目次
1.損害保険は偶然の事故に備える保険
損害保険は、偶然の事故によって、物に損害が発生したり、けがをしたりした場合に、保険金が支払われます。偶然の事故の例としては、火災、交通事故、自然災害、盗難などがあてはまります。偶然の事故は、めったに起こるものではありませんが、万が一起こった場合は、たいへん大きな損害をもたらします。損害保険は、偶然起こるリスクに備える保険です。
2.保険の基礎知識
2-1 保険には3つの分類がある
保険は、対象の違いによって以下の3つに分類することができます。
・生命保険(第一分野)
保障の対象 | 人の生存、死亡 |
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取扱 | 生命保険会社のみ |
保険の種類 | 定期保険、終身保険、養老保険、個人年金保険など |
・損害保険(第二分野)
補償の対象 | 偶然の事故による損害 |
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取扱 | 損害保険会社のみ |
保険の種類 | 自動車保険、火災保険、地震保険、海外旅行保険など |
・疾病・傷害保険など(第三分野)
保障(補償)の対象 | 生命保険、損害保険のどちらにも属さないもの |
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取扱 | 生命保険会社、損害保険会社 |
保険の種類 | 医療保険、がん保険、介護保険、傷害保険など |
保険会社は、どんな保険でも販売できるわけではなく、分類によって、取り扱える商品が決められています。生命保険が「人」を保険の対象としているのに対し、損害保険は「物」を対象とするのが一般的です。損害保険会社では、「物」を対象とする保険のほかにも、事故によるけがを補償する傷害保険や、実費を補償する医療保険、がん保険なども取り扱っています。
2-2 保障と補償の違い
上記の表中に「保障」と「補償」という用語が出てきました。まぎらわしい表現ですが、両者は意味が異なるので区別をしておく必要があります。生命保険で使われるのが保障、損害保険で使われるのが補償です。
・保障
保障には、障害から保護し守るという意味があります。生命保険は、人生で起こりうるさまざまな障害(死亡、病気、けが、長生きリスクなど)に備え守ってくれるサービスなので、保障という字が用いられます。
・補償
補償には、損害を補って償うという意味があります。損害保険は、事故によって生じた財産(物)や身体上の損失を補って償うサービスなので、補償という字が用いられます。
3.損害保険の特徴
損害保険は、保険金が支払われる方法と保険料の支払方法に特徴があります。
3-1実損払い
損害保険は、実際に発生した損害金額(限度額あり)が保険金として支払われます。たとえば、集中豪雨で屋根が破損して35万円の損害が発生した場合、保険金として支払われるのは、あらかじめ決められた金額ではなく、損害額である35万円となります。損害保険は、損害によって不当な利益を得ることを認めないため、実損払いを基本としています。
ちなみに、生命保険は、あらかじめ決められた金額を支払う定額払いが基本です。これは、人の命に値段を付けることはできないという考えがあるためです。
3-2 保険期間1年、保険料一括払いが基本
損害保険は、保険期間を1年とし、保険料を一括で支払う契約が基本です(長期契約、分割払いができるものもあります)。保険を継続する場合は、更新手続きが必要です。
いっぽう、生命保険は、終身や10~30年といった長期契約が一般的です。
4. 損害保険の種類
私たちの身のまわりには、さまざまな偶然起こるリスクが存在するため、損害保険にはたくさんの種類があります。おもな損害保険を紹介します。
4-1 自動車保険(任意保険)
自動車事故が起こった場合に、①相手方への賠償②自分、家族、同乗者への補償③車の補償の3つを補償する保険です。車の所有者すべてに加入が義務付けられている自賠責保険(強制保険)ではまかなえない損害に備えて、車の所有者や運転者が任意で加入します。
4-2 火災保険
火災や水災、風災、雪災などの自然災害で建物や家財(家具、家電など)に損害が生じた場合に補償を受けられる保険です。建物と家財、建物のみ、家財のみを選択して加入します。
4-3 地震保険
地震、噴火、これらによる津波が原因で建物や家財に損害が生じた場合に補償を受けられる保険で、火災保険とセットで加入します。地震保険単独での加入はできません。地震保険の保険金額は、実際の損害額ではなく、火災保険金額の30%~50%の範囲となります。東日本大震災以降、加入率が増加傾向にあります。
4-4 海外旅行保険
海外旅行中に病気やけがをしたり、事故、盗難などに遭ったりした場合に補償を受けられる保険です。海外では、日本の公的医療保険制度が使えないため、高額な医療費がかかります。万一の場合に備えて加入しておくことをおすすめします。
4-5 傷害保険
損害保険会社が取り扱う第三分野の保険です。日常生活でのさまざまな事故によるけがや死亡を補償します。医療保険が、病気やけがによる入院・手術を保障するのに対し、傷害保険は、突然の事故によるけが、死亡を補償します。契約にあたって、健康状態の告知や審査はありません。