年以内に資格取得などをして就業していると追加給付で20%が支給されます。追加給付を受けると合計で受講費用の60%(最大で3年間で144万円が上限)が支給されることになります。なお、支給額が4千円以下の場合は支給されません。

専門実践教育訓練給付金は、どちらかというと会社員のスキルアップというよりも、資格を生かした専門職種への転職などを目標として利用する制度といえそうです。

2-2-1. 対象となる講座

専門実践教育訓練給付金の対象となる講座は、以下のようなものが該当します。一般教育訓練給付金の講座と比べると受講期間も長くなり、通学による講座がメインになります。したがって、働きながらの受講は少し難しそうです。ただし、夜間コースがあったり一部に通信やeラーニングの講座もありますので、そのような講座が見つかれば、会社員でも利用が可能です。たとえば、看護師や美容師、社会福祉士などは通信講座での受講が可能です。

(1)業務独占資格・名称独占資格の取得のための養成施設の課程(1年以上3年以内)
以下の表のような資格取得のための講座が対象となります。

業務独占資格助産師、看護師、診療放射線技師、理学療法士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、あん摩マッサージ師、はり師・きゅう師、柔道整復師、美容師、理容師、建築士など
名称独占資格調理師、栄養士、介護福祉士、保育士など

(2)専門学校の職業実践専門課程(2年)
専修学校の専門課程のうち、企業などとの連携により最新の実務知識などを身につけられるよう教育課程を編成したもので、文部科学大臣が認定したもの。
たとえば、ゲームクリエイター、会計士、税理士などのコースがあります。

(3)専門職大学院(2年または3年)
高度専門職業人の養成を目的とし、専門職学位が取得できる課程。
たとえば、経営管理修士、技術経営修士などの学位が取れるコースがあります。

具体的に対象となる講座を知りたい場合は、こちら(厚労省WEBサイト)から検索できます。

2-2-2. 申請できる人(支給対象者)

同じ会社で10年以上雇用されている人(雇用保険の被保険者)等が、専門実践教育訓練給付金の支給対象者となります。ただし、転職などで会社を変わっている場合でも、今の会社と前の会社の間の雇用保険の空白期間が1年以内であれば両

社の雇用期間を通算することができます。

また一度、専門実践教育訓練給付金を利用した場合も、前回の利用から10年が経過していたら再度、利用することができます。

2-2-3.申請手続き

専門実践教育訓練給付金の申請の流れ

専門実践教育訓練給付金の手続きは、受講の1ヵ月前までにキャリア・コンサルティングを受けたうえで、ハローワークに事前手続きをする必要があります。また支給申請は、40%分は講座の受講中(6ヵ月ごと)・受講終了後に、追加の20%分は目標の資格取得後1ヵ月以内にハローワークに必要書類を提出して行います。申請には、教育機関から発行される受講証明書・専門実践教育訓練終了証明書や領収書などの証明書類が必要となります。

原則、本人がハローワークに行かなければなりませんが、疾病や負傷、在職中であることを理由にハローワークへの来所が難しい場合は、郵送で行うことができます。

3. 子育て休暇中の育児休業給付[雇用保険]

育児休業給付は、子育てのために育児休暇を取っている期間について、通常の給料の3分の2程度を受け取ることができ、男性も女性も申請が可能な雇用保険の制度です。つまりパパが育児休暇をとるという場合にも利用できます。育児休暇中の収入面の不安をかなり解消できるのではないでしょうか?

3-1. 育児休業給付の概要

雇用保険の被保険者が、1歳に満たない子を養育するために育児休業を取得した場合に、育児休業給付を受けることができます。なお、1歳を過ぎても保育所に入れないなどの理由がある場合は1歳6ヵ月まで支給期間の延長が可能です。

女性の場合は、出産の翌日から起算した8週間は産後休業期間となり健康保険の出産手当金があるため、その期間があけてからが育児休業給付の対象となります。男性の場合は、出産当日から育児休業給付の対象となります。

3-2. 支給額は給料の50~60%

育児休業給付は、育児休暇を取得し始めてからの1ヵ月を一つの支給単位として、1ヵ月ごとに支給されます。

その支給額は、育児休業の開始から6ヵ月間は月給の67%(上限285,621円)、6ヵ月経過後は50%(上限213,150円)です。

また、育児休業期間中に会社から給料が支払われた場合は、育児休業給付の支給額が減額または停止されます。会社からの給料が休業前の給料の30%超80%未満の場合は、給料と給付金の合計額が元の給料の80%となるように支給額が調整されます。また会社からの給料が80%以上の場合は、給付金は支給されません。

3-3. 申請は会社を通して

育児休業給付は、原則会社が手続きを行います。大企業などで福利厚生がしっかりしているところであれば、会社から手続きについて知らせてもらえると思いますが、小規模の会社などの場合は、申請漏れを防止するためにも念のため自分から担当部署に育児休業給付を受けたい旨を知らせて手続きをしてもらうとよいでしょう。また、あわせて育児休業中の給料の支払いの有無についてもよく確認しておきましょう。

4. 家族を介護するときの介護休業給付[雇用保険]

介護休業給付は、家族を介護しなければならず介護休暇を取っている期間について、通常の給料の4割程度を受け取ることができる雇用保険の制度です。

介護自体が大変なうえに、その間の収入が途絶えてしまうのはとてもつらいことです。会社が介護休暇を認めてくれるなら、ぜひ活用したい制度です。

4-1. 介護休業給付の概要

雇用保険の被保険者が、2週間以上にわたり常時介護が必要な状態にある家族を介護するために、会社に休業期間を申し出て取得した休業期間に対して、介護休業給付が支給されます。

介護休業給付は最大で3ヵ月間支給されます。

4-2. 支給額は給料の40%

介護休業給付は、介護休暇を取得し始めてからの1ヵ月を一つの支給単位として、1ヵ月ごとに支給されます。

その支給額は、月給の40%(上限170,520円)です。

また、介護休業期間中に会社から給料が支払われている場合は、介護休業給付の支給額が減額または停止されます。会社からの給料が休業前の給料の40%超80%未満の場合は、給料と給付金の合計額が元の給料の80%となるように支給額が調整されます。また会社からの給料が80%以上の場合は、給付金は支給されません。

4-3. 申請は会社を通して

介護休業給付は、原則会社が手続きを行います。大企業などで福利厚生がしっかりしているところであれば、会社から手続きについて知らせてもらえると思いますが、小規模の会社などの場合は、申請漏れを防止するためにも念のため自分から担当部署に介護休業給付を受けたい旨を知らせて手続きをしてもらうとよいでしょう。また、あわせて介護休業中の給料の支払いの有無についてもよく確認しておきましょう。

5. おまけ:定年後にも働く場合の高年齢雇用継続給付[雇用保険]

現役世代の給付ではありませんが、60歳で定年をむかえた後も継続して雇用されたり再就職をしたりした場合で、賃金が60歳時点の75%未満に低下したときには、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金を受けることができます。

給料の低下率によりますが、60歳から65歳になる前までは、最大で毎月の給料の15%の支給を受けることができます。定年が近い方はぜひ覚えておいてください。

詳しくはこちら(ハローワークWEBサイト)をご参照ください

6. まとめ:雇用保険は使わないと損なので、しっかり覚えておこう!

雇用保険については、保険料を支払う一方で給付を受けることがないという人が多いのではないでしょうか?しかも、保険料は天引きとなっているので払っている感覚さえ乏しいかもしれません。

しかし、ちゃんと保険料を払っているわけですし、実際に給付を受けられる状況になれば、きちんと活用しないと損です。特に教育訓練給付金は、スキルアップや資格取得に有効に使える制度なので、ぜひうまく使いたいものです。

また、これから結婚・出産を控える若い世代の人たちは、ぜひ育児休業給付があることを覚えておいてください。たとえば、会社に育児休暇制度はあるけど、休暇をとると給料がなくなるからと取得に踏み切れないでいる人がいるかもしれません。しかし、育児休業給付があるとなれば、収入面の不安はある程度解消されます。

このように、雇用保険は失業以外でも使え、会社員生活をより向上させるために役立つ保険なので、単なる失業保険と思わずに、その概要を理解しておきましょう。

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