傷病手当金をもらったら確定申告は必要?医療費控除は受けられる?

2022-04-06

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ケガや病気で働けなくなり、収入がなくなってしまったときに給与の一部がもらえる傷病手当金。万一のときに頼れる心強い制度です。

とはいえ気になるのが、「傷病手当金をもらったときに税金は生じるのか?」「確定申告は必要あるのか?」ということでしょう。

そこでここでは、傷病手当金と確定申告の関係などについてわかりやすく解説していきます。

1.確定申告での傷病手当金の扱い

傷病手当金は健康保険の給付の一つで、被保険者がケガや病気で仕事を休んでいるときに、被保険者やその家族の生活を支えることを目的として、給与の代わりとして給付金を支給する制度です。この傷病手当金は、税制上非課税の扱いとなっています。

1-1.確定申告での申告義務はない

傷病手当金は非課税なので、税金の計算上、所得に含みません。したがって原則として確定申告は不要です。また、他の要件で確定申告する場合も、傷病手当金を所得として申告する必要はありません

1-2.傷病手当金の受給中に退職した場合は、確定申告が必要なことも

傷病手当金を受給しているときに退職して、その後、他の会社に再就職もしていない場合は、確定申告をする必要があります。その理由は以下のように収めすぎていた税金を返してもらうためです。

傷病手当金は所得に含まないため、休職前に通常通り働いていた期間の給料のみが年間所得となります。一方で、源泉徴収は、1年間の所得の見込みをもとに毎月の給与から差し引かれています。働けなくなったことでその年の所得が下がり想定よりも税額が減るため、傷病手当金を受給する前に働いて受け取った給料から引かれていた税金は多すぎることになります。この場合に確定申告をすることで、天引きされていた税金の一部が戻ってくる可能性が高くなるのです。

また、退職後に自分で社会保険料(国民年金保険料や国民年金保険料など)を支払っていた場合は、その分を所得控除できる(税金が安くなる)ので、確定申告したほうがよいでしょう。

一方、在職中(転職であっても)の人で、勤務先で年末調整をしている場合は、確定申告は不要です。

2.傷病手当金と医療費控除

病気やケガの治療で医療費が一定以上かかった場合は、確定申告をして医療費控除を受けることで、納めた税金の一部が戻ってきます。傷病手当金を受給しているときに、医療費控除を受けられるのか? 何か影響はないのか?という疑問についても整理していきましょう。

2-1.医療費控除とは

1月1日~12月31日までにかかった医療費の合計が10万円(医療費から差し引く保険金等を差し引いた後)を超えた場合には、確定申告をすることで医療費控除を受けることができます。ただし、総所得が200万円以下の場合は、総所得の5%を超えた分が控除対象となります。

医療費控除の限度額は200万円で、次の計算式で算出します。

医療費控除額(上限200万円)=1年間の医療費の合計額-保険などで補填される金額-(10万円 または所得金額 × 5%のうち、どちらか少ない額)

2-2.傷病手当金は医療費控除から差し引く必要はない

計算式の通り、医療費控除額の計算時には受け取った保険金などの金額を差し引く必要があります。差し引く対象には、民間の医療保険や損害保険などで受け取った給付金のほか、高額療養費制度による返金なども含まれます。

そうなると、「傷病手当金は差し引く対象なのだろうか?」と疑問に思う人もいるでしょう。

結論としては、傷病手当金は医療費から差し引く対象ではありません。医療費控除の計算をする際には、何が差引の対象で何がそうでないのか確認しておくようにしましょう。

3.傷病手当金と扶養の関係は?

扶養と一言でいっても、実は税法上の扶養と社会保険の扶養の2種類があります。

3-1.所得税の計算上、傷病手当金は扶養者の所得に含めない

税法上では傷病手当金は非課税のため、世帯主の扶養に入る(配偶者控除、扶養控除等の対象になる)ことができるかどうかという所得の計算には、含める必要はありません。

3-2.社会保険では、被扶養者の所得に含める

一方で、社会保険(健康保険、年金)の扶養の計算には、傷病手当金を収入として含めることになっているので注意が必要です。

健康保険の被扶養者や年金の被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)の場合、対象になるのは原則として見込み年収が130万円未満の人ですから、傷病手当金として受け取った金額を含めた見込み年収が130万円以上になる場合、扶養に入ることはできません

4.まとめ:傷病手当金をもらっても基本的に確定申告は不要

傷病手当金をもらっているとき=働けないときですから、金銭面を考えれば少しでも税金を軽減できるようにしたいもの。確定申告時などに傷病手当金の取り扱いで悩まないよう、情報を整理することが大切です。

ここまで解説したように、傷病手当金については基本的に確定申告の必要はありませんが、退職して再就職していない場合など確定申告をしたほうがいいケースもあります。合わせて、医療費控除や扶養控除への影響についても把握しておいたほうがいいでしょう。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎 (編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。
 

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