住宅を購入した場合の死亡保障額は、団体信用生命保険(団信)に加入しているかいないか考慮して設定する必要があります。団体信用生命保険とは、住宅ローンを返済する人が亡くなった時に、ローンの残債がゼロになる保険のことです。
しかし団体信用生命保険に加入したからといって、生命保険が不要になるわけではありません。ご自身の状況に応じて適切に死亡保障を選ぶ必要があります。
ここでは、住宅を購入した時の死亡リスクに備える代表的な3つの生命保険と、それぞれの選び方について解説していきます。
目次
定期保険
定期保険は、被保険者(保障の対象となる人)が保険期間内に死亡した場合、保険金が支払われる保険です。
定期保険の保障期間は、「10年間」「20年間」などと年数を決めるタイプか「60歳まで」「65歳まで」と上限年齢を決めるタイプの2種類があります。保障期間が年数で決まっているタイプは、「80歳まで」「90歳まで」など一定の年齢に達するまで更新できます。ただし保険料負担は更新するたびに増える仕組みです。
また定期保険は、一般的には掛け捨てであり、解約しても返戻金(払戻金)はありません。その代わり、終身保険のような解約返戻金がある死亡保険などと比べると、支払う保険料が割安です。
世帯主 役立ち度 ◎
住宅を購入した後も、世帯主は残された家族の生活費やこどもの教育費を備えなければなりません。特にこどもが小さい場合は、必要な生活費や教育費だけで数千万円になることがあり、手頃な保険料で手厚い死亡保障が得られる定期保険が役立ちます。
一方で、世帯主が住宅ローンの返済をしており、団体信用生命保険に加入していれば、世帯主が亡くなると、残された家族は住宅ローンを返済する必要がなくなります。そのため、死亡保障額に居住費を含める必要はありません。
ただし、万一の場合に、購入した住宅を処分して生活費に充て、その後は配偶者の実家に帰って生活する選択肢がある時は、定期保険が不要または少額にしても良いケースもあります。
世帯主が死亡した後に、購入した家で引き続き生活をするかどうかで定期保険の必要性は変わってきます。
配偶者(専業主婦・パート) 役立ち度 △
配偶者が専業主婦やパートである場合、亡くなったとしても、住宅ローンの返済に対する影響はほぼないと考えられるため、定期保険の必要性は低いです。
定期保険は、高額の保障を準備するために加入することが多いため、専業主婦やパートの配偶者は積極的に検討しなくてもよいでしょう。
配偶者(共働き)役立ち度 〇
配偶者が世帯主と共働きの場合、定期保険の必要性は、配偶者が住宅ローンを組んでいるかどうかで変わります。
仮に住宅ローンを組んでおり、団体信用生命保険に加入していない場合は、ローンの返済を死亡保険金でまかなう必要があるため、定期保険の必要性は高いでしょう。
また、配偶者の死亡後に世帯主の収入だけでまかなえず、生活していくことが難しい場合は、配偶者も定期保険に加入し死亡保障を付けておくと安心です。
こども 役立ち度 △
こどもは、死亡しても、住宅ローンの返済に影響はないと考えられるため、定期保険の必要性はあまり高くありません。 加入を検討しなくてもよいでしょう。
終身保険
終身保険とは、亡くなるまで生涯にわたって死亡保障が続く保険です。
終身保険は、契約の途中で解約すると返戻金が発生しお金が戻ってくることがあります。ただし、短期間で解約すると解約返戻金がないか、額が小さくなる点に注意しましょう。
また、支払う保険料は定期保険よりも割高です。
終身保険の保険料の支払方法は、「60歳まで」「65歳まで」などと上限年齢を決めて支払う短期払いか、一生涯保険料を支払う終身払いのどちらかを選べます。
世帯主 役立ち度 〇
終身保険は、世帯主が自分自身の死亡時に必要な葬祭費用を備える手段として適しています。葬祭費用は、平均でおよそ180万円※1で、家族の人数やライフステージにかかわらず必要です。住宅を購入しても必要性は変わりません。
※1 出典:公益社団法人生命保険文化センター
一生涯、死亡保障が続く終身保険であれば、数百万円程度の葬儀費用を生涯にわたって準備できます。
また、世帯主が親と一緒のお墓に入れない場合は、お墓の購入や利用に必要な費用を保障額に上乗せする必要がないか検討しましょう。
配偶者 役立ち度 〇
住宅購入後も、終身保険は世帯主だけでなく配偶者が死亡時の葬祭費用を備える手段として最も有効です。
配偶者にとっても葬儀費用は、職業や収入の有無、家庭環境にかかわらず必要な費用です。そのため、一生涯の死亡保障がある終身保険で備えるのがおすすめです。
結婚によって姓が変わった場合は、名字が異なる親と一緒のお墓に入れないことが多いため、お墓代の分だけを死亡保障を上乗せするとよいでしょう。
こども 役立ち度 〇
終身保険は、こどもが亡くなった場合の葬祭費用を備える手段にも活用できます。
さらに終身保険は、将来こどもが独立するときに、契約者を親からこどもに変更して譲ることも可能です。
また、こどもが結婚するタイミングで終身保険を解約すると、受け取った解約返戻金を結婚資金としても利用できます。
収入保障保険
収入保障保険は、保障の対象者が保障期間中に死亡した場合に、死亡保険金を給与のように毎月受け取れる保険です。定期保険の保険金を一括ではなく分割にして受け取れるようにした保険であると考えると分かりやすいでしょう。
収入保障保険の保障期間および保険金受取期間は「60歳まで」「65歳まで」のように、保障が終了する年齢を設定します。たとえば、保障期間を60歳までとし、保障の対象である人が40歳で死亡した場合、残された家族に対して、20年の間、毎月保険金が支払われます。
また収入保障保険は、一般的には掛け捨てです。さらに年齢を重ねるごとに、保険金の受け取り期間や受け取り総額が減っていくため、定期保険よりも割安な保険料で加入できることが多いです。
世帯主 役立ち度 ◎
住宅を購入したタイミングにおいても、世帯主にとって収入保障保険の必要性は高いといえます。
団体信用生命保険に加入している場合、世帯主が亡くなると、遺族はローンを返済する必要はありません。しかし残された家族の生活費やこどもの教育費は引き続き必要で、必要保障額は数千万円になることもあります。
収入保障保険であれば、解約返戻金のある他の死亡保険に比べて、手厚い保障を手頃な保険料で用意しやすいため、検討してみるとよいでしょう。
また、住宅ローンを組んでいるにもかかわらず、団体信用生命保険に加入していない場合は、生活費や教育費だけでなくローンの返済分も収入保障保険の保障額に上乗せできます。
このように収入保障保険は、毎月一定額ずつ保険金を受け取れるため、遺族の生活費や教育費として利用しやすく、毎月発生する住宅ローンの返済にも利用しやすい点がメリットです。
配偶者(専業主婦・パート) 役立ち度 △
配偶者が専業主婦やパートの場合、死亡しても住宅ローン返済への影響は少ないと考えられるため、収入保障保険の必要性は低いです。
配偶者(共働き)役立ち度 〇
配偶者が世帯主と共働きの場合、配偶者も住宅ローンを返済しているかどうかで収入保障保険の必要性は変わります。
もし配偶者が団体信用生命保険に加入せずに住宅ローンを組んでいる場合、収入保障保険に加入を検討した方がいい場合があります。配偶者が死亡した後に、収入保障保険の保険金をローン返済に充てられるからです。
また、配偶者の死亡後に、世帯主の収入だけでは生活が苦しくなる場合は、収入保障保険の保障額に生活費分を上乗せするとよいでしょう。
こども 役立ち度 △
こどもの場合、死亡しても、住宅ローンへの影響はないと考えられるため、収入保障保険の必要性はあまり高くありません。