ところが糖尿病の初期段階では症状がほぼなく、健康診断で予備軍と指摘されて初めて気付く方は少なくありません。健康診断で血糖値が高かった方や、糖尿病の不安がある方のために、糖尿病に気付くきっかけや糖尿病の症状、診断について解説します。
※1 出典:日本糖尿病協会「糖尿病の患者数について」Q&A
目次
糖尿病とは?健康診断で血糖値が高いと言われたら糖尿病?
糖尿病とは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモン=インスリン※2の働きが不足することで、血糖値が異常に上昇してしまう病気です。
※2「インスリン」とは、血糖値を下げる働きがあるホルモン
糖尿病の分類方法はいくつかありますが、病気の原因で大きく分類すると以下の2つです。
- ・1型糖尿病:なんらかの原因により、膵臓でインスリンを作る細胞が壊れてしまうことで血糖値が高くなってしまう。何歳でも発症するが、若年層に多い
- ・2型糖尿病:生活習慣や遺伝的な影響でインスリンが出にくくなったり効きにくくなったりして、血糖値が高くなってしまう。中高年層に多い
このうち日本人に圧倒的に多いのは、2型糖尿病です。2型糖尿病は生活習慣に起因することが多いため、健康診断で血糖値の高さや生活習慣を指摘されると不安になりますよね。
しかし糖尿病は、ある日突然血糖値が上がって発症する病気ではありません。何年かかけて徐々に血糖値が上がっていった結果、糖尿病に至るケースが一般的です。
そのため「血糖値が正常値より少し高い」という状態は、まだ糖尿病予備軍である可能性が高いです。糖尿病に気付くきっかけや症状の段階については、以降の項目で詳しく解説していきましょう。
糖尿病に気付くきっかけは?自覚症状がある方は要注意
糖尿病に気付くきっかけは、以下のとおりさまざまです。
- ・健康診断で血糖値が高いと指摘される
※空腹時血糖が「110㎎/dL以上」あると「糖尿病予備軍(境界型)」となる - ・喉の渇きや常に空腹感があるなど、高血糖の自覚症状がある
- ・献血で糖尿病の疑いを指摘される
- ・糖尿病の合併症にかかったことで糖尿病と気付く
特に多いのは、健康診断で指摘されて気付くケースです。糖尿病の初期段階はほとんど無症状のため、健康診断で血糖値を指摘され、そこから経過観察していくケースは少なくありません。
一方で自覚症状があり気付くケースもありますが、自覚症状がある状態は進行している可能性があるため、注意が必要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
健康診断で気付くケース
健康診断で血糖値の高さを指摘され、初めて糖尿病の可能性に気付くケースは多いです。
ただし血糖値が高い=糖尿病というわけではなく、血糖値の高さによって以下の段階があります
糖尿病の進行段階
概要 | 基準値が以下のいずれかに該当 | |
---|---|---|
正常型 | 血糖値の状態が正常範囲 | ・空腹時血糖値:70mg/dL以上110mg/dL未満 ・75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値:140mg/dL未満 ・HbA1c6.0%未満 |
境界型 | 糖尿病と診断されるほど血糖値は高くないが、正常型よりも高くなっている状態。「糖尿病予備軍」とも言う | ・空腹時血糖値:110㎎/dL以上126mg/dL未満 ・75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値140㎎/dL以上200mg/dL未満 ・HbA1c6.0%以上6.5%未満 |
糖尿病型 | 血糖値が所定の数値を超えている状態で、「糖尿病の疑いあり」とされる | ・空腹時血糖値:126㎎/dL以上 ・75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値200㎎/dL以上 ・HbA1c6.5%以上 |
血糖値が上記「糖尿病型」で、かつ以下のいずれか一つでも該当すれば「糖尿病」と診断確定される
- ・HbA1c6.5%以上
- ・口の渇きなど、糖尿病の典型的な高血糖症状の存在
- ・確実な糖尿病網膜症の存在
参考:糖尿病情報センター「糖尿病予備群・糖尿病の境界型ってなに?」
「糖尿病患者初診のポイント」
上記のうち、「健康診断で血糖値が正常値よりやや高い」と指摘されるケースは「境界型」で、いわゆる糖尿病予備軍です。ただ、境界型の段階では大きな自覚症状がありません。そのため「たまたま血糖値が高かっただけだろう」と思ってしまう方もいるでしょう。
しかし目立つ症状はなくても、境界型の段階ですでにインスリンの働きは弱くなっていて、血管の老化が始まっています。つまり体の外側には異常がなくても、すでに内側では変化が起こり始めているのです。血管の老化は心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気につながる恐れがあるため、予備軍の段階でも危機感をもって生活習慣を見直すことが大切です。
一方で、自覚症状が出る状態は病状が進行している可能性があり、より一層注意が必要です。
自覚症状で気付くケース
糖尿病の初期段階ではほぼ無症状ですが、高血糖状態が続けば以下のような症状が現れることがあります。
- ・喉の渇き
- ・大量に水を飲む
- ・食べても満腹感を得にくく、常に空腹
- ・急激に痩せる、体重が減る
- ・尿の回数が増える
- ・疲れやすい
- ・足がしびれる
- ・物が見えにくくなる
もし上記の自覚症状があれば、高血糖状態になっている可能性があります。ただちに糖尿病に関する精密検査を受けましょう。ただし、高血糖状態でもまったく自覚症状がない方もいます。
症状があってもなくても、定期的な健康診断は必要だということは忘れないでください。
指摘や自覚症状はなくても、こんな生活習慣がある方は気をつけて
健康診断での指摘や自覚症状はなく「今は血糖値も正常値」という方でも、以下のような生活習慣があれば糖尿病にかかるリスクはあります。
- ・朝食を食べない
- ・遅い時間に夕食を食べる
- ・毎日のようにお酒を飲んでいる
- ・運動不足
- ・睡眠不足
- ・喫煙の習慣がある
日本人がかかる糖尿病の多くは、日々の生活習慣が要因で発症します。ただしすぐに発症するわけではなく、長年の生活習慣が蓄積された結果中高年になってから発症するケースが大半です。
現在は若く血糖値が正常範囲の方でも、上記のような生活習慣を何十年も続けていけば糖尿病のリスクは避けられません。少しでも心当たりがある方は、今から少しずつ生活習慣を改善していきましょう。
糖尿病になるとどうなるの?予備軍の時から怖い糖尿病の特徴
糖尿病になると、血液中のブドウ糖(血糖)が増え過ぎてしまいます。いわゆる異常な高血糖が続く状態が糖尿病です。血糖値が異常な高さになるとどんなことがおこるのでしょう。
- ・意識障害を引き起こすことがある
- ・何年も放置すると、徐々に神経や血管が傷つけられ、腎症や神経障害といったさまざまな合併症を引き起こす
- ・血管が傷つくことで動脈硬化が起こりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる病気につながる
つまり糖尿病は、放置すると脳梗塞や心筋梗塞など命をも奪う疾病へとつながる可能性もあるのです。
ところが糖尿病患者の大半を占める「2型糖尿病」は、先述のとおり自覚症状のないまま進行していきます。糖尿病予備軍と指摘された状態でも大きな症状がないため、まだ大丈夫と思う方もいるでしょう。しかし、糖尿病予備軍の状態でも見えない部分で体に異変が生じていることは、忘れないようにしてください。
まとめ
糖尿病はじわじわと進行していく病気です。
生活習慣や血糖値の高さなど少しでも不安要素がある場合は、今から少しずつ食事や運動習慣を見直して糖尿病予防に努めましょう。
万が一、糖尿病になってしまえば治療は長期化する恐れがあり、治療費の負担もはかりしれません。今から生活習慣を見直すこと、費用の負担も想定してなんらかの保険で準備しておくことも大切です。次回は治療費と保険について、詳しく解説します。
【次の記事】
・糖尿病の治療ってどうするの?かかる治療費から適切な保険選びまで
・糖尿病にどう備える?糖尿病予防の健康習慣と事前の保険選び
・糖尿病になったら保険に入れない?糖尿病患者の保険の選択肢