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三大疾病とは?|その経済的リスクに備える保険の選び方

  • 公開日:2016年04月28日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 保険の知識

2022-04-15

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三大疾病とは、「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中」の3つの病気を指します。これらの病気は、長く日本人の死因の上位を占めており、生命保険においても三大疾病を保障する商品が売られてきました。

みなさんも、保険を検討していて「三大疾病の保障は必要なの?」とか「どういうときに三大疾病の保障を受けられるの?」などの疑問があるのではないですか?

ここでは、そんな三大疾病について、どんな病気でどれくらいの医療費がかかるのか、どんな状態になったら保険金を受け取れるのかをわかりやすく説明しています。また、あわせて三大疾病に備える保険の種類と必要性についても詳しく解説していますので、三大疾病による治療費や介護などのリスクに上手に備えられるようになれます。ぜひお役立てください。

 

1. 三大疾病とは?

三大疾病とは、日本人の死因の上位にある「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中」の3つの病気のことです。それぞれの病気がどのようなものであるか簡単に説明します。

1-1. がん

がんは、体の臓器や組織に悪性の腫瘍ができる病気で、悪性新生物や悪性腫瘍という名称で呼ばれることもあります。体の中にがん細胞ができて増殖を続けていき、はじめに腫瘍ができたところから体のあちこちに転移して、さらに転移先で新しいがん組織をつくっていきます。がん細胞は正常な細胞が摂取しようとする栄養を奪ってしまうので、体が衰弱していきます。

がんは体のいろいろな組織にできるため、その発生組織により分類されています。

■発生組織によるがんの分類 

造血器にできるもの血液をつくる造血組織にできるがんです。
白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などがあります。
上皮細胞にできるもの体の表面を覆う表皮や内臓の粘膜をつくる上皮にできるがんです。
肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんなどがあります。
非上皮細胞にできるもの内臓の内側にある平滑筋や筋肉などに発症するがんです。
骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫などがあります。

1-2. 急性心筋梗塞

急性心筋梗塞は、心臓に血液を送る血管(冠動脈)が急につまって心筋に血液が届かなくなり、心筋の細胞が壊れていく(壊死する)病気です。壊死する心筋の範囲が多いほど重症となり、心室細動という危険な不整脈により心停止にいたる可能性が高まります。

1-3. 脳卒中

脳卒中は、正式には脳血管障害といい、単一の病名ではなく脳の血管に何らかの障害が起こって発病する病気の総称です。脳卒中には、脳の血管がつまる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血・くも膜下出血があります。

(1)脳梗塞
脳の血管がつまることにより脳への血流がとまり、酸素と栄養が行き渡らなくなるため脳細胞が死んでしまう病気です。知覚障害や運動障害、意識障害などいろいろな症状が出ます。
動脈硬化などにより血管が狭くなっていき、そこに血のかたまりがつまる脳血栓症や脳の血管に心臓などでできた血のかたまりが流れてきて血管をふさぐ脳塞栓症などがあります。

(2)脳出血
高血圧が続くことなどで脳の中の血管が破れて出血する病気です。片麻痺、感覚障害などの症状がでます。重症だと意識障害、さらには死につながることがあります。

(3)くも膜下出血
脳は、くも膜によりその表面を覆われています。そのくも膜と脳の間を走っている動脈にできたこぶ(動脈瘤)が、血圧が高くなったときなどに破れて出血し、くも膜と脳の間に広がっていく病気です。
突然猛烈な頭痛、吐き気、嘔吐といった症状がでて、多くはそのまま意識不明になります。出血が軽い場合、意識は回復しますが、出血量が多い場合や、血液が脳内に流れ込んだ場合は死亡することがあります。

1-4. 三大疾病の死亡率

がん、急性心筋梗塞、脳卒中は死につながることもある重大な病気です。
日本人の死因としても上位を占めています。

■日本人の死因上位

順位病名死亡数
第1位悪性新生物378,385
第2位心疾患205,596
第3位老衰132,440
第4位脳血管疾患102,978
第5位肺炎78,450

 (出典)厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」より

厚労省の統計上では、がんは悪性新生物という呼称で統一されています。また、脳血管疾患が脳卒中にあたります。脳血管疾患は現在は4位ですが、平成22年まではずっと日本人の死亡率の上位3位に入っていました。

この統計の心疾患のうち、急性心筋梗塞の死亡数は30,538です。ただし、急性心筋梗塞になり一旦回復した後に、心臓の状態が悪化して死亡した場合などは、死因は急性心筋梗塞ではなく他の心臓病ということになると思われますので、急性心筋梗塞が原因またはきっかけとなる死亡数はもっと多いと考えられます。

2. 三大疾病の治療に関するデータ

三大疾病は日本人の死因の上位に入る重大な病気ですが、治療も大変なのでしょうか?
ここでは治療にかかわる情報として入院日数と医療費の額についての統計データを紹介します。

2-1. 三大疾病の入院日数

三大疾病になった場合に入院日数がどれくらいになるのかを、厚生労働省の患者調査の結果からみてみましょう。

■三大疾病で入院した場合の入院日数

病名入院日数
悪性新生物17.1日
心疾患19.3日
脳血管疾患78.2日

 (出典)厚生労働省「平成29年患者調査」より

悪性新生物が17.1日、心疾患が19.3日で、どちらも3週間程度入院することになります。入院費用もそれなりにまとまった金額がかかってきそうです。
一方、脳卒中にあたる脳血管疾患は78.2日で3ヵ月という長い入院期間が必要となります。ここまでの長さになると、治療のための経済的な負担も相当重くなることが予想されます。

2-2. 三大疾病の医療費

次に、三大疾病になった場合の医療費がどれくらいになるかについて、統計データを見てみましょう。

■疾患別の入院医療費の平均 *参加病院の平均値(平成27年1月~3月)

病名1入院費用自己負担額(概算)※
胃がん880,962円264,289円
気管支および肺がん859,630円257,889円
乳がん745,086円223,526円
急性心筋梗塞2,131,268円639,380円
脳梗塞1,350,395円405,119円
脳出血1,932,040円579,612円

※自己負担額(概算)は、1入院費用の3割として計算した金額です。実際の自己負担額ではありませんので参考データとしてご覧ください。

(出典)全日本病院協会WEBサイトより

がんの医療費として、胃がん、気管支および肺がん、乳がんの1入院あたりの費用をみてみると、自己負担額がだいたい25万円前後となっています。
急性心筋梗塞は約64万円、脳梗塞、脳出血はそれぞれ約41万円、約58万円です。

このような高額な医療費を支払った場合は高額療養費を利用できるので、最終的な負担額としては1ヵ月8万円強くらいですむことになりますが、それなりの医療費がかかることは間違いありません。

また差額ベッドを利用したい人であれば、その分の費用などが別途かかってきますし、さらに再発や合併症が起こったり、退院後のリハビリがあるとそれらの費用もかかってきます。三大疾病についての備えを用意しておきたいところです。

3. 三大疾病を保障する保険

これまでみてきたように、三大疾病は大きな病気であり医療費もそれなりにかかってきます。そこで、三大疾病に備えられる保険がいろいろと売られています。

3-1. 三大疾病保障保険

三大疾病保障保険は、終身保険に三大疾病になったときでも保険金が受け取れる保障が付加された保険です。死亡したとき、所定の高度障害状態になったときに加えて、三大疾病で所定の条件に該当したときに保険金が受け取れます。

三大疾病になったときに、何百万円というまとまったお金が受け取れるので治療費や体が不自由になったときの介護費用などに使うことができます。

一般的には、三大疾病になり以下のような条件にあてはまるときに保険金を受け取れます。

■三大疾病で保険金を受け取れる条件

がん(悪性新生物)初めてがんと診断確定されたとき。
初期のがんである上皮内がんは除きます。
また保険会社によっては責任開始期から90日以内に診断確定された乳がんも
除外しているところがあります。
急性心筋梗塞急性心筋梗塞により初めて医師の診察を受けた日から
60日以上「労働の制限を必要とする状態」が継続したと医師が診断したとき。
※一部の保険会社では手術をした場合にも保険金を受け取れます。
脳卒中脳卒中により初めて医師の診療を受けた費から60日以上、まひや歩行障害、
言語障害などの他覚的な後遺症が継続したと医師が診断したとき。
※一部の保険会社では手術をした場合にも保険金を受け取れます。

 がんについては診断されたことが条件なので、保険金をもらって治療費にあてることができます。しかし、急性心筋梗塞では60日以上働けない、脳卒中では60日以上後遺症が続くというかなり厳しい条件であること、条件に該当したとしても60日以上たってからでないと保険金を受け取れないことから、治療費に活用するという観点からはがんの場合に比べ役に立ちにくいといえます。

3-2. 医療系の保険(治療費の保障)

医療保険として、三大疾病の場合の保障を手厚くしている保険があります。このような三大疾病の治療のための保障としては、以下のような保障があります。
なお、これらの保障は、医療保険に標準としてついている場合と、特約として付加できるようになっている場合があります。

  1. 入院給付金の保障拡大
    医療保険の入院給付金には、1入院あたりの支払限度日数や通算の支払限度日数が決まっていますが、三大疾病の場合にはこれらの制限がなく、無制限で入院給付金を受け取れます。
  2. 三大疾病一時金
    三大疾病になったときに、50万円、100万円などといったまとまったお金を受け取れます。
    がんについては、初回は確定診断で、2回目以降は治療のための入院で受け取れ、急性心筋梗塞、脳卒中では、治療のための入院で受け取れます。

3-3. 保険料払込免除特約

生命保険や医療保険のなかには、三大疾病になったときに以後の保険料の支払が免除される保険料免除特約をつけられる保険があります。

この保険料払込免除となる三大疾病の条件は、一般的には「3-1.三大疾病保障保険」の条件と同様となります。(三大疾病の保障を手厚くできるタイプの医療保険の一部には、急性心筋梗塞や脳卒中の保険料払込免除の条件が治療のために入院したときとしているものもあります)

3-4. 三大疾病保障付の団体信用生命保険

住宅ローンを組んだときに加入する団体信用生命保険においても、三大疾病になったときに住宅ローンの返済が免除される(弁済される)タイプの保険があります。

3-4-1.住宅金融支援機構の3大疾病付団信

フラット35でおなじみの住宅金融支援機構の3大疾病付機構団信では、死亡や高度障害状態の場合のほかに、三大疾病で以下の状態になったときに住宅ローンの返済が免除されます。

■三大疾病で住宅ローンの返済が免除される条件

がん(悪性新生物)がんと確定診断されたとき。(上皮内がん等は除く)
急性心筋梗塞急性心筋梗塞により初めて医師の診察を受けた日から60日以上「労働の制限を必要とする状態」が継続したと医師が診断したとき、あるいは、治療を目的として手術をしたとき。
脳卒中脳卒中により初めて医師の診療を受けた費から60日以上、まひや歩行障害、言語障害などの他覚的な後遺症が継続したと医師が診断したとき、あるいは、治療を目的として手術をしたとき。

3-4-2.民間銀行の生活習慣病保障付住宅ローン

民間銀行の住宅ローンの団体信用生命保険にも、三大疾病に他の生活習慣病までを付加した7大疾病や8大疾病の保障プランがあり、三大疾病で所定の状態になったときに住宅ローンの返済が免除されます。

その場合の条件は、「3-1.三大疾病保障保険」の条件と同様なものであったり、約13ヵ月以上どんな仕事にもつけない状態が続いた場合であったりと、機構団信よりも厳しい条件となっています。

4. 三大疾病のための保険の考え方

三大疾病は、死にいたる病気であるというだけでなく、入院期間が長くなったり介護状態になったり、あるいは再発してしまったりと医療費が多くかかってくることもある病気です。そのため、保険で医療費に備えたり、住宅ローンの返済に備えるという必要性が他の病気より高いといえます。

4-1.治療費に備えるための保険の考え方

三大疾病の治療費に備えるための保険として考えるならば、三大疾病保障保険はまとまった一時金が入ってくるのはよいですが、がん以外の急性心筋梗塞、脳卒中の支払い条件が厳しいというデメリットがあります。そのため、商品は少ないですが急性心筋梗塞や脳卒中で入院したときに一時金がもらえるタイプの医療保険もあわせて検討するのがよいでしょう。

この保障が必要な人

  • 病気への備えなので、必要度は、未婚・既婚、男女の別を問いません。家族のための死亡保障などの優先順位が高い保険を既に確保済みで、三大疾病への不安がある人はご検討ください。

4-2.保険料払込免除特約の考え方

三大疾病で保険料の支払いが免除されるのはメリットがあります。ただし、保険料の支払いを終身払いではなく、60歳までの短期払いなどにしている場合は、この特約をつけるかどうかは検討が必要です。なぜなら保険料の払い込みが終了した後に三大疾病になっても保険料払込免除の効果がないからです。三大疾病は、若くてもなることはありますが、年をとってからかかる確率のほうが高いという事実を考慮して判断することが大切です。

この保険が必要な人

  • 病気への備えなので、必要度は、未婚・既婚、男女の別を問いません。終身保険や終身医療保険に加入する際にご検討ください。その際には、この特約をつけた場合とつけない場合の保険料を比較することが大切です。

保険料払込免除特約の必要性については「保険料払込免除特約|ほんとに必要かを判断する3つのポイント」をご覧ください。

4-3.三大疾病保障付の団体信用生命保険の考え方

三大疾病になったことで、それまで通りに働けなくなった場合に住宅ローンの負担が重くなってしまう可能性を考えると、三大疾病の保障があったほうが安心です。ただし、金融機関によって住宅ローンが免除される条件は違いますので、ローンを選ぶときに条件をよく確認するようにしましょう。

この保険が必要な人

  • 住宅ローンを組む場合には、あった方が安心な保障です。ただし、借入額や借入年数により違いますが、三大疾病保障のための保険料は、機構団信の場合でトータル数十万~100万円くらいになってきます。若いうちにローンを組んで繰り上げ返済をしていく人は必要度は低く、逆に中年以降でローンを組みリタイア以降もローン返済が残るような人は必要度が高いといえるでしょう。

5. まとめ:こわい病気だけど保険選びは冷静に!

三大疾病とは、「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中」の3つの病気ですが、死につながる場合や、治療・介護などに多くのお金が必要になってくる場合があります。もちろん、一般の医療保険でも入院給付金や手術給付金が支払われますが、一層手厚い保障があったほうが安心といえます。

ただし、ここまでみてきたように、急性心筋梗塞と脳卒中については、保険金や給付金を受け取ったり、保険料免除になる条件が厳しい保険が多いのも現状です。どの保険会社のどのような保険に入るかは、この条件がどうなっているかを冷静に比較して加入することが大切です。

 

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